連合軍基地 下関
《用語解説》
*書き換えることがこの先あるかもしれません。
・与那国島
日本の最西端に位置する島
この世界では、下関から近くにある島で空港が作られ、守備隊が置かれている。
東埼などの地名も実際にある。
・日露仏連合陸軍第28師団第12歩兵連隊第3歩兵中隊第3小隊C分隊
長篠昇が配属されることになる部隊
列車に揺られ運ばれること7日、ようやく長い移動を終えた俺はもうくたくただった。
しかし、一息を入れることも出来ず俺は駅の外に用意されていたトラックの荷台に積み込まれ、連合軍基地の中へと入った。
「ここが、下関か。」
「ああ、そうだ。ようやく初陣だな。」
「まったく…少しは休みたい。」
「ここまでの道中も休憩はあったろ?」
俺と共にトラックに積み込まれた兵士がそうぼやいていた。
トラックから降りた俺は荷物を持ちすぐにその場から去り、居るであろうジャンヌとカチューシャを探すことにした。
「あっ、いた!」
「やっぱり、黒髪は目立ちますね。」
「ジャンヌ!カチューシャ!」
「お久しぶりです。昇さん。」
「遅かったじゃない!まったく…。」
「あはは…あえて良かったよ。ここで、また訓練するの?」
「それは、あとでお話します。ひとまず移動しましょう。」
幸運にもすぐにカチューシャとジャンヌに出会えた俺はそのまま歩いて赤レンガの建物に入った。
建物の中は、カフェのような内装だった。
「ここに、しましょう。」
俺は、椅子に腰をかけておもむろに円卓に手を置いた。
「お久しぶりです。」
「7日ぶりだね。」
「はい、それではさっそくですけどお話しますね。」
「ああ…少し休みたいかな…。」
「そんな時間は残念ながらありません。」
「昇、さっそくだけどこれから連合第28師団と行動を共にしてもらうわ。」
「28師団?」
「ええ、今回の上陸作戦に加わる師団よ。」
「…上陸作戦?」
「そう…その為にあなたをここまで連れてきたの。」
上陸作戦…。
いやっ…待ってほしい。
いきなりそんなこと…そうじゃないけど…。
確かに列車に乗っていた兵士もそんなことをつぶやいてはいたけど…。
「はぁ…昇?いい、もう時間が無いの…。今、モンゴル軍によって私達は与那国島が現在占拠されていて島自体を要塞化しているわ。」
「与那国島って…日本の端の方じゃ。」
「あ~…確かにあっちはそうだったけどこっちはそうじゃないの…そもそも地形自体がバラバラだし。同じ形の大陸がいくつものあるし…そんなことより。非常にまずい状況なのよ。」
「与那国島には、守備隊が置かれていましたが現在東埼方面に追いやれていていつ空港が占拠されるかわからないんです。」
「私達は与那国岳方面への侵攻を開始しているの…それで、今度は比川浜から上陸して敵部隊を撃滅することになっているの。その上陸作戦にあんたも参加してもらうのよ。大丈夫…戦艦からの砲撃後に突撃するだけだから…。」
「いや…全然大丈夫じゃなさそうなんだけど…。」
「心配ありませんよ。第七部隊の狙撃兵になってもらうのでそこまで心配はありません。一応、戦車とかも用意ていますのでなんとかなりますよ。」
「はぁ…。そんなこと言われてもなあ…。」
「それじゃあ、明日からの訓練頑張りましょうね。」
「えっと…あっ…うん。」
「それと、これをどうぞ。」
「…なにこれ?」
ジャンヌから手渡された紙を広げる。
そこには、楕円が書かれていて文字も所々にあった。
「地図ですよ!地図!ほらっ、ちゃんと浜の場所とかも書いてあるでしょ。」
「いや…これ…ただの観光案内図じゃないの?」
書かれていたのは、東埼、西崎、与那国岳、久部良岳、宇良部岳のみだった。
後は、浜と書かれているのみ。
しかも、楕円に矢印が引っ張られている程度で地図を反対にしても変わらない出来だ。
空港すら描かれていない。
「仕方ないんですよ。…さすがに、空港の場所は書きたかったんですけど場所や位置が正確な地図だと敵に奪われた時大変です。」
「ああ、そういえば前教えられたような気がする。」
「気がするじゃなくて、教えたわよ!もう忘れたの?」
「いや…忘れてはないよ…。」
「はあ…そういえば、昇の配属って日露仏連合陸軍第28師団第12歩兵連隊第3歩兵中隊第3小隊C分隊よね?」
