表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/150

ベアトリクスとの別れ、3国の絆

用語解説

・Scho-Ka-Kolaショカコーラ

ショカコーラ、カフェイン入りのチョコレートで、ドイツ軍の糧食でもあった

・エトナ山

シチリア半島にある火山

カターニア・フォンターナロッサ空軍基地


イタリアのシチリア半島、はてさて今は何月だったのか?

そんなことを教えてくれないとばかりに、日差しと風がある。


「なあ、ベアトリクス…今日は、何日だっけ?」

「今日は、6月23日ですよ。」

「そうか…。」

「ふふっ、昇さんは実にルーズですよね。というか、カレンダーは確認しないんですか?」

「なんか見るには、見るけど結局忘れてる…。」

「4月2日に昇さんは、あの作戦に参加したんですよ。それから、数週間…風の魔女と過ごして、今度はこの私、電気の魔女と過ごしました…。」

「…数週間、そうだったかな?」

「ええ、実にイライラします。」

「それは、それは…。」


俺は、この空港に降りる前にとある山を見た。

その山は、エトナ山という…この飛行場の北側にあり、その山は…アンジェラ、水の魔女との最終決戦地であり…俺が、ミア達…いやっ、多くの兵士を失った場所だった。


その後、ローマ帝国は滅亡した。

またしても、というべきか…。


俺は、コーヒーを飲みながら、ベアトリクスと話をしていた。

実に、気長な旅であると思う。

コリアンナ曹長は、お茶菓子のクッキーを貰いに行っている。

俺は、日本国旗のような物が描かれた缶に入ったチョコレートを口にしている。

Scho-Ka-Kolaショカコーラ、ようはカフェイン入りのチョコレートで、コーヒーと同時に摂取するという悪魔的な諸行をしている…。

まあ、気にすることもないだろう…。


「なあ、このドイツ帝国も滅びるのか?」


俺は、周囲に人が居ないか確認しながら言った。

とは言え、飛行場横のガラス張りの庭園のガセポの中に居るので、本当は気にする必要がないが、コリアンナ曹長に見つかるとマズい…ベアトリクスが口封じするとはいえ…。


「どうですかね?」

「…ん?」

「滅んだら、滅ぶだけですよ…。生命に解放あれ!」

「…what?」

「汚い英語なんて使わないでください!」

「ああ、ごめん…??いやっ、答えになっていないぞ…。」

「この国が滅んだときは、私が昇さんに殺される時ですよ…。」

「…。」


その言葉で、俺は瞬時に察した。

消失の魔女であるサラ、水の魔女のアンジェラを殺したのは俺である。

LLF(生命解放軍)による…。

それとも、俺がやるべきこと…。

もしくは、運命…。


「いやっ、そうかもしれないが…そうじゃないかも知れない…。」

「…私は、昇さんに殺されたいですよ。」

「ベアトリクス!」

「…ごめんなさい!」


俺が、ベアトリクスを怒鳴ると、彼女は委縮した。

初めて見る表情であったが、それを見て、俺は我に返った。


俺は、本心から彼女のことを思っていたのだろう…。

ただ、なんというか今までにない感情だった。

しかし、自然と違和感がない。

それは、まるで彼氏が彼女…愛すべき人に向けるような、それ…。


(…ダメだよな。)


死者を愛すのか?


そんな気持ちの悪いくらい冷静な言葉が俺に突き刺さる。

自分自身の言葉であるのが、なおさら質が悪い。


「…。」

「…。」

「…はぁ。」


俺は、ため息をついた。

だから、冗談めいたことを言うほかなかった。


「君を殺すか…。」

「はい。」

「嫌だよ…でも、それしかないのか?」

「昇さんが変えるためには、それしかありません。」

「みんなの為に?」

「いいえ、全部あなたの為ですよ。」

「俺の?」

「いえっ、これから、これまで人を殺してきたのは全部自分自身の為です。後悔しているとはいえ、投げ出さずにここであなたと話しているというのは、そういうことですよ…。」

「…そうかな。…そうだよな。」

「昇さん?」


俺は、たぶん…何かが嫌だった。

強制とか、義務じゃなくて…やれと言われたことが何かわからないんじゃなくて…。

なぜか、意識を彼らに委ねられなかった。

それは、俺が弱いからだ。

楽な方に流されれば、いいはずなのに…。


「ごめん、ベアトリクス…また、弱音を吐いて…。」

「ふふっ、いいんですよ。昇さんらしくて…。」

「俺らしい?」

「はい、いつでもLLFに頼めば意識、記憶も全部忘れられます。けれど、昇さんはそうしなかった…たぶん、これからもですよ。」


ベアトリクスは、俺のことを何もかも見通し…いやっ、知っているようだった。

それこそ、何年も前から…。

そんなはずはないのに…?


