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幽霊は夜に行き場を求む?

用語解説

・幽霊

地域や時代により様々な話がある。

その中には、作られた話もある。

夏の風物詩


・ポルターガイスト

心霊現象の一つ。

隙間風や、震度0、共振などが原因だと著者は考えている。

この男は、何故いきなりそんなことを言い出すのだろうと思った。

彼とは、今あったばかりだ。

なのに…何故そのような馬鹿げたことを言い出すのだろうか?

彼はきっと愉快な人かもしれないっと思った。

そうでなければ、誰も信じないだろう。

「「お前は、幽霊だ。」」なんて、言われても…。

しかし、彼の眼は本気だった。


「…あの…わけがわからないんですけど。」

「…ああ、すまない。…きっと、君にはまだ知らないんだね。」

「はい、私たちの方からも伝えていません。ましてや、他の人との交流も彼にはありませんから。」


ジャンヌがそう口にした。


「…あのさあ、俺には何のことなのかもわからないんだけど…それに、だいたい幽霊に足があるわけじゃないし、それに、ほらこうやって物に触れたりもできるし…。」


俺は、自分の着ている服を撫でた。

勿論、服には俺の行為が影響していた。


「そうですね、でも、それが生きているとは言えませんね?」

「いや…だからさ…実体があるっていう事に…なるよね?」

「…のぼるさん、それはポルターガイストと変わりませんよ。」

「…いや、でも…さあ。」

「そうですね、あなたは人には見えています。しかし、幽霊は人にも見えます。」

「…ちょっと待ってくれ、その判断基準じゃ誰でも幽霊って、事になるじゃないか。そもそも、俺は幽霊なんかじゃなくて、ちゃんと生きている人間だって!」

「…昇さん、それじゃあなたは今までに他の人に触れたことはありますか?いえ、触れられましたか?私達の他に?」

「それくらい…。」


人に触れられ…ってない?

そんな、まさか…いや、絶対に誰かに触れたはずだ。

確か、廊下ですれ違って俺は…ぶつかって、謝ってそこを後にしたはず…。

すれ違った?

ぶつかった?

謝った?


…ぶつかった時の「「感触」」は?


「…そんな。えっ、いや…はは、そんなことがあるわけない。」

「昇さん?」

「昇?あんた、何か思い当たる節があるんじゃないの?」

「…そうですよね?」

「昇君、私も君のように実感したよ。私達は、この世界に来た時にはすでに人間では無かった。ただ、身体を失っていただけなんだ!」

「…急には、認められないのはわかる。しかし、それでも今は事実だ。身体が無いのが問題なだけだ。」

「…それじゃあ…なんで俺は今まで気がつかなかったんだ?」


何だったんだあの疲労感は?

あの空腹は?

あの痛みは?

あの眠さは?

あのだるさは?

あの想いは?

あの記憶は?


…わからない。


「無意識による作用…ようするにファントムペイン…いえ、それに近いものかもしれません。昇さんの場合、身体を全部失ったことで痛みはなく、また、この世界でリアクションを起こせるため、本来すぐに気づくであろう損失に気がつかなかった…っと、診断できます。」

「…それじゃあ、幽霊なのかやっぱり?」

「ああ、私も君と同じ症状だった。…けど、私や同僚は荒療治でね。自分の身体…自分とそっくりの殻の顔を見て…そのことに気が付いたんだよ。なんせ、彼らも意地が悪くてね。わざわざ上下逆さまに見せてきたんだよ。ちょうど、目先に鼻と口が見えるようにね。鏡かと思ったよ。ここには、上下逆さまに写す鏡がある…ってね。でも、彼らは急に揺れ始めた。その時だった、女性の悲鳴を聞いたよ。殻の目の前で口を手で覆いながらひたすら泣いていた。…その後、私達は殻を着た。…おかしな表現だな。自分で自分の皮膚を着る?それとも、体の中に入る?もうその時にはどうでも良くなっていた。」

刑部おさかべ、あの時はすまなかった。…しかし、信じはしなかったはずだ。そこの彼と同じようにね。君らは、少ない期間を一緒に過ごした。それもあって、自分たちが変わったことには気がつかなかったんだろう。」

