二度目の昼休み
土日や祝日などの休みの前日というのは、昔は嬉しかった、これからその休みをどう過ごそうか頭は大忙し、だけど、今は何とも思わない。でも、今日は少しわくわくしている、土日が楽しみなわけではもちろんない、では、なぜか。昼休みというたった1時間が私をわくわくさせる、私は恋をしたのかな、顔もロクに見ていない相手に。あぁ、私はなんて単純なのだろう。
もし、私があの人の事を好きになっても、あの人が私を好きになることは絶対になく、そんなに優しい人ならきっと彼女がいるはず。もし、いなかったら、それはそれで何か怖い。私では想像もし得ない裏があるようで。
昼休みが早く来ないかなと、授業の合間の休憩時間に机に伏せながら思う。少し首だけを動かして周りを見渡すと、私以外にもうつ伏せている人はいる、その人達を見て自分だけではないから大丈夫と、また自分に言い聞かせる、ぐるぐる繰り返し言い聞かせる。
こういう意味のない時間が来ると、途端に私の頭の中に自殺という単語がちらつく、今まで生きてきて良いことなんて殆ど無かったし、これからも良いことなんて起こる気が全くしない。それなら、更に嫌なことを経験する前に死んでしまった方が明らかに幸せな気がしてくる、病気で死ぬ人に比べて好きなときに死ねるのはなんて幸せなのだろうか。自殺をした人がいたら聞いてみたい、何を思い自殺に至ったのか、そして、何を想いながら絶命していったのか。しかし、それを聞くのは誰にも出来ないことで、どうやっても叶わない夢だから、考えても無駄だ。それに、私にはまだ死ぬほどの理由なんてない、どちらかと言うと今は生きたい。
窓の外の世界は今日も明るい、それに比べて教室はひどく暗く感じる。何度も思ったことだけど、休み時間ほどいらないものはない、そもそも座っているだけなのに、なんで休憩が必要なのだろう、もう休み時間を全て無くして早く帰らせて欲しい。
いや、昼休みだけは欲しいかな。
そして、退屈な授業をテレビのワイドショーの様に流し見して、昼休みを告げるチャイムが鳴ると私は走らずに一目散に屋上に向かった。屋上に着くといつも通り誰もいない、いつもの場所に腰掛けてコンビニ弁当を食べていると、彼が来た。私の胸が軽く高まるのを感じてしまった、恥ずかしい。
隣まで来て話しかけてきた。
「やあ、早いね」
そう言うとこの前とは違って、彼も昼ごはんを持ってきていた、私は出来るだけそっけないように返事を返した。
「そんなことないよ」
そっか、と彼はひとりで頷いて普通に渡しの隣に腰掛けた、男のくせに香るいい匂いがふわりと私を通り過ぎる。彼は手作りのようなおにぎりを食べながら、今日は暑いねとか、もうすぐ定期試験があるねなど、他愛のない会話をしている内に昼休みも終わりが近づいた。
ふいに彼が立ち上がって
「そういや俺の名前知ってる?」
と聞いてきた、私は知らないと首を振ると
「俺は羽立」
羽立、どこかで聞いたことのある名前、いまいち思い出せない。
「じゃ、そろそろ教室に戻るわ、今日は一緒に食べてくれて嬉しかった」
少し照れたように言うと、小走りで帰っていった、私も一緒に食べられて嬉しかった、しかし、それを言えるほど私は強くない。男の人と他愛ない会話など本当に何時ぶりだろう。
さぁ、今日は金曜日だから明日と明後日は休みだ。もう少しだけ頑張ろうと、私も立ち上がった。




