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大物釣りの漁師作戦Ⅲ 最後くらいは仲良く…。

4月2日 午前7時


ローマ帝国 エトナ山 山頂陣地 司令部


当たり前のことだが、物凄く眠い。

会議は、5分ほど遅れていて、その間余計にウィスキーを口にしてしまい、チビチビ飲むのもあれなので、豪快に一気飲みしてカールに氷を入れ、ウィスキーを注がせた。

会議室は、簡素なものでこの会議の後司令部は移動し、俺はこのエトナ山の火口で、アンジェラを待ち構える。


IlarioイラーリオFontanaフォンターナ陸軍元帥以下、このエトナ山の部隊の指揮官が、この会議室に居た。


そして…会議が始まった。


「この作戦の総指揮官のイラーリオ・ファンターナだ。

ここに居る指揮官の多くは、ローマでも会っただろう…。

『大物釣りの漁師』作戦を、決行する。

…以上だ。

…そう言いたいところだろうが、改めて最終確認をしよう。」


そして、空中ディスプレイが投影され色付けされた地図が浮かび上がった。

例によって、自分たちが赤色の光点、アンジェラ達イタリア王国軍が青い光点だ。


地図の位置は、このエトナ山があるシチリア島、そして、ローマ、全滅したギリシャや沿岸地域には光点が確認出来なかった。


「東の我が軍からの援軍は来ることはない、そして、北東の海軍基地は全滅普及する見込みも今のところ絶望的である。

そして、何よりジブラルタル海峡からの北南列島からの援軍は厳しく、限定的な航空支援と沿岸砲からの砲撃が精一杯だ。

我が軍の戦力は、ローマ帝国第6山岳師団ならびに第6山岳砲兵師団をはじめに、第7から第10歩兵砲兵師団、第2方面陸海空軍全軍、予備役兵士、そして…このシチリア島全域から徴用した非人型機械郡を含めおよそ150万人以上、うちシチリア島陸軍全戦力、他現地での協力者を含めるものとし、推定255万人の動員兵力であると推定している。

なお、避難民の多くをローマ帝国本島、サルデーニャ島、チェニス港へ移送しているが、完全な避難は不可能だ。

最前線となる、Cataniaカターニアからの住民の避難を現時刻から開始、ならびに市内への砲の運搬を開始せよ。」

「はっ!」

「では、大物釣りの漁師作戦の詳細を…。」

「はっ!

現在、我がローマ帝国内陸艦隊の一方はなく、当面の予測時間での会敵や軍事行動に変化がないとした場合、このエトナ山山頂への到達時間は本日の午後5時5分前後と予測されています。

レベッカ様によると、セイレーンも疲弊しているとされ、これまでのような大規模な津波攻撃は起こせないもののカターニア及びシチリア島東海岸、ならびにローマ帝国本島南東部に津波攻撃をすることが可能と述べられています。

このセイレーン、水の魔女アンジェラに対抗する為に我が軍は火力を浴びせ、そして、このエトナ山頂上で長篠様がアンジェラを討つという手はずになっています。

また、予備作戦として長篠様の…敗北…失敗後は再び砲撃をアンジェラが沈黙するまで行います。」

「ああ、ありがとう…以上だ。」


会議室は、張りつめた空気が解けることはなく、俺の葉巻の紫煙と煙草の紫煙がその場にとどまっていた。


「…フォンターナ元帥、納得できません。」

「なっ、大佐!貴様!この場で、何を!」

「そこに居る男が長篠様というものなのですか、元帥!その男はローマで少尉の階級章を付けていました!そいつは、一体何者なんですか!」

「言葉が過ぎるぞ!」

「フォンターナ元帥、お答えください!」


どうやら、俺の階級章について知っている…というより、覚えていた陸軍の大佐がこの場に居た。

少なくとも、あと数人はそのことに気が付いているが、黙っているのだろう。


俺は、無言で葉巻を口に当て、元帥は彼の問いに答える。


「彼は、皇帝陛下と同じ者だ。彼が少尉の階級章をしていたのは全てこの作戦の秘匿の為であり、それ以前も彼はこのローマ帝国で兵士として勤めていた。」

「だから、どうと言うのですか!この者がアンジェラに勝つと言うのですか!」

「…大佐!黙り給え!元帥殿、彼は怖がっているだけなのでどうか…。」

「少将、あなただって、おかしいと思いはしませんか?

私は、レベッカ様やネロ皇帝陛下を信じていますが、そこの男はなぜこれまで姿を現さなかったのですか!