「…そうなの?」
「そうよ…何言ってんの?覚えた?」
「すまない、もう一度頼む。」
「だからっ、日露仏連合陸軍第28師団第12歩兵連隊第3歩兵中隊第3小隊C分隊よ!わかった?」
「第3小隊C分隊だな。」
「そうよ…それと、あんたの訓練については明日からまた、私達が教えるから…。」
「わかった…。ところで、なんで桜は来なかったんだ?」
いくら上陸作戦に参加するとはいえ、ここでまた俺に教えることがあるなら一緒に来ても良かったはずだ。
だとすれば、何か桜にも理由があったのだろう。
「そうね、まずこれだけは覚えておいて…。この世界に来たのはあなただけじゃない。だから、言い方は悪いけどあなたと一緒に来た人達を監視しているのよ。桔梗は、その確認ね。」
「…信用されてないのか…俺達は…。」
「いいえ、あくまで精神的な問題よ。あなたは、まだ、異常がないだけ。だけど…大人は何かしら考えるものよ。年を取れば取るほど…時間が長ければ長いほど…あなたが居た世界は色褪せ薄れていく。その影響をもろに喰らえばだれであろうと不安に陥るのよ。家族が居ればなおさらね。」
「その分…俺は、まだ、実感がないだけなのか…。」
「そういうこと…だから、くれぐれも安易な発言はやめてね。第5小隊はあなたと同年代くらいの志願兵からなっていて、小隊長も比較的若い…だから、こそ心配なのよ。」
「発言には気をつけるよ。」
「それと、教えた通りに決まった行動を取るのも忘れないで…。」
「わかった…。」
いきなりこんなことになるなんて…。
いやっ…この世界に来た時からずっとそんな感じなのかもな。
同年代の志願兵か…彼らは一体どんな人物なのだろう?
「それじゃあ、明日からよろしく。ジャンヌ、私は用意があるから先に昇を兵舎に案内しといて!」
「はい、それじゃあ、行きましょうか。」
「うん、もう少し休みたかったかな。」
「そうは、言ってられませんので…。」
「わかった…もう行こう。」
俺は、建物をあとにジャンヌについていった。
前居たところとは違い潮風の匂いがする。
海に近いのだろうか…。
風が俺の頬を撫でた…。
ジャンヌの髪も揺れていた。
金色の髪がふわりとなびきジャンヌの髪の香りが潮風と混ざり合った。
ジャンヌは、そんな髪を鬱陶しそうに右手で触っていた。
しばらくして、部屋に案内された俺は、この前の場所と同じような無機質のベッドに腰をかけ部屋を一望した。
相変わらず何も無い。
本来は、4人部屋なのだろうがここには俺のベッドしか置いていなかった。
「前と変わらないな。」
「そうですね…。それじゃあ、また、後で。」
「ああ、わかった。」
俺は、その後基地を歩き回った。
特に目的も無かった。
しばらくして、海が見えた。
そして、鉄で覆われた船も…。
どこか教科書じみた印象だった。
だけど…ここは、俺の世界居た世界ではないのだから。
きっと、何もかも気のせいなのだろう。
さらに、基地を歩いて行くと岸の方にポツンと何か大砲のようなものがあった。
同じような物がここの港の小島ににも置かれていた。
ここには、浜辺は無く、消波ブロック…ではなく、大きな岩が積まれていた。
その岩に波がぶつかり、白い泡がたっては消えていった。
そして、水平線の先から煙が上がっていた。
船の物なのは確かだった…。
何やらこちらに向かって突き進んでいた。
まだ、日は傾いていないのでその姿がよく見えた。
それは、紛れもなく『戦艦』だった。
白と黒だが、おそらくは戦艦なのだと思った。
そう…社会の教科書に描かれていたそれと同じだった。
戦艦三笠…。
確証は無いがそれに、似ていた。
俺は、その場を後にし部屋に戻った。
部屋に戻るとカチューシャが扉の前で俺の帰りを待っていた。
俺は、カチューシャに引っ張られながらジャンヌの待つ小部屋へと入れられた。
あんなに、疲れていると言ったのに相変わらず…加減されることなく授業は行われた
のだった。
7日ぶりの授業だったが…俺は、どこか安心して彼女達から教えを賜った。
俺は、また、日常が戻って来たと思ったがそんなことはなかった。
この時、既に俺と彼らには時間が無かったからである。




