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日本政府所属?異世界航空自衛隊です。  作者: 葵流星
遠いかなたの草原へ
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観測者付きの会話

「さて、どこから話そうか。そもそも、私は…そうだな…連合軍の基地に連れて行かれた後私はこの世界のことを教えられた。また、その時に口調を直すことになった。何故かと言うと一人称というか…話し方が若者すぎたかな。そんなところだよ。」

「その…俺は、そういうことはしていませんよ。」

「そっか、まあ、確かに君の話し方なら問題はなさそうだ。さて…仕事だ。」


観音崎かんのんざきは、兵士に声をかけ隊ごとに写真を撮る。

俺は、ただカメラを持ち運ぶのが仕事だった。


「結局、この世界ってどうなっているんですか?」

「ああ、本来日本とフランスとロシアが一緒になるなんてほとんどないだろ?」

「はい、ですがこの国の地図は…。」

「そう、三国が連合として機能するくらい近くにある。それと、日本とは違って地図は中々手に入らない。手に入れたとしてもたいていは細工されている。」

「そうなんですか?」

「ああ、軍事的な情報だからだろうね。」




「何か手術は受けましたか?」

「ああ、受けた気がする。」

「あの手術って一体…。」

「私もわからない。」

「そうですか…。」

「そういえば、私以外の人には会えたか?」

「はい、刑部おさかべさんに会えました。」

「刑部…自衛隊の方か?」

「はい、パイロットでした。」

「彼は、今何を?」

「この世界の航空機に乗っていました。」

「それは、どこで?」

「下関に来る前の基地です。でも、刑部さんは他の基地から来ていました。観音崎さんは?」

「最初は笹川ささがわさんと一緒だったけど、その後すぐに別れてそれからずっと一人だ。だから、君が最初に再開できた人だ。」




「この世界の技術はどうやら私達よりも進んでいないのは知っているよね?」

「はい、そんな気がします。」

「ん?ずいぶんと確信が持てない感じだけど?」

「はい、俺は今までずっと基地の外に出たことがないのでわからないんですよ。」

「…すまない。」

「いえっ、でも武器は古いとは思いますよ。」

「ああ、それは私も同感だ。」

「戦艦がありますしね。」

「戦艦?」

「あっ、はい。戦艦がありましたよ。」

「そうか…それは是非とも写真に収めたいが…。」




「さて…、写真も撮り終わるな。」

「観音崎さん。」

「なんだ?」

「基地の外ってどうなっているんですか…。」

「そうだな…私達とは文明としてはかなり異なっている。だが、技術的な面では私達のその時代よりも進んでいる。それと、私や笹川さんみたいな報道関係者にとっては生きづらい世の中だったよ…。新聞には記者殺しとか書かれるくらいだしね。けれど、治安自体はいいものだったよ。」

「見てみたいですね…。」

「ああ、一度見てみるといい。」

「はい…与那国島を取り戻して、モンゴルまで行ってそれから日本に…。」

「モンゴル?もしかして、君はそこに向かうのか?」

「あっ、はい。そうですけど?」

「モンゴルか…昇君、これだけは言っておく。いくら世界が違ったとしても君は君で、私は私だ。それを忘れないでくれ…。この時代には波がある。その波に乗り続けたらどこまでも流されてしまう。見かけに騙されず、目に映る物全てに疑問を抱き、人を信用しない。それが大事だ。君より長く生きただけの人間の言うことだがそれは忘れないでおいてくれ。俺もそれは忘れずに必ず家に帰るつもりっすから…。おっと、カメラは貰うよ。お元気で!」

「はい、また会いましょう。」

「…そうだね、また会おう!」


俺は、観音崎にカメラを渡し波照間に向かった。

彼は俺と同じようにこの世界に翻弄されているのだろうか?

