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「どんな気分?」


「……別に」


 何百年分繰り返したか知らないが、ネストは復讐をようやく達成した。しかし喜びがあるわけでもなかった。今までの目標が消えて虚無感だけが残る。


 ネストの悪癖だった。追っている間は楽しくて仕方がないのに、いざ達成されるとなんの感情も湧かなくなる。……ネストは復讐を楽しんでいたのだった。


「俺に用か?」


 普段通りの様子でネストは竜の女にそう聞いた。


「これからどうするつもり?」


 少しとんちんかんな質問だったが、合っていたらしい。


「予定はないな。どうしようか」


「!じゃあさ、魔王になってみる気、ない?」


「は?」


「うん、それがいい。前の姑息な魔王よりよっぽど魔王だ。魔王になろう」


「……なるほど?」


 ネストはそれもいいかなという気分になってきた。


「コウモリの魔族になれる、うん。かっこいい。いける。強い私が支持すればきっとみんな納得する」


「それもそうだな」



 ▫



 そうしてネストは魔王になった。

 恐ろしいくらいスムーズに彼は玉座を手に入れたのだった。


 強さこそが正しさ、らしい魔族にネストはよく馴染んだのだろう。


「今までないくらい人間を追いつめてるぞ」


「そりゃどうも」


 確か、ロアとかいう女の叔父だったか。強いらしいがよく知らない。そいつが話しかけてきた。


 足を組みながらネストは考え込む。

 魔王は意外と楽しい。これは人類を追い込み、魔族を救い、生息圏を勝ち取り広げるゲームだ。


 さっき渡された手紙を見る。

 どうやら停戦協定を結びたいらしい。魔族を人と認める?はあ、リンだったか?あの女が何やら入れ知恵でもしたのか。

 停戦、するべきだろう。魔族側も疲弊していないわけではないのだ。実質的に魔族側の勝利を約束しているようなものだ、飲まない手はない。……魔族達が納得するかは別の話だが。


 何よりネストが面白くなかった。せっかく面白くなってきたのにここで終わりか?


「はあ……」


「私は飲むべきだと思う」


「何様だよ、竜もどきの風見鶏」


「……。その侮辱を取り消して」


 手紙を覗き見られて腹が立ったのでネストはその女、ロアを煽った。


「ああ取り消す。で?」


「相変わらず掴みどころがない」


「言葉なんてその場限りの音でしかないからな」


「はあ。とりあえず停戦して、国力をつけた方がいい。人間との差はやっぱりそこだと思うから」


「道理だな」


 ネストはロアに手紙を渡す。了承の意を示したのだ。


「政治なんて俺のやることじゃない、お前が王になれ」


「は!?」


「やっと動揺したな。全く」


 いつもあまり表情を見せないロアが大きく口を開けて驚く様を見て満足したネストは、そのまま玉座から立ち背を向けて歩き出した。


「次は何しよっかな」


 とりあえず母国にでも帰ってみるか。

 上手くいかなければ、時間転移でまたここまでやり直せばいい。

 今の姿で飛んでいったら兄と弟はどんな顔をするだろうか。腰を抜かして、もしかしたら膝まずいたりして。

 ネストは楽しそうに小さく笑い声を零しながら、城の窓の外へと飛ぶ。


 この世界は楽しいことばかりだ。

 楽しみつくそう。そのためにきっとネストの力は存在するに違いない。

 全てを楽しみ尽くして飽きたら……本当の最初に戻って、誰かのために尽くすのも悪くないのかもしれないな。


 なんだか機嫌が良くなったネストはそんなことを思いながら空を飛ぶのだった。





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