「ああ、そうだ。」

「あの、昇さん?」

「ん?何、さくら?」

「あの私が行ったこと覚えていますか?」

「国籍のこと?」

「はい…。」

「幽霊には…発行できないかな?」

「…違います。あなたの身体を作っていました。」

「そもそも、あなたの規格にあう殻は生産されていませんでした。そのため、やっと完成したんですよ!」

「けど…身体を得たくらいじゃ…。」

「だから!そうあんたが思うだろうと思って、刑部さんとあんたが会えるようにしたのよ!」

「…演習じゃなかったのか?」

「演習も兼ねて…いえ、引き合わせる為よ。こうでもしないと、あなたは私達の言うこと通りに訓練しかしなかったでしょ!というか、薄々気がついていたんじゃないの?自分のことに?」

「…。」

「答えなさいよ、昇!」

「俺は…。」

「気がついていたんでしょ!」

「…ああ。」


たぶん、そうなんだろう。

きっと、わかっていた。

…でも、きっと今だけだって、誤魔化していた。

なっ、そういうことなんだろう?


昇は、そう自分に言い聞かせた。


「…。」

「…どうやら、納得したみたいだね?」

「はい…でも、やっぱりピンと来なくて。」

「焦ることはないさ、それにそのことも杞憂というものになる。」

「…どういうことですか、ピョートルさん?」

「ああ、桜。昇君の身体は明日の朝にでも着くかもしれない…っとだけ言っておこうか。」

「むっ、さてはボナパルトさんや山本やまもとさんと一緒に何か企んでいましたね?」

「さあ、私は生前より隠すことは隠し通す男でね。」

「まったく…これだから、貴方は…。」

「はあ…って、ことは私やカチューシャはいいように扱われたんですね?」

「敵をあざむくには味方から…だったかね?」

「…じとーっ、やっぱり信用できませんね。山本さんの方が頼りがいがあります。」

「そうですね、私もボナパルトさんの方が信用できます。」

「こら、そんな人前で悪口を言わないの!こんなのでも、お偉いさんなんだから!」

「…こんなのでも?…カチューシャ、ちょっと私の評価が低くないか?」

「低くもなりますよ!なんで、もっと早く用意ができなかったんですか?というか、いつ完成してたんですか?」

「それは…だな、黎明期の殻の製造時の物がまだあって…すまない。実は、自衛隊員と共に殻を着させることも可能だったんだ。」

「はあ…それでは、私達と共に…?なぜ、なぜですか?ピョートルさん?それじゃあ、民間人を分散させた理由は?」

「身体の無い方が訓練の際に、好都合だからだよ!どんなに過酷な訓練を組んでも一時間寝かせれば無かったことにできるからね。」

「まさか、いや…それは、もうブラックじゃ無いですか!」

「まあ、大人ってそういうことだし、日本人は働くのが好きなんだろ?だから、私は基地の物に高照度ライトを彼らに浴びせることで時間間隔を無くさせるよう命じた。」

「…嘘だろ。」

「…本当だ。」

「…昇君、桜ちゃん、あとカチューシャとジャンヌ?ちょっと、ここを離れてくれないか?」

「あっ…あれれ…もうこんな時間ですね。昇さんを兵舎までお連れしないと。」

「そういえば…今日は弾薬の整理をしなくてはいけませんでした。それでは、御機嫌よう!」

「…ピョートル、カチューシャはもう寝ます。今夜は起こさないでください。あと、この部屋から逃げ出したら機関銃でぶち殺し…いえ、お戯れします!」

「…さて、お話頂けますか?」

「はっ…話せばわかる?」

「おっと、私は帝国陸軍ではありません。航空自衛隊です。なので、お話は聞きますよ?でも、話し方次第ですかね?」

「…悪気がなかったわけでは…。」

「…さて、どうしましょうかね?」

「誠に、申し訳ございません。」


その夜、バーには一人の男が居た。

彼はただ、虚ろな目をしていた。

酒の香りを一通り嗅ぐと男は紙を握りしめ。

どこかへと歩いて行った。

ただ、聞いたことのある笑い声だけが、彼を知っていた。


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