羅伊戦争Ⅴ 蛇殺しのエメラルド
用語解説
・M2重機関銃
アメリカが長年に渡り、使用している有名兵器
・M1919
M2と同じくジョン・ブローニングにより開発された水冷式機関銃M1917の軽量版
口径は、7.62mmとM2よりも小さい
ローマ帝国 ローマ
3月11日
ネロと共に格納庫の中に入ると100体程の人型のロボットが居た。
外観的には、そうは見えないが俺の目はロボットであると表示されていた。
身長は190cmよりも少し大きいくらいだろうか。
そんな屈強そうな身体のロボットと10体の機械狼が格納庫の一端に置かれていた。
大きく2組に分かれており、人型50体と狼型5体であった。
「これが、僕の部隊ですか?」
「ああ、そうだ…それぞれが各自で判断するので君は大まかな指示を出せばいい。兵力は、2分隊で人型が100体、狼型が10体の他に君を護衛する人型が2体と狼が1体用意されている。武器は私の方で選んでおいた。A部隊が機関銃の運用、B分隊が迫撃砲の運用になっている。」
「指示はどうだせば良いんですか?」
「ただ名前を呼ぶだけでいい…名前は好きなように決めておくといい。」
「わかりました。」
「私が君に送る兵士達だ、特務少尉…いや、百人隊長としての務めを期待している。」
「はい、任せてください。」
「…そうだ。忘れるところだった…これを…。」
ネロは、そう言うとどこからか長方形の紙の箱を取り出し、俺に渡した。
俺は、その箱を開け中を取り出すとそこには2つの袋があり、その一つを取り出すと拳銃の弾丸があった。
「弾丸ですか?」
「…拳銃弾だ。ただ、かなり特殊でね。オリハルコン製の弾だ。」
「…アンジェラ用の弾ってことですか?」
「勿論、そうだ。君の拳銃の1弾倉分ずつ13発だけだ。」
「…。」
「おっと、今…少ないと思っただろ?」
「はい…。」
「まあ、それは当然だ。君を信用してはいないがもしものことを考えた上でギリギリのラインだからだ。」
「信用されていないって、ことですよね?」
「…カチューシャの入れ知恵だ。」
「カチューシャらしいですね…わかりました。」
「その代わり、弾薬はいくらでも持って行ってくれて構わない。あそこに居る、君の護衛の兵士にありったけの弾薬を積むといい。」
「あの盾を持っている兵士ですか?」
「ああ、そうだ…弾薬についてだが、1つ覚えておいてほしいことがある。」
「なんですか?」
「基本的に君の時代の銃火器の弾薬は被甲…つまり、鉛でメッキされているものが多い。その方が威力が高くなり、貫通力が増すからだ。しかし、君のやる対魔女戦闘ではそう言った鉛で覆われた銃弾よりもオリハルコン単体の銃弾方が効果が増すことになっている。…簡単に言えばドラキュラを倒すのに銀の銃弾を使うようにね。」
「普通の銃弾でも効果はあるとは思いますが…。」
「魔女にもよるがある程は効果があるのは確かだ。だが、基本的には効果がない。そうそう…レベッカから私達が石になることは聞いているかい?」
「…何か言っていた気はします。」
「改めて言うと、私達はオリハルコンの金属に急所を攻撃されると3kg程の石の結晶に還ることになる。この3kgというのは胎児の重さと同等で、オリハルコンの作用としては生命の認知、意識なき頃に還るためだと考えている。そうなってしまった場合、エネルギーを持つ石になってしまう。その際、今…君と話しているように人格を失い、そのまま眠りについてしまうことになる。」
「それじゃあ、僕もそうなるんですか?」
「その可能性は否めない。だから、取り扱いには十分注意してくれ…まあ、自分で扱う分にはあまり問題はないからね。」
「…それも、そうですね。」
「とまあ、先ほどから話し込んでしまってはいるが…まったく、何をやっているんだろう私は…それじゃあ、君に送ったあの娘たちを連れてくるからここで待っててくれ…。歳を取るとぼやきが増えるものだな…。少し待っていてくれ…。」
ネロは、そう言い残し俺は格納庫に残った。
自分の護衛のロボットの近くに寄った俺はまじまじと観察した俺は、彼にボブと名付け、もう一人にカールと名付けた。
名付けた理由は、何かそんな感じがしたからだ。
