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学習は、実践ともに

用語解説

・榴弾砲 加農砲

砲に角度をつけるのが、榴弾砲。砲の角度がほぼ水平で砲身が榴弾砲より短いのが加農砲。

現在では、榴弾砲で統一されている。

・迫撃砲

榴弾砲より高角度を取れる大砲

歩兵規模での運用が現代では多い





なんやかんやで、ここでの生活にも慣れては来た…しかし、未だに階級とか部隊のなんとかとか、そう言った事はわからない。

正直言って、なんで自分がここに居るのかがわからないくらいに。

平然とした活動をしていた。

何時ものように朝を起きて、朝食を取り、雑事を済ませて、俺は、ジャンヌ達のもとに向かい、訓練を終え、昼食を取り、今度は座学を長時間に渡り行う。

このサイクルには、物凄く既視感があった。

ようするに、学校での生活がそのまま…ある程度変更はあるもの。

授業とか、実習とかそんな感じで身近に思えてきた。

けれど、本当にこれでいいのか俺にはわからなくてなってきた。


「…さん、…のぼるさん!」

「えっ、あっ…あれ…。」

「まったく…何ぼけっとしているんですか?そんなに私の授業が退屈ですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど…。」

「そうですか…では、続けますね。」


俺は、少し悩んでいるのだろうか。

それとも、疲れているのだろうか。

もしくは、生活に慣れてきたせいで今までの緊張感が解けてしまったのだろうか。


俺は、桜の声がどんどん遠くなってきてはまた、近づいて、波のように周期的にそれが俺にぶつかっていた。

決して、一定ではなくて、間もない、クラシック音楽を肌で激しいほど感じる。

そんな錯覚を覚えていた。


「さて、次の問題ですよ。」

「ああ、…むずいな。」

「部分ごとに見て行けばたとえ、帝国大学の問題であっても解けるものですよ。それに、この物理の問題は、数学をもってやれば簡単にできるものです。」

「…数学が苦手なんだけどね。」

「本来ならば、微分積分程度はものすごくわかりやすい考え方なのですが…。ようするに、難しくなる要因としては極限の考え方です。」

「さっきの話みたいにやればいいんだっけ?」

「はい、ピラミッドですね。」

「放物線は、直線に近くなる、そして、その中にピラミッドが存在する…そんな、感じだっけ?」

「ええ、そうですよ。それでは、問題です。」

「…。」

「無言で解答しないでください。問題は、簡単ですよ。加速度10メートル毎秒、角度30度で、砲丸を投げた時の最高点の高さは?」

「…わかりません。」

「ちゃんと、考えてください。」

「まずは、加速度を積分して…。」

「そうですね。」

「次に、鉛直方向の速度を出して、…こんな感じ。」

「そうですね、だいたいそんな感じです。」

「それにしても、不思議だよな。こんな変な数でも正解になるなんて。」

「実のところ、そういうことなんですよね。弾道学は、いかにしてその精度を高め、目標の近くに可能な限りぶつけることを目標にしているんですよ。」

「…それじゃあ、当たらなくてもいいの?」

「それは、厳密に言うとそうなりますね。当たらなくてもいい、しかし、確実に倒せる。間合いという表現が正しいですかね?」

「そんな感じなのか。」

「はい、ですが…これもかなり大変なんですよ。時限式の信管だと目標到達前に炸裂することも考えられます。それこそ、戦闘の主流になりつつある榴弾砲のように、それまでの加農砲のような直射ではないですから。まあ、自走榴弾砲だと直射もできちゃいますが。」

「…何が違うのか、わからないけど。ようするに、今も敵に砲弾を当てるのは難しいってこと?」

「はい、その通りです。違うのは、計算量ですね。まあ、他にも要素はありますよ。」

「そうなんだ。」

「はい、そういうのはカチューシャの方が詳しいと思いますよ。」

「…カチューシャか、なんていうか怖いんだよね。」

「仕方ありませんね、それより怖いものをあなたはこれから見ることになるのに、これくらいの事で恐怖を感じてしまうようでは…。」

「…これから?」

「あっ、はい。…気になりますよね?」

「ああ、勿論。」

「はい、隠していても仕方がありませんね。実は、ジャンヌは未来をある程度予知できるんです。」

「…いきなり信用性ゼロなんだが。」

「まあ、それは追々。それで、彼女が言うにはあなたは高確率で何かしらの人為的な恐怖を味わうことになります。その中で、あなたがその後にどうなるかについてもジャンヌはすでに見えています。」

