蛇足
「リンはよくやったんだな」
私がなぜリンに託したかと言えば近くにいたから、と言うしかないが、思ったより悪くない形に持っていったようだ。根性があるとは思っていたが、それ以上に才ある者だったらしい。
ランドット公も不自然なくらい私のために動いてくれたようで……弟のようなものだと思っているという言葉は案外嘘でもなかったのかもしれない。
「ルーカス。何をしている?」
「ようやくおじいさまの体を全て地の底から拾い集めたので休憩していたのですよ」
「おおそうか。助かったぞ」
おじいさまはすっかり元通りになったらしく、機嫌がいい。拾い集めた肉片がくっついていく様は見ていて気分のいいものではなかったので、休憩がてら私が人間だった頃や、その後をその辺に転がっていた鏡から見ていたのだ。……こんなものがゴミみたいに落ちているのは、さすが元主神が住んでいた城と言うべきか。
健康そうな青年の姿になったおじいさまが楽しそうに笑う。
おじいさまは時間を司る神らしく、私は何十年前の地の底に落とされてひたすら肉片集めをしていたのだ……そもそも私に会うためにある程度集まっている必要があるとかなんとか。契約の前借り?頭が混乱しそうだ。おじいさまのことは深く考えるだけ無意味なのかもしれない。
いくら奴隷になる契約をしたとはいえ、物心がついたばかりの頃にした簡単な約束に見合っていないと思う。大変だった。
「……しかし、私って本当に男だったんですね」
何十年と経つうちに私の身体は成長していた。どうやら私は成長するのが遅かっただけのようだ。さっきまで映像を映していた鏡を見ると、おじいさまに少しだけ似ている不遜な顔つきの青年が興味深そうにこちらを見ていた。
「そうだとずっと言っていたはずだが」
「そうでしたね」
全く信用していなかったので、そうですねとしか言えない。
手も随分大きくなった。声も低くなった。そこそこかっこよくなったような気もする。まあ見せる人がいないのだけど。
「さあ、ルーカス、休憩は終わりだ」
おじいさまが手をパンパンと叩く。
「え?」
「今から女神を倒しに行くぞ!」
「ええ!?」
「復活したらやることは復権だろうが!あ、いや王にはお前の父親についてもらうが」
「え、え?」
「行こう!ルーカス、お前は戦うのが好きだろう?何よりお主は儂の奴隷だからな!着いてくるしかないのだ!くはははは」
どう見ても悪の首魁みたいに笑うおじいさまを見ながら、多分私も傍から見たらこんなんなんだろうな……と少し悲しくなった。
正直もう解放してほしい。私の頭が良すぎるせいで今までの記憶も全然薄れていないし。たまにフラッシュバックのように思い出して泣きながら剣を突き立てるが、神になった私の身体には意味の無いことだった。
「まだまだ働いてもらうぞ!儂の孫の中で1番強いからな!」




