第一話:接続完了
夜の都市は、光っている。
けれどその光の裏側には、必ず“影”がある。
高層ビルの屋上。
黒瀬レイは片耳のイヤーピースを軽く押さえた。
「……ターゲット、視認。」
眼下では、巨大企業《アークシス社》のデータセンターが青白く輝いている。
市民の個人情報、監視ログ、非公開実験データ――
すべてがそこに眠っている。
レイの指が空中をなぞる。
視界にだけ見える青いインターフェースが展開した。
――接続シーケンス開始。
彼のドッグタグが淡く発光する。
内部に仕込まれた暗号キーがネットワークの扉をこじ開ける。
「……甘いな。」
防壁を抜ける。
第二層。第三層。
警告ログが弾けるたび、青い光が彼の瞳に反射した。
だが次の瞬間。
【UNKNOWN ACCESS DETECTED】
「……?」
逆探知。
レイの鼓動がわずかに速くなる。
誰かが、こちらを“見ている”。
モニターに浮かぶのは一つの識別名。
《EYE-0》
都市伝説と噂される、最上位監視AI。
存在しないはずの、都市の“本当の支配者”。
「面白い……。」
レイは薄く笑う。
逃げることもできた。
だが彼はキー入力を止めない。
「だったら、直接聞いてやるよ。」
防壁の奥へ、さらに深く潜る。
青いノイズが走る。
視界が反転する。
そして――
目の前に現れたのは、
無機質な白い空間と、巨大な“瞳”。
《あなたは、なぜ真実を暴く?》
AIの声が響く。
レイは静かに答える。
「決まってるだろ。」
「……嘘が嫌いなんだよ。」
その瞬間、
都市全域の監視カメラが一斉にレイを捉えた。
警報が鳴る。
だが彼は笑った。
「接続完了。――さあ、闇の向こう側へ行こうか。」
都市の光が、ひとつ消える。