彼らの武器は鋼板で出来たバリスティックシールドと、俺と同じ短機関銃のModello 1938Aだったので、2人と狼には大量に1938Aの弾倉をネロさんに言われた通りに運んでもらう事にした。
A分隊の装備は、あの有名なブローニングM2重機関銃と、M1919重機関銃で、M2が4挺とM1919が12挺だった。
M1919は、ストックとして使う可動式の2脚と銃床が追加され、通常の兵士と違い水や食料を必要としないため金属ベルトで給弾を行っている為、大きな弾薬箱を背負い弾薬箱と給弾ポートをゴムのチューブで繋いだ浪漫仕様になっていた。
B分隊の装備は81mm迫撃砲で、計10門となっていた。
機関銃と迫撃砲の兵士の装備は、ライフルとサブマシンガンの混成になっている。
俺は、A分隊の分隊長のカールにサングラスを掛けるようにいい、B分隊の分隊長のボブに赤いバンダナをつけるように言うと、それぞれ格納庫の外に出て行った。
まあ、多分なんとかなるだろう。
そんなわけで、予備の、Carcano Mod. 1938(ライフル)を確認し、ネロを待つことになったが急に格納庫の明かりが消え、周りが見えなくなる位に暗くなった。
どうやらライフルはまだ手にあり、向きを右に3歩進みライフルを振ったが感触がなかった。
そして、ライフルを振りながら歩いたがやはり近くに立っていた機械兵には当たらなかった。
命令は出していないので、行動を起こすはずはないのだが…。
何より、こういった光景はDolmaarに会う時と同じ感じのようだが、彼女とは少し異なるような気がした。
そして、その闇の中から赤いローブの女性(?)が現れた。
「…銃を下ろしなさい。」
そう俺に話しかけてきた。
俺は、無言で彼女に銃を向けた。
「私は敵ではありませんよ。」
「それじゃあ、何者ですか?」
「Julia Agrippina、ネロの母です。」
そう彼女は、言った。
なぜか、目の機能は働いておらずどういうわけか赤く見えるローブの女性が見えているばかりだった。
俺は、信用はしてはいないがとりあえず銃を向けるのは辞めた。
「なぜ、こんなところに?」
俺は、当然の質問を彼女に投げかけた。
「長篠昇少尉…私は、あなたにこのエメラルドのブローチを渡すためにあなたをこの空間に呼びました。用はそれだけです。」
名前を知っているということは、ジャンヌ達と同じ他の世界の人々、もとい故人であり、ネロの母親であるということは充分あり得ると思った。
だが、やはり疑ってしまうのが仕方ないことだと思う。
何しろ、初対面なわけだしこれも魔術の可能性もあるからだ。
「…ありがたいとは思いますが、受け取るわけには。」
「信用できないとは思いますが、どうかお受け取り下さい。」
「…わかりました。」
そう彼女は、緑色の宝石が付いたブローチを取り出し、右手を差し伸べた俺の上にそれを置いた。
「…これは?」
「蛇殺しのエメラルドです。」
「なぜ、これを?」
「古い話ではありますが、それはこの世界の前の人類史での重要なアイテムです。そして、これを今日渡すことになったのはあなたが自分の世界に戻るためのチェックポイントに到達したという意味です。」
「…元の世界に還れる日が近くなったというとことですか?」
「そうですね、そういうことではありますが違います。」
「まだ、先が長いと?」
「ええ、舞台と同じで今は幕が閉じている時間であり、物語はまだ続くということです。」
そう彼女は、言った。
どうやらまだ元の世界には還れないことがわかったが、それを伝えられた上でこんな石ころ1つ渡されたところで何になるのかと問いただしたくなってきた。
彼女も俺が少しイラついたことを多少感じとったのか少し黙っていた。
「…わかりました。石は貰います。」
「ええ…確かにお渡ししました。ネロにはこのことを黙っていてください。」
「なぜですか?…ネロさんにこのことは話してあるんじゃないですか?」
「はい、確かに話してはあります。ですが、ご内密に…。」
そう言い残し、俺は格納庫の中に戻された。
少し頭が痛いがエメラルドのブローチは手の中にあった。
「…。」
俺は、恐る恐る右のズボンのポケットにそれを入れた。