結局、この世界はまだわからないことだらけだ…。

そして、やるべきことを思い出した。

元の世界への帰還…それが、今の俺のやるべきことだ。

だから、それまではこの世界のことを知って帰るためにすべきことをしなければならない。


「世界はどうであれ、俺は俺か…。」


観音崎さん、俺はいつまでも自分を保ってられる気がしません。

けど、俺とあなたの目的は同じです。

また、会いましょう。


俺は、船に乗り込んだ。

波照間には艦首と艦尾に大砲が、対空機銃がついていた。

この波照間は日露仏連合で建造された輸送艦の1つで同型艦もたくさんあるそうだ。

俺とC分隊…連合陸軍第28師団は他の師団ともに与那国島を目指す。


船はゆっくりと港を後にし、海に出る。

今日の海は穏やかだ。

与那国島につくまでこのまま進んでくれれば…。

そう思うばかりだ。


夜中、俺は外に出ていた。

月も星もよく見えていてうれしかった。

プラネタリウムみたいにわかりやすく星の輝きが見えていて空気も澄んでいた。

ただし、船の排気は別である。

艦橋の下でただ星空を見上げていると背後から気配がした。


「きゃっ…びっくりした昇か。」


俺が後ろを振り返るとそこには坂上さかがみが居た。


「あれっ、どうしたの杏樹あんじゅ?」

「別に…あんたこそ何してるの?」

「なんか、波風に当たりたくて…。」

「そう?これから、しばらく当たることになるから楽しめるのは今の内だけよ。」

「そうかな…。」

「ええ、そうよ。それにしても、綺麗ね。」

「ああ、本当に…。」


目の前には星空が広がっていた。

もしかしたら、北極星もあるのかもしれない。

でも、俺はそれがどこにあるのかはわからない。

北斗七星を見つけて、動かない星…。

それが、北極星だ。

けれど、そんなに長く星を見続けることのない俺はそんな小さな点よりこの空を見上げている方がずっと良かった。


「あたしね、空を見上げているとどうでもよくなっちゃうんだ。なんで、あたしは生まれてきたのにこんなところにいるのかって?この世界はどこまでも広くて、どんどん広がっていってきっとこの世界に終わりなんてないんだって…。でも、あの星空の光は全て過去の光で今は輝いていてもいつかは消えてしまうんだって…。」

「何光年も先からの光だからね、あの星は…。」

「う~ん、もしかして昇って現実主義者リアリスト?」

「そんなことはないよ。」

「それじゃあ、ロマンチスト?」

「そうとも言えない…。」

「はあ…なるほど。あなたも自分のことはよくわからないのね。」

「ああ、そうだよ…。」

「そっか…それなら良かった。ふふっ、星も人も寿命がある。けれど、星は生物ではない。なんかおかしいよね?」

「変化するものが生物ではなってことかな…。結局、俺や杏樹も本当は最初から死んでいて…でも、それには気がついていないみたいな。」

「それは、怖いわよ!というか…ロマンティックさの欠片もないよ、それ!」

「ははっ…。」


変化か…。

それが、良いものなか悪いものかは変わってみないと断定できないと俺は思う。

でも、過去はかわらない。

この星空と同じように過去が映し出されてそれを見ることで、変化を見ることができるのだろう。


「宇宙って、どんな色なんだろう?」

「黒色なんじゃない?」

「私は、透明なんだと思うよ。」

「透明か…。それじゃあ、どこまでも見えるね。」

「うん。」

「それじゃあ、そろそろ俺は船の中に戻るよ、杏樹は?」

「私も戻るよ、さっきから艦橋の方から視線を感じるし…。」

「本当に?」

「さあ、どう思う?」

「別に、見られたとしてもなんともないだろ?」

「…うん。」


空には、星がある。

幾千もの星の光が地球に届き星座を紡ぐ。

横に並んでいるように見えても物凄く距離が離れているのだ。

そう、彼と彼女のように…。

そして、いくら近づいたとしてもすれ違ってしまう。

人類に課せられたどうしようもないジレンマである。

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