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大物釣りの漁師作戦Ⅴ 使い潰しの釣り餌

4月2日 午前10時

イオリア海 海上 ローマ帝国先遣艦隊


水の魔女アンジェラは、カタルーニャに向かい、侵攻を開始していた。

護衛の艦隊もつけずに、単身で乗り込むつもりだった。


75mm砲と連装水冷式重機関銃を担ぎ、大量の導爆線の束を運び、水を操る彼女は魔女そのものだった。


「水の魔女アンジェラを発見!本艦に高速で接近!」

「近接戦闘用意、砲撃開始!」


近づいてくる、アンジェラに対しローマ艦隊は砲撃を浴びせる。

アンジェラはそれを躱し、または砲弾を水で掴み海面に落下させながら肉薄する。


そして、駆逐艦に導爆線を巻き付け、それを爆発させると壊れた駆逐艦の破片を他の船に目掛けて投げつけながら、ローマ帝国の軍艦を沈めていく。


そして、航空機も同じ様に壊していく…。


(…殺すには惜しいくらいの練度の兵士ですね。殺し甲斐があります。)


大中小口径の弾が飛来する中、魔女として、兵士として、彼女は自分が得意な海上戦闘をこなして行った。


レベッカとは違い、アンジェラは空を飛行することはできないが、水を使い動き回ることができた。


アンジェラは、ローマ帝国南部の海岸を津波で破壊する力を温存させながらローマ帝国艦隊との交戦に臨んだように、艦隊指揮官は認識していた。


艦隊の多くが沈んでいき、生存者など一人もいない状態の船がさらに多くの船を道連れにするようにアンジェラに操られ、衝突し爆破されていく。


船の残骸が増えるほど、アンジェラは負担が増え、ローマ帝国艦隊は仲間が奇跡的に生きているかもしれない船だった鉄の塊に魚雷や砲弾を撃ち込んでいく。


アンジェラは苦戦こそしているようには見えてはいないが、彼女はイタリア王国の為にローマへの血路を開こうとしていた。

ローマ帝国に宣戦布告を行ったイタリア王国であったが、戦争を早期に終着させたいと考えていたからだ。

イタリア王国海軍では、次期主力の空母の建造とパイロットの育成を行い、ドイツ、日本と共に、イギリス、ソビエト、アメリカと戦う必要があった。

イタリア王国の最初に戦う相手は、イギリスでありイギリスは既に空母を保有していた。

イタリア王国もヨークタウン級、グラーフ・ツェッペリン級を日本とドイツから購入し、訓練を行っているもののやはり数が少ない。


そうした中で、イタリア王国最後の戦艦である改ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦…電探を搭載した連動砲戦艦の研究に使用された現艦隊の主力である大和型戦艦をこの戦いに投入した。

改ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の建造に成功したイタリア王国であったが、大和型戦艦の抜けた穴はこの時のイタリア王国には痛手であり、先の海戦で大和型戦艦3隻が帰って来たのは僥倖であった。


「…っあああ!」


直接、物体を触って投げているわけではないが長時間の行動はやはり彼女の身体に響いていた。


軍艦の主砲や魚雷よりも、機銃弾の方が厄介だった。


限界まで下げられた高角砲を向けられ、彼女を殺そうとした。

アンジェラは、持って来た1000㎞の導爆線を使い尽くすように船に…あるいは人に巻き付け爆破させていく。

主砲の砲口に導爆線を突っ込み誘爆させ、燃料にライターで火をつけ海の上に火をつくった。


そして、何より武器を使えば使うほど彼女は良く動けるようになった。


彼女は、やがて歌を歌うようになった。

それは、自分のことを海の怪物であると称したローマ帝国人に対しての皮肉を交えながら綺麗な声で歌い、船乗り達は彼女を歌を最後に命を残し、わずかに生き残った人々は彼女のことをまた怪物であるセイレーンだとその様を見て思うのだった。


