天国か地獄(3)
下を向いてしゃがんでいる女の子の黒く肩まで伸びている髪の毛のせいで最初は顔が見えなかった。彼が近づくと彼女はぱっと顔を上げた。彼女の顔も煤でよごれていた。服もぼろぼろだった。
少しの沈黙が二人の間の距離を保っていた。
「あなた誰?」女の子が最初に口を開いた。
彼は何も話さなかった。警戒していた。なぜこんなところに女の子が一人でいるんだろう?
「.....あなた誰?」女の子が同じ言葉を繰り返した。彼女の目が少し大きく見開いた。
また少しの沈黙。そして彼がやっと口を開いた。
「僕は...ただここを通り過ぎようとしているだけ」警戒して名前は明かさなかった。
「あらそうなの。こんなところに子供が一人でいたら危ないわよ。」
彼は少し乱暴に言った。
「君こそ子供じゃないか。なぜこんなところに一人でいるんだ?」「子供」と呼ばれたことに彼は少しカチンときていた。
「私はただ休んでいるだけ。私の住んでいたところは戦争でなくなったから人がいるところにいこうと思ってるの。」女の子は気軽に話した。まるで何事もなかったかのように淡々と話した。
「そう....」
彼は気の毒な思いをしてこう思った。「彼女は僕より少し年下に見える。親は戦争で死んでしまったのだろうか?」両親はどこにいるのかと聞こうかと思ったが踏みとどまった。あまりふかおいしない方がいい気がした。
「あなたはどこに行こうとしてるの?」女の子が彼に尋ねた。少しの沈黙。そして彼は口を開いた。
「政府都市に」
また少しの沈黙。女の子はじっと彼を見つめた。
「そう。私もそこに行きたいわ。一緒に行きましょう。」
彼は目を見開いて彼女を見て思った。たった今知り合った人間についていこうとするなんて....この子は全く危機感がない。
「本気かい?」彼は訪ねた。
「ええ、本気よ。連れてってちょうだい。」女の子はじっと彼を見ている。純粋でくったくのない目だ。
彼は思った。彼女と政府都市にいっても特に自分の計画には問題ない....。都市についたら別れるだろうし。旅途中にもう一人誰かがいれば何かしら便利かもしれない。
「分かった。一緒に行こう。」
女の子はにこっと笑って言った。「良かったわ。ありがとう」
二人は歩き始めた。あたり一帯雑草しかない乾いた大地を。
女の子が彼に話しかけた。「あなたの名前はなんていうの?」
少しの沈黙。そして彼女の方を向いて言った。
「カイだよ。」
女の子がまたにっこりほほ笑んだ。
「私はアムよ。」
カイが彼女をみて小さくうなずいた。
少しの間だけだ。都市についたらさよならだ。