接続
「なぜ、我々人類は、もうひとつの分岐として、新たにヒトなる存在になったのか。」
政岡輝樹は、一ノ瀬真にそう言った。
「俺たちの世界では、認知できないものがあると勝手に思いこんでるだけじゃないのか?」
政岡は、一ノ瀬を鋭く睨みつけた。明確な意思を持って。
廃墟の中にいる2人。一ノ瀬は手には、鉛が握られていた。
その鉛の行く先は、政岡であった。
「全てに通じる流動性を有した、‘何か,」
2人のものではない声がその廃墟に広がる。
空は曇っていて、今にも雨が落ちてこようとしていた。曇るというよりかは、よどんでいた。草木の匂いだけは、その新鮮さを保ったまま、廃墟の中を漂い、そこにいる者たちを通り抜けて行った。
「大葉壮也、、、か。」
政岡は、どこか安堵した表情になった。しかしそこは、どこか諦めた様にも見える。
「なぜあなたは、こことは、異なる空間の流れをこちら側に入れたんだ?」
大葉は、政岡にそう問う。
「あっちの流れは、確実にこっちの空間を破壊するあるいは、飽和する勢いで侵入しようとしていた。どっちにしろ、私が手を出さなくても同期化は、始まっていたんだよ。」
政岡は、「なんだ、そんなことを聞くのか、」
とつぶやくと少し落ち込んだ様子を見せた。
「理由がどうあれ、あなたがやったことは、ただの独りよがりの押しつけだ。あなたは、あなただけの内なる世界が作り出した創造の結果をこの世界に無理やり繋げたにすぎない。
しかし、今となれば、あなたが施した工作もあらぬ方向に走っている、それは、あちら側の世界の住人の再構築だ。」
大葉という人間は、基本的には物静かな青年である。しかし、今の彼は、鼻息が荒く、何かに焦っている様子さえ見せている。
「再構築?あちら側の作り出した人格どころか、物体としての質量をこちら側が有しているわけないだろう?」
政岡は、すこし間をおいて、
「一ノ瀬くん、これが君の第三課としての仕事なのか?」
嘲笑を含んで、政岡は、一ノ瀬を見る。
しかし、その顔はおよそ政岡が知っている、一ノ瀬の顔ではなかった。
政岡は、震えた。
「お前は、誰だ?」
「再構築が始まったようですね。」
大葉はそう言った。
「はじめまして、政岡輝樹さん。平戸才と申します。」