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演習は、実弾至上主義で!

用語解説

・D.520

フランスの航空機

武装にMAC1934 7.5機関銃、HS.404 20㎜機関砲を持つ。


「おはよう、桜。」

「おはようございます。」

「うん、おはよう。」


朝、いつもと同じように桜のもとへ向かった。

特に考えることもなく、いつものようにここへ足を運んだ。


「そういえば、頼んでおいた国籍の手続きが済みましたのでもうすぐこちらに届くようです。」

「えっ?」

「あれっ?言っていなかったですか?」


そんなこと聞いたっけな。多分、俺が覚えていないだけなのかもしれない。


「あっ、そうだね。…ところで、なんで今俺には国籍が無かったんだっけ?」

「それについても、依然申し上げましたよ。」

「あれっ?」


はあ~っと、桜は軽くため息を吐き出した。

俺の記憶力のなさに少し呆れているようだった。


「…まったく。少しは自覚を持って行動してくださいね。」

「そうは言ってもね…。」

「国籍のない事態はありえないですか?また、そんなこと言ってというか、それも何度か話しているはずですよ。」

「…すみません。」


今度は、本当に呆れていた。

申し訳ないとは思うが、仕方がないっと心の中で俺は思っていた。


「はあ~、まあそれは置いといて。ところで、昇さん?」

「ん、どうしたの桜?」

「はい、懐中時計と腕時計どちらがもらえるとしたら嬉しいですか?」

「腕時計かな。」

「そうですか、それじゃあ頼んでおきますね。たぶん、同じ便で運ばれてきますから。」

「…同じ便?」

「はい、郵便です。なかなか基地まで届かないんですよ。」

「でも、道はあるからすぐにでも届きそうだけど?」


すると、彼女は少し考えるような動作をしてまた、俺に顔を向けた。


「昇さん、それは多分、あなたの世界のことですよね?」

「えっ、ああ。」


「やっぱりっ、そうですか。」っと、桜は納得した。


「昇さん、この世界はまだ、インターネットそのものが普及してないというか電話すら公共機関もので民間には流通していません。」

「…というと?」

「電報はあっても電話がないんですよ。」

「あっ、うん。…それじゃあ、それと郵便の関係は?」

「…実感が湧きませんよね。つまり、情報を伝達するのに時間がかかるんですよ。そして、交通網もそこまで整備されていません。ましてや、インターネット販売、即日配送サービスとかそういった交通基盤と通信網を利用したものが無いんです。」

「…それじゃあ、連絡するのに時間がかかるじゃん。」

「だ・か・ら…さっきからそう言っているじゃないですかあ!」

「…桜さん?」

「だから、すぐにメールが届かないんですよ!それに、通信するにもすぐにはできないからデータ量が膨大になるんですよ!本が届くまで何日もかかるんですよ!そんでもって、鉄道と飛行機と船を使ったりしてやっと手紙が届くんです!」

「あっ、うん。」

「はあ~、うらやましいですね。そっちの世界は。はあ、やっとここまで技術が進歩したのに…。」

「はははっ…。」

「私だって、プリクラとか、ポケベルとか、携帯電話とか、スマートフォンとかいじってみたいです!」

「あの、スマートフォンくらいなら少し貸せるけど。」

「…嬉しいですけど、そもそも繋がってないじゃないですか!どこの通信センターに連絡すればいいんですか?」

「桜、落ち着いて…。」


その後、俺と桜の様子を見に来たジャンヌによって、桜は宥められ俺は引っ張られ、愚痴をこぼされながら、これまた不機嫌そうなカチューシャの前に連れていかれた。

目の前には今、カチューシャがいる。


「…遅れてすまない。」

「…。」

「…ごめんなさい。」

「はあ…まったく桜といちゃいちゃするのはいいけどせめて…遅れないように。」

「…いや…はい。」


反論しようかと思ったがカチューシャが、やけに上機嫌そうな作り笑いを浮かべていたので止めた。

まだ、死にたくはない。


「イチャイチャしていません!」

「う~ん、でも、やっぱり日本人同士ですので?…もしかしたら…とか?」」

「ジャンヌ!」

「すいません。からかいたかっただけですのですいません。…でも、今日はなんだか落ち着かなくて…。」

「まったく、それじゃあ、ここは待たせましたよ。」

「了解、それじゃあ、昇も準備しなさい。今日は、特訓だから気を引き締めなさい。」

「…特訓か。」

「ええ、特別戦闘訓練もとい演習よ。」

「…何が違うんだ…というか、演習って何の演習なんだカチューシャ?」

「まあ、ご心配なく。いつもと同じように構えて引き金を引いてください。今回は、実弾を使います。」

「…いつも通りか。簡単に言うなよ。大変なんだけど反動を喰らったりとかその後の片付けとか。」

「まあ、それも踏まえて訓練ですからね。」

「さて、それじゃあ、そろそろ概要を教えるわね。今回の演習の演目は、対空射撃。攻撃目標は、戦闘機に曳航されている白い布に向かって対空機関銃を発射。数回、あんたの近くに接近して来るから撃ちなさい。ただし、戦闘機の機体に当てたら…その時は。まあ、そういうこと。ついでに言うと、戦闘機側も機関銃座近くに置かれている目標に向い機銃掃射をします。」

「…いや、待て待て。それって、どちらかが間違えたらその時点でどちらかが死ぬんだけど。」

「まあ、持ちつ持たれつつってやつですよ。特殊部隊では当たり前ですよ。仲間に向かって発砲することくらい。」

「…いつから、俺は特殊部隊に配属されたんだ!」

「カチューシャ、昇さんはまだ、特殊部隊一員になれませんよ。まだ、馬とか乗り物の訓練、火器実習、水泳、G訓練、サバイバルスキル諸々、武器術及び格闘術の訓練が必要ですから。」


