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なにやってんだ

―調査9 なにやってんだ―


俺たちは慌てて校舎の方に走った。

当然、先頭を走っているのは進だ。


「さっきの一回では正確な場所が分からない、困ったな。」


いつもは根拠なんて無くても自信満々なこいつだが、今回は少し戸惑っているように見える。不測の事態に少なからず動揺しているのだろうか。


そんな進の後を追いかけるように走っていた蛍子が進に聞く。


「さっきのって本当に悲鳴? 本当なら私たちだけで行くべきじゃ、ないんじゃない? 」


ちなみに俺も同意見だ。

悲鳴の主を見捨てろとまでは言わないが、せめて警察に届け出るのが得策だろ。


だがそんな俺たちの意見を、進はすぐに一蹴する。


「いや、行くべきだ。通報するにしても状況が分からないし、まだイタズラの可能性もある。」


まぁ、そうだけどよ、戦闘になったら勝ち目ねーぞ、このパーティー。アタッカーもヒーラーもいないからね、いるのはお遊び技能に極振りしたアホ三びきだけだからね。


そうこうしてる間に、俺たちは一階の廊下に辿り着く。最初の声だけを頼りに探せる範囲はここまでだろう。進はそれでも、手がかりになるものが無いか、辺りに目を走らせる。


「あった、これだ。」


そして、流石と言うべきか、ものの数秒でそれを見つけたらしい。


「食紅………? 」


彼の目線の先、廊下の床には点々と赤い液体が垂れている。しかも、その中には靴で踏みつけられたような跡もあり、どちらに向かったかも簡単に推測できる、優秀な手がかりだった。


「行くぞ。」


進はそう言うと、すぐに足跡の向いている方へと駆け出す。


俺と蛍子はその後を慌てて追いかけた。



足跡を追いかけた先には“家庭科室”というプレートが掲げられた教室があった。

進は直ぐにその引き戸を開こうとするが、俺はなぜか嫌な予感がして、それを咄嗟に引き留める。


「なぁ、家庭科室にも七不思議ってあったりする? 」


進は行動を止められて怒っているのか、やや不機嫌な様子で俺の質問に答えた。


「ああ、あるぞ。確か“美味しい少女”だったか。」


俺はその名前にぎょっとする。さっき聞こえたのは女性の悲鳴。家庭科室、調理、人間。

無意識にその姿を予想してしまう。


「開かない方がいいんじゃないか。」


俺は震える声で進に言った。

しかし、進は「こうしたい。」と思うとそれを実行しないといられない質だ。制止なんてきくはずがない。予想通り、奴は俺の言葉を無視してあっさり扉を開いた。



扉の先はプレートの通り、一般的な家庭科室という様子だったが、廃校から暫く経っているというのにまだ残っている調理器具や、食材の数々がその異常性を語っている。


とはいえ、その異常性よりも先に目につくものが目の前にあった。


それは、どうしてそうなった、と言いたくなるような器用な体勢で倒れている少女。

具体的には、両手を床に広げ、両足は机の上、そして上半身の側には倒れた椅子が乗っかっているという姿である。


「なにをしてるんだ。」


進は冷静に少女に質問した。

しかし、少女の方は進の言葉には返答せず、目を回しているのか、それとも頭がちょっとおかしくなってしまったのか、酔っ払ったときのような声と仕草で俺たちに助けを求めた。


つづく。

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