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同意はしてない

―調査4 同意はしてない―


「……見つけたんだな。」

そう呟いたのは、睡魔のれんちゃんこと、江藤煉瓦えとうれんがだ。

そして、その視線の先には、財布でも手帳でもない、彼の“忘れ物”がいた。


それは淡く浮かび上がる二つの青白い光。


彼が一歩音楽室に踏み入れると、

壁に掲げられた偉人の肖像達が、その瞳を一斉に煉瓦に向ける。


しかし、

「さっきは隠れてたみたいだったから、今度もいないかと思ったけど、居たみたいで安心したんだな。」


とその熱視線の中でも、煉瓦は迷いなく一つの肖像に向けて歩いていく。

そうしてその絵画の前に立つと彼は、


「親玉は君かな。」


と言って白い蛍光ペンキの入ったバケツを構えた。


「おーす、おはよー。」

あーあ、今日は朝から体育だよ。

めんどくせーなーとか思いながらも、俺はいつものように登校した。

俺の挨拶にクラスメートたちはこれまたいつものように「ねみぃ。」とか「だるいよなー。」とかやる気のない応答を返してくる。


昨日は色々あって疲れたが、まぁなんてことはない。今日からはまたダラダラハッピーな日々が戻ってく………。


「おはよう、山城やましろ。」


俺に声をかけてきたのはすすむだった。て、あれ、進?

普段は挨拶をしてこないこいつが、わざわざ声をかけてくるなんて、もしかして。

俺は即座に進の次の言葉を悟った。


「今日の放課後も頼むぞ。」


やっぱりかーーーー!!!


いやだよ、絶対嫌だ! どれくらい嫌かって言うと「ざんねんですが、ぼうけんのしょはきえてしまいました。」くらい嫌だ。

いや、まてよ、やっぱり冒険の書が消える方が嫌だわ。


「今日は“廊下を走る音”についての調査だ。楽しみだな。」


いや、俺は全然楽しみじゃないです。


そうだ、蛍子と煉ちゃんにも一緒に「行きなくない」って言って貰えば反対多数で中止になるはずだ。よし、じゃあ、早速頼みに………。

と考えていたときに、


「進くん! 」

と言ってこちらに走ってきたのは蛍子だった。お、蛍子いいタイミングだぞ、さぁ、一緒にこの探検バカに自分の立場を分からせてやるんだ!


蛍子は進の前に立つと、

「進くんがあんまりにも熱心だから、昨日言ってた“七不思議”について調べてきたんだけど………。」

と不機嫌そうに話を始める。


その様子に俺は、おお、いいぞ。俺が話を振らなくても勝手に反対意見を出してくれそうだ。


とか一瞬都合のいいことを思ったが。


実際にはこうだった。

「………あれってスゴく面白いね!! 」

蛍子はそう言って急に目を輝かせ、進に詰め寄る。どうやらオタクの変なスイッチが入ってしまったらしい。まじか。


これじゃあ、反対多数は無理だな。

しかし、2対2ならギリギリ中止にワンちゃんある。俺は、煉ちゃんを味方につけるべく彼の机に駆け寄ったが。


「すよー。」


やっぱりか………。

睡魔の煉ちゃんの名は伊達じゃない。

煉ちゃんはあと2分でホームルームだと言うのに、ゆすっても起きないほど夢世界の深部に突入しているようだった。

その上、落ち込む俺にさらに追い討ちをかける声が響く。


「全員賛成だな。じゃあ、今日の放課後、廃校舎の校門前に集合だ。」


いや、俺と煉ちゃんはまだ賛成どころか意見もしてないんだが。しかし、当然と言うべきかそれを言う間もなく、進は強行採択に至った。


それと同じとき、廃校舎の音楽室に足を踏み入れた者がいた。その人物は、


「なるほどね、流石ね。」


と音楽室の肖像画を見て言う。

そこには、無駄に美しい油彩タッチで、渾身の決めポーズをする煉瓦が描かれていた。


「流石に………ちょっと引くわ。」


つづく!

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