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四角錐の下のオアシスにて

用語解説

H&K P11

ドイツ、正確には西ドイツ製の水中拳銃

ソビエト連邦のSPP-1水中拳銃とは形状が異なる、基本的水中用の銃は針のように長い物が使われているが、銛銃とはあんまり関係がない

三国ドイツ支配地域エジプト ギザ空軍基地 LLF管轄区


下に広がる暗闇の中から、誘導灯が自分を超えて地表に向かっていく。

どこまで、下に行くのか…。

そんなことを考えているうちに、空気が冷たくなっていき…。

俺は、ベアトリクスの手の温度をさらに感じていく…。


「…ここか?」


昇降機が止まった場所には、扉があった。

俺の目の前と、背後に2つ。

高速道路の非常駐車帯…というよりは、ターンテーブルのような…そんな円形の空間が広がっていた。


カシャっと、照明の音がした。

暗闇に目が慣れたのか…もしくは、夜間モードに移行していた俺の目はその光をとても明るく感じ、手を繋いでいない腕で目を覆った。


「…。」

「ようこそ、生命解放軍エジプト基地へ。」

「生命に解放あれ!」


腕を下ろし、周りを見るが人はいない。


(生命解放軍…エジプト基地…?)


女性の声だったとは思うが、どこから聞こえて来たのだろうか?

スピーカーではなく、拡声器…いやっ、サイレンが数か所壁についているが、音が違う。


そして、目の前の扉が横にスライドしていき…これまた通路が続いていた。

時間の感覚が狂いそうな闇の中に、それは宝物の部屋のような柔らかい明るさで満ちていた。

停電時に光る誘導灯は、その光をただ受けているだけであり、完全に人工物である。

まあ、人工じゃない通路はどんなものだろうか…。


俺は、ベアトリクスから手を離し、服を整えた。


「入ってもいいのかな?」

「入りましょう…。」

「…クレオパトラか。」

「ふふっ、どうでしょうか…ローマ人さん。」


少し皮肉を込めてベアトリクスは俺に言った。


そして、通路を進むとエレベーターフロアのような部屋に出て、そこからはベアトリクスに付いて行った。

監視カメラがあり、ブレッチア・ペルニチェ…ビルの壁なんかに使わる赤い大理石が四方八方に使われていた。


よほど大規模な施設なのか、階段も数があり、上にも下にも続いているようだった。

目につくだけで、サッカーグラウンド4つ分くらいはあるような気がする。

いやっ、確実にそれ以上だろう…。

ここより下に、何があるのかはわからないが…。


そんなこんなで、しばらく歩いているとベアトリクスは唐突に立ち止まった。

そこには、大きな扉があった。


察しが良かろうが悪かろうが…ここには、大きな部屋があってネロやロンギヌスのような人物がここに居るのだろう…大きなホール状の建物と一緒に…。


ベアトリクスは、トントンと軽く扉を叩いた。

空港の格納庫の扉というよりは、核シェルターレベル…おそらく鉛製の扉がゆっくりとスライドして中から、光が零れて来る。

それは、白色灯の光というよりかは、人工太陽…陽の光と似た性質のものだった。

さしづめ、そこまでは驚きはしなかった…が、俺は驚いてしまった。


「…プール?」


ヤシの木、いくつかのプール、何故か置いてある浮き輪、真夏並みに光る人口太陽と、天井にはガラス越しに青空が見える。


「初めまして、あなたが昇さんですか?」


(…ああっ、やばい…なんか頭痛がしてきた…。)


「ああ、そうだけど…君は?」

「私は、Malikaマリカ、これからよろしくお願いしますね!」

「えっ、ああ…。」


水に濡れた手と握手をする。

そして、俺は彼女から目をそらした。

というのも、彼女が…水着…だったからである。

そして、ベアトリクスは勿論、不服そうにしている。


黒い髪のショートに、緑色の目、たぶん、Dカップくらいで赤い水着を着ていた。

あんまり、エジプト要素(?)はないのかもしれない…。

それどころか、目の色が緑じゃなければ日本人な気がしなくもない…?


