過去との再会は突然です。
・解説
戦闘機のデータについて
軍事機密であるため、正確な情報は不明
そのため、この作品ではある程度水増ししたり減らしたりしています。
「やっと、着いたのか。」
「ええ、そうね。いや~長かった。う~ん、ようやくゆっくりできる。」
昇が、つぶやくと。向かいに座っていた。佐戸川がそれに答えた。
そして、彼女は狭い格納庫で身体を伸ばした。
「さて、昇くん?ここは、本当にフランスだと思う?」
佐戸川が身体を伸ばし終わると、昇に声をかけた。
「…フランスなんじゃないんですか?」
「ええ、確かに飛行時間だとそれくらいになるかもしれないわね。」
それなら、問題はないと思った。
途中で、何度か給油のために着陸し、その度に他の何らかの施設や兵舎には入ったりした。
しかし、その多くはフランス軍の兵士により守られていてその基地がどのくらいのものかもわからなかった。
「けれど、本当にそうかしら?確かに飛行時間を合算するそのくらいの時間にはなったの。
けれど、実際に公表されている自衛隊機の情報は悪く言えば過少、または過大に示されていることが多いの。つまり、本当のところ私達はどこに移動したのかさえわからない。
知っているのはパイロットだけなのだけれど彼らも何処を飛んでいるのかわからないと思うの。」
「…そうなんですか。」
「ええ、あくまでも航続距離。他には、方位だけわかっていれば彼らは目的地に辿り着くことができる。そして、何よりまず、私達が乗っているこの航空機は航続距離が比較的短い輸送機なの。そのため、空中給油とかするはずなのだけれどその代わりに基地に降りて給油をしている。だから、移動時間が掛かったってことだと思うの。他の飛行会社でも大体12時間あればフランスには着くから…そう考えると明らかに変な事になっているわね。」
佐戸川の言う事には一理あるとは思ったが、昇には信憑性の無い話だと思った。
まず、第一に昇は自衛隊そして、保有する兵器についてもほとんど知識もなく、ましてや、航空機での長距離移動の体験も無かった。
そのために、佐戸川の言う話を昇は信じてはいなかった。
「ええっと、その…つまり、本当のフランスには辿り着いていないってことですよね?」
「そう…私は、そう考えているわ。」
佐戸川がそう言い終わると格納庫の扉が開かれた。
昇は、ベルトを外し荷物を膝の上に置き、扉の外を見た。
長い時間、薄暗い所にいたため、外はまぶしかった。
佐戸川はそんなことはなく、ただ前に続いて昇の前を歩いた。
他に乗り合わせた人とは違い、疲れた様子もなく外に出て行った。
昇は、ただ彼女についていくだけだった。
まるで、姉を追いかける弟のように彼は佐戸川紀里を追った。
「「…はい、わかりました、問題はありません。特に不審な動きも見せていません。…そうですか、ではこちらも行動を開始します。」」
「ようこそ、いらっしゃい。入間基地の皆様。それと民間人の方々も。」
基地に到着してから三時間後、ボディーチェックを終えて、昇は会議室に案内された。
今回は、今までとは違い大型のカメラを持っている人は居なかった。
皆、取り上げられてしまった。
そして、田中達も居なかった。
「それでは、皆様にはこれからの行動についてご説明させていただきます。そして、あなた方に伝えなければならないこともります。
そして、あなた方にお会いしたいという方々も今日、この場所にいらしています。
…それでは。」
「どうも初めまして。…そうですよね?」
そう、男は言った。
長身で大柄で武骨で…いかにも兵士然とした日本人だった。
そして、彼が着ている服は日本軍の服装と酷似していた。
「さて、私のことは山本とお呼びください。あなた方と同じ様な目に会った人間です。」
そう、彼は言った。
「それでは、何が起きたのかを話します。まず、最初にこの世界は私たちが居た世界とは根本的に違ってはいますが、そこまで大袈裟なものではありません。死者が呼び出される…そのはずだと私は、考えていました。その証拠に私は、既に死んでいます。確かにあり得ないとは思いますが、私は一度死んでいて、この世界で活動しています。安心してください、あなた方は生きています。しかし、生きているというよりは幽体離脱、精神のみの状態…何というか言葉としてわかりませんね。第一、そんな言葉は存在していなかったものですから。何故そう言えるのかと言うと、かれこれ65年近く歳を取ることもなくこの身体で生きていますから。…おそらく、あなた方も体験することになるでしょう。前置きはこの辺にして、本当のことを話します。私達は、他の世界から道具を手に入れることにより、国家の文明レベルを上げて行きました。それに際し、今回はあなた方を転移させてしまいました。…転移装置の事故によるものです。はっきりっと、申し上げますとあなた方は…この世界から元の世界へは帰れません。」
「おい、さっきからこの世界とか、あの世界とか何を言っているんだ?」
「何で、帰れないんだ?」
「事故ってなんだよ、事故って?」
「転移装置とか、そんな馬鹿げたことを…。」
「死人とか死んだとか、何のことだかさっぱりだ!」
これまでに、何度も聞いた声がした。
それもいつもと…いや、ここ最近の声だ。
「百閒は一見にしかず…ですね。」
山本は、彼らの言葉に答えず、他の男を呼んだ。
「…ええ、みなさま、お疲れのようですので今日は、一度ここで終了とさせていただきます。
部屋までは、あちらにいる兵士が案内するのでついて言ってください。
…それでは、また明日。」




