さぼってた訳じゃない
―調査7 さぼってた訳じゃない―
扉の先は今でもぎっしりと資料や備品が詰まったままの、正に倉庫部屋だった。
「うーん、はずれみたいね。」
蛍子は肩を落とす。
その横で進は上を見上げ、
「そうだな、噂の原因はこれだろう。」
とその場所を指差す。
そこには天井から剥がれてきた塗料がべろりと垂れている。この暗さだ、少し遠くから見れば、縄に見えなくも無いだろう。
そこで、蛍子はふと気がつく。
「ん? 」
扉の横で、山城界記が眠っているのだ。
「界記くん、こんな所にいたんだ。やっぱり話聞いてなかったんだね………。」
蛍子はその様子にすっかり呆れながらも、界記をたたき起こした。
「界記くん、起きて! 」
「うーん、ゲームくりあ……? 」
界記は寝ぼけたようすで何故かガッツポーズを決めている。
「そうそう、クリアだから自宅に帰りなさいね。」
蛍子はため息をつきながら界記を立たせた。
進はそれを見て思い出す。
「そうだ、界記。煉を見なかったか? 」
界記が帰っていないなら、煉瓦も帰っていないだろう。
質問された界記はまだ寝ぼけた様子ながら、その記憶を引きずり出そうとする。
「ん、煉ちゃん? 煉ちゃん………。」
そして、思い出した。
―僕はまだ用事があるから、間に合わないようなら先に帰ってて欲しいんだな―
こんなことを言われた気がする。
「先帰っててって言ってた。」
全体的に記憶が曖昧だが、これは確かに言ってたと思う。
「そうか、よし、帰るぞ。」
進は疑問を持つこともなく、直ぐに歩き出す。しかし、俺はなんだかもやもやするものがあって、さっきまでいた教室を振り返った。
“道具部屋”
見覚えのないプレート。
やっぱり、違和感がぬぐえない。
だが、そんな俺の様子を尻目に、蛍子が俺にいい放つ。
「界記くん、今度はサボらないでよ! 」
俺はその言葉になぜだか無性に腹が立って、
「いや、別にさぼってたわけじゃ。」
と直ぐに反論したが。
「じゃあ何してたわけ? 」
とさらに追求されれば言い返す言葉もない。
大変なことがあったような気がするのに、何も思い出せないのだ。
「やっぱ、さぼってたかも。」
俺はため息をついた。
そうこうしてるうちに、進は先頭を足早に歩きながら俺たちに声をかけてくる。
「明日は“赤く染まるプール”を調べるぞ、予習をしておいてくれ。」
その言葉は普段の俺なら全力で脳内否定を行うところだが、その時の俺はそれを上の空で聞いていた。
煉ちゃん、なにしてんだろ………。
続く!
やめて、最後の引きなんて作れない!作者のライフはもうゼロよ!