表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/150

不可解な遠回り

用語解説

・28 cm SK L / 40

ドイツの列車砲、小さい砲とも言える。

魔女のダリアが作った。


・源氏日本

95話の新田愛奈の故郷、和歌山県が飛び地になっている。

大日本帝国とは、また別の日本であり南半球に位置する


ドイツ三国 ドイツ領 Westfahlenヴェストファーレン付近


俺は、ベアトリクスが作ってくれたSchwarzwälder Kirschtorteシュヴァルツヴェルダーキルシュトルテを食べた。

このケーキは、黒い森のさくらんぼケーキと言う名前のケーキで、チョコレートケーキに分類されている。

ほんのりと苦みのある変わった味のケーキだが、とても美味しかった。


俺は、そのケーキをほおばっていると…。


「昇さん、はい…あ~ん。」

「あ~ん…美味しいよ、ベアトリクス。」

「それは、何よりです。」


俺は、ミルクと砂糖を入れた紅茶でケーキの苦みを打ち消しながら、ケーキを半ホールごと食べた。

ベアトリクスも、普通にそれくらいのケーキを食べ終えると、紅茶の入ったティーカップに手を伸ばした。


白いテーブルクロスの引かれた円卓でのそうしたひと時なのだが、俺が予想していたよりもそこまでラブラブオーラというか、アタックはされなかった。

さっき、抱きついたせいもあるのだが考えすぎかもしれなかった。


「昇さん、あ~ん。」

「あ~ん…その、ベアトリクス…もうお腹いっぱいで…。」

「うぅ…せっかく、作ったのに…。」

「ああ、それじゃあ…お皿に取り分けて…。」

「ダメです、私が昇さんに食べさせてあげたいんですから!」

「でも、さぁ…。」

「いいんですか?泣きますよ?…私を泣かせた外道として、ドイツ国民の前で、はりつけにされるかもしれません。」


とまあ、こんな感じで俺はかなり恥ずかしい気持ちで彼女から分け与えられたケーキを口にしていた。


「ごちそうさまでした。やっぱり、好きな人とスィーツを食べるのは幸せですね。」

「そうかもね…。」

「むっ?」

「…俺は、なんて幸せなんだろう…こんな可愛い彼女と一緒にケーキを食べれるなんて…。(棒)」

「ふふっ、紅茶のおかわりをどうぞ…それと、お話しがありますので…。」

「ああ、今後はどの戦場?」

「昇さんは、血の気が多い方なんですかね?」

「君らには、負けるかな…。」

「そうですね…それじゃあ、お話ししましょう。具体的な日程は秘密ですが…。」

「そっか…でも、なんで秘密にする必要が?」


俺は、ただそう…気になったので聞いただけなのだがベアトリクスの顔が少し曇った。

何かを知っているのだろうか?