「ベアトリクス様、クッキーをお持ちしました。」


コリアンナ曹長がやって来て、その後はただ3人で話した。


翌日、6月24日に再び、B-29に乗り、ドイツ…エアフルト・ヴァイマール空軍基地に向かった。


そして、俺はベアトリクス、コリアンナ曹長と別れ、家に帰った。




7月2日


この日、パレードが行われた。

その主催者たる人物は、アドルフ・ヒトラー…。

酒場で、老人たちと一緒に白黒のテレビを見ていた。


「我がドイツ国民よ、ここに三魔女の力による新たな航空機の正式採用を祝い、告知をしよう。

空軍力において、今後、ドイツは負けることがないと!

私達の国家の前において、魔女たちによる代理戦争から、人類への戦争へと大きな変化、パラダイムシフトが起きている!

これは知っての通り、とある青年によるものだ。

各地で、魔女が敗北している。

しかし、相打ちによるものであり、どれも噂話や伝説に過ぎない。

ならば、最強を示すには人類を、ドイツ国民を強化すると必要がある!

そして、ここに、大日本帝国総帥東条英機、イタリア王国首相ムッソリーニの2人がここに来た。

私達は、敵国であるアメリカ、イギリス、フランス軍残党、アフリカ諸国、列強植民地を撃ち滅ぼし、すべての人々に平等で、武力による戦争の無い平和な世界を樹立する!

汚染されたユダヤ人を全てこの世界から、抹消し!

浄土とする!

そして、国民にのみ、恒久的な生活を提供することを約束しよう!

ドイツ帝国、万歳!」


ヒトラーの演説の後、すぐに東条英機が壇上に上がった。


「こんにちは。

私は、大日本帝国総帥東条英機です。

本日は、お呼びいただきありがとうございます。

…さて、私達日本帝国民、ドイツ帝国民、そして、あなた方ドイツ帝国民はユダヤ人により苦しめられてきました。

それは、資本主義を利用した搾取システムです。

そして、我が日本帝国の魔女、浅間様からの言伝を頂いております。

『我が国民において、一蓮托生であり、世界は統合すべし、悪しき者を撃つべし。』…。

これにより、私達はこの航空機を本日より生産し、覇権を得ることになりましょう。

ただ、それだけではありません。

日本から、ドイツの皆様へプレゼントがありません。

まず、大和型戦艦25隻をお送りしました。

次に、翔鶴型空母5隻、秋月型防空駆逐艦20隻、タンカー50隻をお送りします。

そして、今後も約35000隻の贈与を計画しており、航路を確保することが出来ることでしょう。

我等は、共にあり、ドイツ帝国万歳!」


会場の歓声がよく聞こえる。


「私は、イタリア王国首相、ベニート・ムッソリーニだ。

今回は、新型航空機の発表のお祝いと、ドイツ帝国へのお礼を申し上げに来た。

数か月前、我がイタリア王国はローマ帝国との戦争により、大きな被害を受け、水の魔女であるアンジェラを失った。

だが、あなた方ドイツ帝国は武器や資源、兵士達や民間人への手厚い支援を行い、順調に復興と、占領地での入植が行われている。

ひとえに、あなた方の協力があってこそだ。

ローマ帝国にある鉱物資源との航路もあり、今後はより盤石な軍備を整えられることでしょう。

我がイタリア王国は、ドイツ帝国と共にあります!

ドイツ帝国、万歳!」


白黒テレビから、そんな会場の熱気が映し出された。


その日、俺といつもの画家の老人たちと飲んでいたが、1人だけなにやら、懐かしそうな視線を浮かべ、ビールを飲んでいた老人がそこには居た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