部下の命を預け、この作戦に多くの兵を動員し、この男の為だけに我々に死ねと言うのですか、フォンターナ元帥!」

「…。」

「もう、やめろ!おいっ、誰か来てくれ!」


さすがに、このまま偉そうにしていると内部分裂してしまうのではないかという気がしてきた。

最悪なことに…いやっ、イラーリオ元帥の予想通りというか…彼らの俺に対する信用率は0だった。


陸軍元帥の為、国の為、兵の為と…色々な理由付けはできるが、助け舟というか演技をしなくてはならない時が来た。


「その必要はない。」


俺は、グラスを置き、そう言った。

内心、ものすごく恥ずかしい…。


「大佐、あんたの言う事は間違っていない。…だから、無理に信用しろとは言わない。ダメなら、他の兵士に君の部隊の指揮を任せる。」


大げさに長めに葉巻を吸込み、見せつけるように煙を吐く。

口の中に、煙をためて吸っているふりという、いつものやつだ。


「どういう意味だ!」

「私を信じなくていいから、イラーリオの命だけは守れと言っている。」

「…!」


彼は、俺が陸軍元帥を呼び捨てにしたので驚いていた。

なので、そこに畳み掛けるように言葉を続ける。


「私は、この国に危機が訪れた時…つまり、今この時の為に私は姿を表している。

レベッカとは知り合いで、ネロとも話している。

そして、水の魔女アンジェラを討ちとる為だけにここに来ている。

これだけは言っておくが、君ではアンジェラに勝てない…大佐。

君が、あの人形をどんなに上手く使えようが、どうでもいい…俺は、彼女を道連れにしてでも彼女をここで止める。

元から、生きて帰るつもりなどない…。

君が見た、ローマでの私は特務少尉だった。

その特務とは、レベッカから命じられた特別な任務だ。

そして、とても名誉なことだ。

…他に、何か言いたいことはあるか、大佐?」

「…。」


俺は、再びウィスキーを口にすると大佐は悔しそうに席に着いた。

ウィスキーは、アルコールがどっか行ったのか水だった。


そして、くぎを刺すように…。


「今回の作戦、君らがやるべきなのはアンジェラを疲弊させることだ。

この作戦では、どれだけ確実にアンジェラを殺す、もしくはレベッカが彼女を殺すことができる確率を高める作戦だ。

彼女は、魔女であるが殺せないことはない。

ムガル帝国の魔女は死んだ、だから、私はアンジェラを殺す。

魔女は、殺せないものではない、殺せる…。

私は、それを証明するだけだ…。

君達、兵士にも家族や友人、この国があるだろう…。

だが、降伏した時にこのローマ帝国はこの世界から消えているかもしれない。

君らは、決死部隊ではない…だが、私は違う。

信用しなくてはいい、ただ仕事をしろ…。

以上だ。」

「…フォンターナ元帥。」

「大佐…私は、本気だ。そして、彼もまた本気なのだ…。会議は、これにて終了とする。総員、任務に当たれ…神のご加護を…ローマ帝国、万歳!」

「ローマ帝国、万歳!」


こうして、少し足早に会議が終わった。

俺は、会議室でウィスキーを飲みながら他の兵士達が出て行くのを待った。

先ほどの大佐も出て行き、俺とイラーリオ元帥のみ居る中、やって来たアレッシアを会議室に招いた。


「イラーリオ元帥閣下、ローマ帝国陸軍アレッシア・マリーノ特務大佐です。」

「ええ、待っていました。…ありがとう、少尉。さっきの演説はご立派でしたよ。」

「元帥殿…先ほどは、失礼いたしました。どうか、ご許しください…。」

「いえっ、これでいいんです…。では、私はレオンフォルテの司令部に向かいます…。

さようなら…長篠少尉。

もう…会うことはないでしょう…。」

「はい、そのつもりです…。後は、頼みます…。」


そう言い、イラーリオ元帥は部屋を出て行った。


「まさか、アレッシアが大佐だとは…。」

「近衛にとって階級は飾りよ。…この権限はレベッカ様とネロ皇帝陛下のご威光だもの。」

「そうか…。」

「ああ!また、お酒なんか飲んで!」

「…仕方なかったんだよ!」

「何が!」

「酒と葉巻で、未成年薄めて会議の場で堂々と葉巻を吸って酒を飲む人物観を…。」

「もっと、他の方法あるでしょ…まったく…。はいっ、これ…。」

「…医療葉巻じゃん。」

「禁煙禁酒、女遊びをしない!まったく…最後まであなたは守れなかったわね。」

「悪かったって…。それに、最後とか言わなくても…。」

「あなたは、死ぬんでしょ…。別に、驚きはしていません。レベッカ様がそう決めたのだから…。」

「…君は、幸せになれよ。」

「そんなんじゃ、死んだ女は口説けませんよ。…私は、Ireneイレーネと一緒に東側の斜面に行くから…もう行かないと…。身体は、大切にね。」

「…そっちこそ、ああ…そうだ。カール、そこのワインを取ってくれ…ありがとう、カール。

アレッシア、このワインと最後の1本だけだけど葉巻を持って行ってくれ…。

イラーリオ元帥からの貰い物だけど、もう要らないから…。」

「そう…ありがたく頂戴します。…長篠様。」

「アレッシアらしくないな…じゃあ、もう行ってくれ…君に俺が死ぬ姿は見せたくないから…。」

「そう…そうね、カール…この馬鹿者をよろしくお願いいたしますね。さようなら、昇。」


アレッシアは、そう言い残し部屋を後にした。

東側の斜面…そこは、ここよりも先に戦闘が起こる最前線だった。

そのことを俺は忘れ、アレッシアが無事であることだけを祈り、大丈夫だと…本当に思っていた。

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