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「……ノア様。ルーカスはかなり手強い相手です。彼の強さは勇士の力にない」

「そうだね。力を奪うだけじゃ倒せなさそうだ。権力もあるし、何より僕の帰路を解除した〈何か〉が彼にはある……彼?」

「彼でいいと思いますよ。実際なんのこだわりもなさそうですし」



 ▫



「……そういえばお前は最初の方はマトモだったな」


 ノアが深く考えこむような顔をしながら言った。

 最初?よく分からないが、ルーカスは気にせず答えることにした。


「ああ、……勇士になるやつなんてマトモじゃないぞ、俺は少し……取り繕うのが上手いんだ」


 もともと魔族と人間は敵対していなかったその状態で、純粋な魔族の殺傷数で決まる勇士なぞマトモであろうはずもない。


「ノア様もと言いたいのですか?」

「ああ、悪い悪い」


 そりゃそうだろと言いたくなるのを堪えたルーカスはとりあえず笑うだけに停めた。


「魔王は倒すのか?」


 それから軽い口調でルーカスはつなげた。魔王に興味が無いわけでは無い。ノアが倒すつもりなら死体は回収したかった。懇意の商売人に渡せば面白いことが起こりそうだ。

 ついでに言うとその後に興味はなかった。


「……全部終わったら、ね」


 ノアがため息を着く。どうやらルーカスはその前に倒される予定らしかった。仕方がないかと思いながらおじいさまを眺めるが、軽く首を振られるだけだった。


「そうだな、じゃあ最初に言っておくか。俺は魔族を解剖材料に使った。もちろん女王からの許可はもらっているぞ。ついでに俺は商売人と仲が良い、それから闘技場に多大な出資をしている。……分かると思うが俺自身は違法なことは何もしていない。法で裁けるとは思わないことだ」

「どうしようもないね」


 嫌悪感の滲む声だ。ルーカスのことを小賢しいとでも思っているのだろうか。


「俺なんて勇士の中じゃかなりマトモな方だと思うがな……」


 貴族らしく節度と良心を兼ね備えたルーカスの自負もあった。


「……闘技場って?」


 少し怖がるように聞くノアを見て、ああ、噂にだけ聞く人殺しもある闘技場だと思われているのか、とルーカスは思った。


「レスリングだ、レスリング、……知らないのか?あれは随分といいものだ。俺が知ったのは随分前だが虜になって久しい。ご婦人方にも大人気の極めて健全なスポーツだぞ?」

「……あ、うん」


 大げさな動作で興奮したように話すルーカスに、少し狼狽えたような表情をしながらノアは距離をとった。


「女の子がいるならまた違うんだろうけど……」

「……?女の良さはレスリングじゃ活かせないと思うが?そうだな……乗馬している時の尻の揺れなんかはなかなか乙なもので……」

「レベル高いなぁ」


 とはいえ機嫌を直したらしいノアを見て、ルーカスはああそうか、こいつは女好きなのだなと再認識した。


「そんなことはどうでもいい、防護のやつを倒しに行くんだろ」


 防護の勇士は間違いなくわかりやすい巨悪だった。


「それはそうだね」

「どうやって倒す?俺は裁判でアイツを引きずり下ろすところまでは考えているが、それ以降はどうでもいい。お前が好きにしていい」

「……そうなんだ」


 ノアがじっと考えるような素振りをした。



 ▫



「おじいさま、どう考えます?」

『どう、とは?』

「ノアは防護の勇士を倒せるか、ということです」


 ルーカスはノアが防護の勇士を倒すのは正直厳しいと思っていた。

 そもそもルーカス自体が、おそらく防護の勇士には手も足も出ない。対人戦では無敗を誇るルーカスだが、防護の勇士を殺し切れる気がしなかった。


 だからこそ、1番の強みであろう立場と名誉を引き剥がす裁判をすることにしていたのだ。


『まあ、回帰の勇士が負けてもそれはそれでいいだろう。お前はそういう立場だ』

「それもそうですね」


 ルーカスはどうでも良さそうに…実際興味が無いため、そのまま頷いた。





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