「…なんか、占いみたいだ。」

「私は、自分のルーツ的に信じていますけどね。」

「それで、ジャンヌは何て?」

「嬉しそうでしたね。」

「…嬉しそうか。」

「ですが…信用してはいけませんよ。彼女の予知能力がどの程度のものかは知りませんが、噂だと彼女は誰かの死すら見えるようですから。」

「死を見つめるか。」

「…妙に冷静ですね。」

「いや、そんなことはないぞ。だいたい、そんなこと俺にはわからない。これまで、何日も彼女と話したけど俺には何も言ってくれていないし。」

「そういうものですよ。私だって、山本さんだって、隠し事はしますから。」

「隠し事か。」

「さて、今日はこれで終わりです。それでは、おやすみなさい。」

「ああ、お休み。」


…今日も難しかったな。

それにしても、微分積分とか最初やったけど、使い方がわかるとけっこう楽しいものだな。

今日は、もう寝よう。


「お疲れ、桜。」

「はい、昼間の訓練お疲れ様です。カチューシャ。」

「ええ、意外と身についてきてはいるもののまだ、先は長いと思うわよ。基礎体力がまだ、基準以下。あのままじゃすぐに死ぬわね。」

「それは、困ります。何としても良い兵士として戦場に送り出さなければいけません。」

「わかっているわ。とはいえ、通常の兵士の場合だけどね。格闘能力も申し分もないというか、第一射撃さえできれば初陣としては合格よ。」

「なるほど、それなら大丈夫そうですね。彼の初陣は、西方面になりますかね。」

「ええ、間違いなくあそこになるとは思うわよ。問題は、あとどのくらい時間があるのかが鍵ね。明日にでも、すぐにライフルを支給して撃たせましょう。」

「手配はしてあります。それじゃあ、いつも通りの時刻に彼を呼んで、それからすぐに射撃練習といきましょう。」

「了解、それじゃあまた明日ね。桜。」

「はい、おやすみなさいカチューシャ。」


カチューシャと別れた後、桜は軽くため息をついた。


「明日から、本格的に実戦練習となりますね。それからは、「「一般部隊との共同演習」」、そこで、彼は彼らとの違いを感じることになりますかね。」


「別に、それくらいの事ならまだしも、そこで事故を起こされるとこちらとしても…いえ、彼らにも死んでもらわないといけません。そのため、人選はすでに終わっています。」


「とはいえ、死んでもいい人ではありますが、居なくなってしまっては困ります。誰か1人でも生きて帰ってくれれば合格、逆に昇さん一人での帰還は不合格、全員生還で、戦闘に参加してれば満点です。」


「どうせ、誰かが死ぬことになります。「「軍隊」」とは、「「運隊」」、全てが運により決まりる部隊。」


「戦場で生き残れるかどうかは、天命。」


「…もう今日は、寝ましょうか。」


桜は暗闇の中に消えていった。


「おはよう、桜。」

「おはようございます、昇さん。」

「おはよう。」

「おはようございます。」

「今日は、みんな居るんだ。」

「はい、今日は、大事な日ですから。」

「…そうなの?」

「ええ、今日から射撃訓練を行います。」

「射撃訓練か…的撃ちでもやるの?」

「はい、的撃ちもありますよ。とはいえ、まずはこれから。」


ジャンヌは、昇に銃のようなものを渡した。


「…なにこれ?」

「まずは、銃になれることからです。今日中には実弾を撃ちますので、あくまでそれは、訓練用のライフルです。ちなみに、弾倉も穴埋めがしてあるので動きません。」

「そうなんだ。」

「それと、はい。」

「これは…漫画?」


カチューシャからは、絵の描かれた説明書を貰った。


「漫画じゃ無いわよ。あくまで、一般兵士に配布する銃の取扱説明書。絵が描かれているのは、ベトナム戦争でのM16みたいな扱いをされたくないし、わかりやすい方が覚えるのが簡単だからね。」

「なるほど。」

「それじゃあ、射撃場までダッシュ!」

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