新スキルの覚醒と邪神にスカウトされた件。
「王様!魔王軍が襲撃してきました!」
「なんじゃと!?召喚を勘付かれたか!?」
「ええ、その線が高いようです。」
「勇者殿!今から戦えるかね?!」
「え、えっと、片手剣と、投げナイフなら使えます」
「だそうだ!投げナイフと剣を用意しろ!」
そしてすぐに兵士がやってきて、真新しい剣と、10本ほどの投擲ナイフを持ってきた。
「剣帯はカバンに入ってるよな…よし、ナイフも入った。剣もつけて…できた。じゃあ、行ってきますね」
言い忘れていたが、うちの家系は代々武門の家系で、幼少期から武術を教えられていた。
高遠流と呼ばれる日本では負け無しと言われたーーまぁ、個人の力量差もあるがーー流派がある。
俺は幼少期から鍛えられてきた事もあってか、一昨年、親父から免許皆伝された。
それと、剣帯を持っている理由は、高遠家は昔から、何処かの護衛などに良く付いていた事がある。今も変わらず、重鎮の護衛を一般人に紛れてする事がある。
剣帯は、免許皆伝された時に、親父から銃弾でも傷付かない素材でできた剣帯だと言われて貰った。
ちなみに、腰に巻くベルトの下に、太ももに巻き付けるような形でレッグホルダーが伸びている。
剣帯とレッグホルダーは着脱可能だ。
レッグホルダーには銃のホルダーもついている
まぁ、そんな事もあり、カバンにはいつも剣帯だけは入れていた。
免許皆伝とはいえ、メンタルはあまり強く無い。むしろ武人としては弱いくらい。一般人としては強いくらいだ。
魔族やら魔王やら、得体の知れない相手と戦うのは気がひける。
俺だって怖い時だってある。
得体の知れない物は誰だって怖いのだ。
そう思っているうちに、爆発音がしたところに着いた。
そこは、城壁だったが、それ自体機能していないようだった。
「爆薬?それは…考えられない。火薬の匂いがしない。魔法か…?それなら…俺のスキルには何がある?夢幻回廊、愚者の夜会、調停者…スキルの効果が分からない…」
スキルの中で何か魔法が無いか思い出すが、判断が難しい名前ばかりだ。
効果が知りたいと、自分の能力なのになぜわからないともどかしさを感じながら考える。すると
『スキル、調停者は第三者の戦闘を強制終了させる事ができます。また、対象のレベルが術者より低かった場合、レベル差に比例して少しの間操る事ができます』
「誰だ!?」
急に聞こえた声。
どこからともなく。
頭に響くような声だ。
『初めまして。マスター。私はサポートスキルの《叡智》と申します。名称を変更する事も出来ますが、いかがなさいますか?』
正体は自分のスキル、それも隠しスキルのようだ。
名前も安直だな…まぁ、今は良いか。
「いや、そのままで良い。」
『マスター。私との意思疎通は念話、心の中で念じるだけでも可能です。』
わかった。ところで、魔族相手には調停者スキルが良いのか?
『魔族は全体的にステータスが高いです。魔王軍には、マスターの数倍以上のステータスを持つ魔族もいるでしょう。要するに、接近、遠距離戦共に人間には不利です。
そこで、第三者の戦闘を強制終了させる調停者スキルです』
へぇ、叡智はマスターである俺のスキルは使えるのか?
『ええ、使えます。』
そうか、ならいい
『?』
叡智の名前の割には気付かない事もあるようだ。
聞きたい事も聞いたので兵士の近くに行くか。
少し歩けば、ギィン、ギィンと、金属同士が当たる音がする。
音の大きさから考えると、角を曲がってすぐそこのようだ。
「勇者だ!助けに来たぞ!」
魔族の気を惹くために勇者という単語を使う
「へっ、勇者か…ん?屈強な戦士が来ると思ったらただのひょろっちいガキじゃねぇか」
相手がガキと油断しているのは良いことだ。
油断すれば、それだけ隙が生まれる。
だが、事情を知らない味方側がいれば別だ
「ダメだ!ここは子供が来て良い場所じゃない!逃げろ!」
こうなる事がよくある。
『マスター、相手にステータスを見せる事が可能です。見せてはどうでしょう』
「いや大丈夫だ。なんならステータスを見せようか?」
叡智に教えられた通りに、ステータスを表示する。
すると兵士の態度は一変した
「これは勇者様!ご無礼をお許しください!」
「いや、それよりも目の前の魔族だろう?早く行け」
「は、はい!」
魔族は律儀にも待っていたようだ。
自称勇者の実力を見たかったのかもしれない。
「ヒヒッ、行くぞォ、勇者ァ」
少し不気味な喋り方をする魔族
「ああ、いつでも来い」
高遠流は、暗殺、一騎討ち、集団戦、なんでもござれだ。
剣術は変幻自在だし、体術を織り交ぜることによって相手を惑わすことも可能だ。
要するに
「消えたッ!?」
縮地だって可能だ。
地球だとモドキしかできなかったが、緩急のつけ方やステータスという概念によって上手くできたようだ。
「よっと」
気の抜けた掛け声と共に振り下ろされる剣。
しかし、掛け声とは裏腹にそれには確かに重みがあった。
「グァっ!?」
皮膚は傷つかなかったが、後ろから脊髄を|斬りつけられ(殴られて)、麻痺したようだ。
『マスター、魔族はステータスとは別に、種族特性で皮膚が比較的硬いです。』
叡智の警告を聞きつつ、それに気をつけながら、上段斬りをする。
「ガァッ!」
今のは十分に効いたようだ。
「調子に乗るな!人間!」
魔族は、大声を出しながら俺を斬りつけてくる。
もちろん爪でだ。
それをバックステップで避ける。
牽制代わりの投げナイフを投げてから、体勢を整える。
「ん〜、魔族、思ったより強いなぁ」
『マスター、剣に魔力を流せば斬撃が強化されます』
叡智はなんかゲームのチュートリアルみたいだな、一度に教えてくれても良いのに
『技は一度づつ試した方が良いのです。そうすれば他の打開策も自ずと見えてくるでしょう?』
そういう意図があったようだ
「魔力を流す...そうだな、魔力…内に秘めた力か、血液か...剣に流す...出来た!」
魔力を流すことに成功した俺は、それを維持したまま斬り付ける。
「ガハッ、グゥ…」
首を刎ねたので一撃だったようだ。
「いやぁ、お見事お見事。彼は魔王幹部序列6位。最下位だけど十分に強いんだよね。態度がただの不良だけども。ところで、ボクは邪神だ。仲間にならないかい?」
突如虚空から現れたのは、邪神と名乗る、漆黒の翼を持った赤髪の少年だった。
新スキル《叡智》です。
なんとなくさん付けしたくなる喋り方ですね。