「この世界は、私達だけのものではありませんからね…。」

「LLFや、君ら魔女でもどうにもならない組織があるとは思えないけど…。」

「買い被りですよ、少なくとも敵対勢力は個人を含めるとかなり多く居ます。」

「そういった、相手は?」

「基本的に、殺しています。ほとんどの魔女がそうして治安維持をになっています。」

「そっか…じゃあ、『魔笛』の正体は?」

「魔笛ですか?」

「ああ、曲じゃなくて…なんか、そう言った死神みたいなものかな…実のところ、よくわからない。」

「ふふっ、魔笛の正体はエヴァですよ。」

「…えっ、それじゃ…エヴァが夜な夜な人殺しをしているのか?」

「まあ、そうですね…。わりと、有名ですよ。最も魔笛と言うのは、殺した人の喉に風を通して辺りに響かせているだけですが…。」

「…!」


俺は、身震いがし寒気がしたので紅茶を口に含んだ。

彼女は笑顔で、そう言ったが…冗談ではなく事実であるということだろう。

かなり悪趣味ではあるが…。

魔笛の正体としては、とても衝撃的で面白い話だろう。


「じゃあ、ベアトリクスは殺人をしたことは?」

「いいえ、私達は『犯罪者の駆除を、殺人』とはしていません。なので、そう言ったことはしていません。」

「それじゃあ、駆除は?」

「ありますよ…電気椅子をご存知ですか?」

「名前だけなら…。」

「私は、感電させて駆除することが多いですね。筋肉を硬直させて、窒息死させるのが一番綺麗に殺せますよ。」

「なるほど…それは、人道的だね。」


俺は、そうジョークで返した。


「ええ、それじゃあ…昇さん、今後についてお話ししますね。」

「ああ、よろしく頼む。」


あくまでも、前座という感じでベアトリクスは話を仕切り直した。

俺は、喉に穴の開いた死体と感電して死んだ死体を想像するのを止め、彼女の話に耳を傾ける。


「はい、まず数日後に陸路でエジプトに向かいます。」

「エジプト?」

「はい、我が同盟のエジプト軍の基地に行って、エジプト観光ですね。トルコを経由してシナイ半島を渡って、エジプトに行きます。」

「でも、それだとイタリア経由の方が速くないか?」

「トルコ経由です!」

「…はい。」

「その後は、オーストリアのオペラハウスに行くことになります。」

「オーストラリアか…随分、遠いね。」

「オーストラリアです?」

「オーストラリア?」

「はい、オーストリアはこのドイツの南部にある支配地域で、1000年以上前に我がドイツが支配しました。」

「う~ん、世界地図が無いからわからないけど、かなりの距離を移動することになるんじゃないのか?」

「えぇ、物凄く長い距離です。」

「そうか…。」

「はい、お楽しみください。」

「って、ことはまだ休みってこと?」

「そうですけど、そうじゃありません…まあ、旅のついでですよ。」

「そういうものかな…。」

「はい。」


俺は、彼女からその言葉を聞きティーカップの中に、入っていた紅茶を飲み干した。

それから、三日間は特に彼氏彼女的な…もとい、普通の関係性のまま過ぎて行った、

俺の杞憂だったのかもしれない。

元々、そんなに積極的なタイプではないのかなと思った。


俺は、翌日に旅支度を整え…っと、言っても他の兵士が用意してくれたのだが、Kar98kとMP40は持って行かなくていいという事で、俺の装備はM1911とエンフィールド・リボルバーで、M1911の予備弾倉が2つ、新田にった中尉から貰った脇差も置いておき、あとはナイフだけのこれまでにはないくらいの軽装だった。


「特務中尉?ご気分はどうですか?」

「問題ないよ、コリンナ曹長。」

「はい、では…ベアトリクス様をお呼びして参ります。」

「ああ、わかった…私もすぐ行く。」


俺の階級は、中尉だった。

それまでは、まあ…あのローマ帝国の時は少尉で、この国のドイツ三国特務中尉になってから初の任務ということになるのだが、それでもこの階級以上の権限を与えられているのは確かだった。


コリンナ曹長は、ベアトリクスの部隊の女性隊員で年はおそらく17歳くらいだとは思う。


デュッセルドルフ空港から、Ju 52に乗りチェコにあるルズィニエ国際空港に向かい、その後はブルガリアにあるソフィア空港に向かった。

現在のドイツとソビエトの国境付近をなぞるように進んで行くルートだった。1日目はソフィア中央駅にたどり着き、そして旅のお供である列車砲と共にイスタンブールを渡り、再び南下する。

輸送するのは、28 cm SK L / 40…ブルーノと呼ばれる列車砲で、スエズ運河に配備すると言う、ようするに国内では使用しなくなったため、支配領域に供与しているということだ。

分解されているため、砲は無く車体のみではあるが、それでも忙しそうに兵士達が動いていた。それも、8門も…。


ヴェストファーレンを離れて、4日目

昇とベアトリクスを載せた車両と、輸送している列車砲はシリアのラッカに入った。

俺は、会議室のある車両でドイツ軍の地図を見た。

現在のドイツは、北はファインランド、スウェーデン、ノルウェーと同盟を結び、サンクトペテルブルク、ペトロザボーツクも支配地域に治め、ノヴゴロド、スモレンスク、ウクライナのハリコフ、ヴォルゴグラードのモスクワを包囲するように戦線が引かれており、黒海、地中海も支配地域に治め、イラン、アラビア半島までも支配領域にしていた。

しかし、エジプト以南からボツワナにかけて巨大な白い長方形の太線が描かれており、奇妙だった。

地図には、インド、ネパール、パキスタンはなく、そこから東にあるであろう地域が無かった。

場所的にはブータンと言う国がある位置から南北1直線に大陸が切られており、その右側にはイタリア王国とローマ帝国があった。

その為、ソビエト連邦は北部ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、アフガニスタン、キルギス、タジキスタン、パキスタン、中国の1部の領域から成り立っていた。

その為、ソビエトもドイツも巨大国家であることに間違いないだろう。


「…オーストリア?」


さらに、ドイツより西側にはイギリスとその直下にオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニアが置いてあった。


そして、再び東に戻るとそのロシアより南にとある国々があった。

それこそ、今まで見たかったものだが…この世界ではすでに1つ見ていたものだった。


「日本連島…。」


そこには、日本を彷彿させる日本のピースがあった。

アイヌ連合は、連島の一番西に在り、北海道と青森から関東平野までの北日本からなり、源氏日本はその東で、青森から上越、松本、浜松、和歌山で切った北日本で、その反対側は九州まで平家日本であり、琉球王国は九州と沖縄本島から構成されているという、かなりわけのわからない地図がそこにはあった。


「…まさか、こんなことになっているとは…。」


昇は、地図を見るのを止め、自分の客室のある車両まで戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