その後アンジェラは、水深3500m地点で津波を発生させた。

人工的に津波を起こしている間は無防備なもののレベッカの邪魔はなく、敵もいない為、無事アンジェラは津波を発生させ、それに乗りエトナ山山頂を目指した。




ローマ帝国 エトナ山 山頂陣地 司令部


のぼるは、モニターから次々と光点が消えるのを見送った。

そして、アンジェラが起こしたと思われる津波が街を遅い終えると、陸上にあった光点は海の方へと移動して行った。


列車砲、沿岸砲、火砲による砲声が遠くから聞こえた…アレッシアのもう近くに、アンジェラがいるのだろう…。


そうした攻撃をものともせずに、的確にアンジェラは味方の光点を消していった。


アンジェラは、午後4時53分頃ににローマ帝国カタル―ニアへと上陸した。

俺は、モニターを消すように護衛の機械に言い…そこから先は見なかった。

変わりに、砲声や機関銃の音が聞こえて来るからだ…。


「喰らぇ!」


アンジェラは、75mm砲を捨て、その場で鹵獲した47mm砲に持ち替え機関銃を連射した。

海上とは違い、水が得られない陸上で戦闘を始めたアンジェラは海からコードのように水を得ていたがそれに気づかれ寸断されてしまった。


この日の天気は快晴であり湿度も高くなかった…。

だが、100億リットル超の水分を得ていたアンジェラには少しの間は平気だった。

その為、アンジェラは兵士や人々、植物から水分を補給し、怪獣のように暴れ続けていた。


アンジェラの水は、砲弾の威力を抑え、爆弾の場合は高速度で水を投げつけ爆破による被害を抑えるために分離したりしていた。

その為、陸上では攻撃を受けるたびに水を失って行くため、ローマ帝国戦車C.V.38、M11/39、Cruiser Mk.II、R35、BT-5、Mark IV、Char de rupture Saint Chamond及びその他の搭乗員は人、機械関係なく車両に乗ったまま振り回され地面に叩きつけられたり、味方がアンジェラに放った砲弾を喰らい盾として使われ死んでいった。


「撃ちまくれ!引くな!」


アレッシアは、山の斜面で攻撃を指示していた。

距離などを気にせず、だいぶ小さくはなったアンジェラに向けて銃弾を浴びせ続けていた。


「…くっ、敵の主砲を狙え!あれだけも潰せ!」


アレッシアの近くにアンジェラの放った砲弾が着弾した。

一時はハリネズミのようだった砲も外れていき、残り1門だけだった…。


「焼夷弾、手榴弾も構わず投げて!…っ!」


アレッシアの身体に重い物がのしかかった…。

足が潰れるような感覚…ではなく、足が潰れていた。

味方の戦車の車体がアレッシアの腰の上に乗っていた…。


これくらいなら、まだ治ると思い拳銃で近くに来たアンジェラの顔に向けて撃ったが…それに、気づいたアンジェラは壊れた戦車の破片でそれを防ぎ銃弾は音を立てて弾かれていった。


アンジェラは、アレッシアに対して機銃を線を引くようになぞり銃弾がアレッシアの身体を貫いた…。


アレッシアは、セイレーンと呼ばれた魔女の瞳を見ていた。


とっても…綺麗だった。


自分と同じ様な年頃の女性だった…。


「…。」


レベッカ様の為に死ねるのはいいと思った、ただ寂しかった…。

既に、兄も両親もこの世界には居なかった…。

レオニダの死ぬ間際にお父さんとお母さんが死ぬでいたことが教えられた。

レオニダは、昇によろしくと言い、その後音が消えた…。

自分の死期を感じたのか、命令を破って、無線で連絡してきた。


今は、それがものすごく嬉しかった…。


だって、この世界で家族を探し回ることなくまた会えるからだ…。


「イレーネ?」

「…アレッシア。」

「あなたなのね…あなたも兄さんに似ておせっかいですね…。」

「ごめんなさい…。」

「私は…もう助からないのでしょう?」

「はい。」

「レベッカ様の命令を果たしなさい…。」

「…はい、アレッシア様。」

「えぇ…ふっ、はぁ…レベッカ様のお役に立てたからこうして、最後に話せるのね…。」

「…。」

「そう…何も言わなくていい…私がこうなったのは…いえっ、レベッカ様とネロ皇帝陛下は全てを知っていたから…私にあなたを授けてくださったのね…。」

「アレッシア様…。」

「イレーネ、あなたとの暮らしはとても楽しいものでした。」

「私もそうでした…アレッシア様…。」

「…結局、昇から貰った葉巻も酒も飲めなかった…。」

「そうですね…アレッシア様…。」

「…でも、それで良かったって…飲んでいたらもう少し楽だったのに…。」

「…。」

「先に行ってるわ…家族みんな…あなた達も居るあの家で…。」

「ええ、…待っていてください…アレッシア様?」


イレーネは、アレッシアが死んでいるとわかっていながら身体を揺らした。

そんなことは正しい医療行為でもないのに…。

アレッシアが死んだことにより、部隊の権限は上位に移譲される…。

だが、彼女の部隊の兵士はとうに居なかった…。

イレーネは、繋いでいたロボットにアンジェラへの自爆攻撃を命令し、ネットワークを切断した。


彼女の頬に涙が伝い、嗚咽が漏れた…。

けれど、まだ命令は残っていた。

エトナ山の火口付近で彼女は息を潜めていた。

その時が来ることを…。


攻撃を受け続けたアンジェラはローマ帝国兵により疲弊していった、アンジェラの末端の水が濁っていき…高射砲、連装機銃の砲弾を喰らいながら…アンジェラはついに、エトナ山の火口へと入り、そこで砲撃が終わった。

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