…やることが、多すぎるだろ。

というか、G訓練ってなんだろう。


「それじゃあ、早く!ぼやぼやしていると攻撃されるから!」

「本当に、訓練なのか!」

「訓練の開始の合図はサイレンだから!」

「わかった。」


そんなわけで、今日の訓練が始まった。

俺は、まず最初に弾を取りに行かなかければならなかった。


連合領空


「…相変わらず狭いな。…これが、現最新鋭兵器とはな。F-15Jイーグルが、どれだけ快適なことか。」


刑部おさかべ直人なおとは、何事も問題なく飛行をしていた。

彼の機体の他に、二機の航空機が刑部の後ろに付いていた。

まず一人目はルミア・パラディール。フランスの女性パイロットだ。

そして、二人目はヤコフ・アニシェフ。ロシアの男性パイロットだ。

彼らは、私が身体を得てから初めて出会ったパイロット達だった。

そして、私よりも遥かに戦闘機の扱いに練れていた。


「直人、そろそろ高度を下げないか?」

「ああ、そうだな。」


今、私たちが乗っている戦闘機は「「D.520」」。

前の世界での、フランスの航空機だそうだ。

これが、何故最新鋭兵器なのかと言うと工業の発達が遅れているのではなく、この世界の工業水準が、第二次世界大戦前程度のものだそうだ。この戦闘機は、この世界で作られたものではなく、他の世界から技術を得て、開発したものだという。とはいえ、基礎設計は変わっておらず武装は、7.5㎜機銃4つと。20㎜機関砲だけだ。

ただし、これはあの世界のものとは別のものだ。

何故なら、この兵器は魔法によって補正が施されているからだ。

工業魔力と言われる、科学テクノロジー魔術オカルトの複合物、錬金術とも言えるかもしれない。

この力の作用によって本来の機体の性能をより高め、補い、より完成度の高い物として生産されている。

つまり、この工業魔力インダストリアル・ウィッチクラフトが、私が交戦したF6-Fヘルキャットの強さの正体だった。

最初は、驚きはしたがそれでも負けたことに変わりはなかった。

もしも、どこかの国の戦闘機が機体に核、または化学兵器を搭載して攻撃してきた際、あの時のように苦戦を強いられている姿を晒していたらっと、考えてしまった。

そして、私はF-15Jイーグルから、D.520に乗り換えた。

皮肉なことに、ジェット戦闘機からプロペラ機に。

それこそ、技術の逆転と言うようにだ。


「…もしもし?」

「ん?」

「あっ、刑部さんですね?」


機体が下降する中、基地から連絡が入った。

もう基地まで近い。


「…誰だ?」

「あっ、すいません。桔梗ききょう桜と申します。」

「刑部直人だ。」

「今回への演習のご参加ありがとうございます。陸上では既に部隊が展開しています。演習後は、基地に着陸。その後、機体の整備等の確認をしてから宿舎にてお休みください。それではよろしくお願いいたします。」

「…。」

「刑部さん、今の通信は?」

「さあ、おそらく俺の案件だと思う。」

「了解、余計な詮索はしないけど今の声、幼かったわね。」

「そうだな。新兵だと思う。」

「キキョウか…。あなたと同郷かもね?」

「さあな、まあ、もしかしたら会えるかもしれないな。…全機攻撃用意。目標、地表構造物。」

「了解。」

「了解!」


機体を右に大きく傾け、演習エリアに入る。


「はは、機関銃なんざ一発も当たらねえよ!」

「そいつはいい、当たったら俺とルミアの分の酒代払って貰うぞ。」

「…そいつは、困る。」

「くすつ、あら随分と弱気ね?」

「うるせえ!」

「はあ~、命懸けろよ!」

「そんなもの、とっくに懸けているわよ!」


基地にて


「…うるさいな。…あれか。」


サイレンの音が鳴り響いた。

演習が始まったらしい。

俺と同じように兵士が機関銃を空に向けていた。

俺は、一人だが小隊なのだろう三人くらいが一つの機関銃の周りに居た。

他にも、何人かが程よく離れた場所に転々と立っていた。

そして、彼らは決まった方角のみに機関銃を向けていた。

おそらく、建物の方には向けないように指示されているのだろう。

そんな俺をよそに演習が始まった。


「…っ。」


耳を抉るような音が辺りに響いていた。

地表に向かって降る飛行機。

空に向かって火を放つ機関銃。

ただ、戦闘機が曳航する白布だけに狙いを定め撃ち続けた。

幾度も装填により攻撃の機会を失い、接近を許した。

辺りには無数の穴が穿たれ、目標のコンクリートブロックは無残に砕けていた。


「敵機接近!」

「頭を下げろ!屈め!屈め!」

「装填、間に合いません!」

「いいから訓練通り!伏せろ!」

「撃ち方止め!止め!」

「…っ。」

「次弾装填!」

「残弾数、確認よし!」

「装填!」

「装填中止!総員屈め!」


「はあっ、はあ…。…ん?」


サイレンの音が止み、教官と思われる人達が止め!っと、叫んでいた。


「お疲れ様、昇。」


俺は、カチューシャの声でようやく身体を止めることができた。

もう勝手に身体が、動いていた。


「ああ、…そっか。…もう弾が無かった。…それで、演習の結果は?」

「今日の夜には発表予定よ。それより、この後はあなたにも参加してもらうから身体を洗って来なさい。ここは、私に任せて!」


っと、いつものカチューシャより数倍くらい優しく微笑んでいた。


「それじゃあ、よろしく。」

「ええ、それじゃあ、またね。」


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