「とりあえず、何か飲み物を貰えるかな?」

「わかりました、プールの水で良ければ飲みますか?」

「…美味しそうだけど、別のがいいかな。」


冗談には冗談で返したが、完全にやばいやつの回答だったので、マリカに引かれてしまった。

ベアトリクスも、眉がピコピコしている。


「あっ、ははは…これは、相当喉が乾いていらっしゃるようなので…ブルーハワイのドリンクをすぐに用意します。泳ぐのは、その後にしましょう。」

「ありがとう…ところで、俺も泳ぐの?」

「はい、そうしましょうよ…せっかく、お二人が来るのを楽しみに待っていたので!」


パラソルの刺さった白いテーブルに、3人等間隔で座り…座ることもなく、270度くらい無駄なスペースが空いていた。


これまた、水着メイドという様相で現れた女性は、H&K P11水中銃を太ももに下げているというおまけ付きで、完全に見た目がカクテルのドリンクを持って来た。

勿論、のどの渇きを潤すという名目上…というか、そもそも量が足りないので追加で、コーラをお願いした。


「いや~、そとは暑いですね。」

「ここも、そう変わらないような気がするけど?」

「28℃ですからね…水着がちょうどいいですよ。」

「持って来てないんだけど…。」

「用意してあります。」

「…さすが、LLF…というか、逆に何が用意していないんだか…。」

「ところで、例の物の用意はできているの?」

「まだです…とりあえず、あと3時間くらいはお待ちください。」

「そう…じゃあ、着替えて来るから…昇さんも!」

「えっ?まだ、コーラが来てない…。」

「いいから、行きますよ!」

「ちょっ、ベアトリクス!水着は!」

「これでしょ!」

「っ、いつの間に!」


そんなわけで、ベアトリクスに引っ張られて、水着に着替えることになった。


「…。」

「…なあ、ベアトリクス?」

「なに?」

「なんか、機嫌悪くない…?」

「いえっ、別に…。これ、水着ですので着替えてください…。」

「ああ、ありがとう…。」

「…って、どこに行くんですか?」

「いやっ、着替えに…。」

「ここで、着替えてください!」

「えっ…いやっ、ベアトリクスの近くじゃ…。」

「いいですから!背中合わせで着替えますよ!後ろを振り向いたら、引っ搔きます!」

「じゃあ、遠くへ…。」

「ダメです!」

「えぇ…。」


いくら岩陰のような場所で、2人だけとはいえ…。

さすがに、ダメなんじゃないのかなとは思う…。

プール、水着か…懐かしいな…ああ、そっか…ローマの温泉だったっけ。


「…なるべく、早く着替えないでくださいね!」

「…わっ、わかりました。」


ドキドキしながら、センチメンタルな気分も抱くという完全に混乱する自体になりながらも、武装解除兼着替えをする。

肝心の水着には…まあ、サポーターが無かったけど…たぶん、大丈夫だとは思いたいけど、たぶん大丈夫なんじゃないけど…期待している俺が居なくもないのがあれなので…温泉とプールはやっぱり違うんじゃないかと思うけど、ようするに俺は男である。


まあ、別に大丈夫かとは思った。


そして、ベアトリクスの着替えの音以外は特に何もなく、普通に着替え終わろうとした時だった。


「ふぅ…。」

「ああ、ベアトリクス…着替え終わった!」


俺は、安心してしまい後ろを振り向いてしまった。

そこには、胸の黒い水着を手で抑えるベアトリクスが居たわけで…。


「…。」

「…!!」

「じゃあ、先に行って頼んだコーラを飲んでくる!」


…そこまでは、特に何事もなく。


いやっ、普通に数秒くらい目と目があった訳なのだが…。



「昇さん?」

「えっ…いやっ、ベアトリクス?」

「後ろを振り向くなと言いましたよね?」

「そうだね…。」


水着を抑えていない左手で普通にビンタされて、そのまま、右手をつかまれ投げられた。


「ん?昇さん、どこから飛び込んだんですか?」

「…ベアトリクスから?」

「?」


シャワーを浴びないままプールに浸かっていた。

その後、やけに嬉しそうなベアトリクスが来たのは言うまでもない。


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