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 もちろんエマは置いてきているが、今ルーカスの手元にいる勇士2人とロアをつれて、ルーカスは魔族領に来ていた。もともとここは隣の国の属国扱い……いや、もうその国は魔王に滅ばされて存在しない。

 国境沿いの街に魔族達が攻め入り、魔族は存在を許されなくなった。魔族領という呼び方は今は適していないが、ルーカスはついくせで使ってしまう。


 勝手に魔族領に攻め入ったことが知られれば女王に怒られるどころではすまないだろう。なので少数精鋭で向かっている。


「一応無理そうだったら俺が裏技で時間を稼ぎつつネストの転移魔法で帰る予定だから」


「気軽な魔王討伐」


「そういうことだ」


 居場所はロアが知っているらしい。

 範囲殲滅はロアとネスト、後ろの警戒はリンに任せているためルーカスはやることがない。どうやら魔王は武闘派らしく、国境沿いに近いところにいるらしい。以前ネストが遊びに行ったらしいところまで転移魔法で来たので、今日中には着くだろう。

 ネストの魔力が心配だが、どうやら魔族化すれば大幅に魔力が回復するらしく、適度に魔族化して魔法を連射している。楽しそうでなによりだ。


「ルーカス!回復」


「はいはい」


 こうしてたまにルーカスが回復させるだけだ。

 まさか自分が回復担当になるとはな……と遠い目をした。回復は基本的に信心深い聖職者がやるものだ。

 そうでなくとも、ルーカスは本職に比べると魔力量が心もとないので、正直あまり向いていない。


「……待って」


 ロアが大きな声で制止を呼びかけた。ルーカスがロアの視線に従って顔を上に向けると。


「ドラゴン、か」


「……」


 ロアは無言でそのドラゴンを見つめている。


「ようロア、久しぶり」


 ドラゴンが口を開いた。


「……叔父さん」


「ロアには悪いがここは退いてくれねぇか」


「……なんで?」


 ルーカスは口角を上げながらそのドラゴンに聞いた。その巨体に声が届く気はしなかったが、一応。


「なんでって。お前らこのまま魔王のところに攻め入るつもりだろ?」


 どうやら聞こえていたらしい。とても耳がいいようだ。


「叔父さん。どうして魔王なんかの味方をしてるの?」


「はあ?魔物が強いやつの配下になるのは当たり前だろうが」


「叔父さん!あいつは父さんを殺したんだよ!?」


「そりゃそうだが……」


 ロアの叔父さんとやらは会話ができそうな魔族だった。

 ……このデカイドラゴンを倒すにはネストの魔法くらいしか有効打がない。ルーカスは横目でネストを見た。頷く。


「俺達はお前を倒す手段を持っているぞ」


「……だろうな。ま、でも戦力は削れるだろ?それなら問題なしだ」


「負けること前提で戦うなんて竜族として恥ずかしくないの!?牙を抜かれた叔父さんなんて叔父さんじゃない!!」


「あっ。おい」


 ロアが羽だけ出して飛び立ち一撃を入れる。


「ま、まあ待とうか。今のは無し、な?」


「……姪の可愛い一撃だと思って見逃してやるよ」


「そうしてくれると助かる。俺たちは転移魔法で家まで帰れるんだ。これが何を意味してるかと言うと」


「俺がここで戦っても意味ないってことか……」


「そういうことだ。俺達だってここで体力を消費したくない」


「ああそうか。そうだろうな。くそっ、なんとなく分かってたぜ!でもなぁ、俺だってもう今更引けねぇんだよ」


「ネスト」


「うむ」


 ルーカスが呼びかけると、ネストは予備動作無しで対軍規模の魔法を打ち込んだ。……余波がルーカス達の元に降りかかるが、ロアが守ってくれた。こういう時防護の勇士がいるといいんだろうな……とルーカスはぼんやり思った。


「まだ生きてるな」


 殺しておいた方が便利だろう。そう思ってリンを見る。


「鱗が固くて刺さらない」


 首を横に振られた。

 ルーカスの切断が効くかは正直怪しい。そして効かなかった場合紙耐久のルーカスはひとたまりもないだろう。だからこそネスト攻撃は一択だったが、今はクールタイム中だ。


「仕方ない。1回帰るか」


 目の前のドラゴンが元気になる前に帰りたいところだ。


「どうだネスト、行けそうか?」


 魔族になったネストに聞く。

 なんならもう一撃いけそうだ。


「……いや、降伏する」


 ドラゴンが反響するような声を出す。


「どういうつもり?」


「強いものに従うのが魔物だ。お前の父さんは強かったよ。でもそれより魔王は強かった。だから俺は従った。今俺に魔法を撃ち込んだ男は魔王より強い。だから俺は降伏する。人間相手じゃかっこもつかないが、今は魔族らしいしな」


「……相変わらず叔父さんの言うことはよく分からない」


「それでいい。俺の話だ」





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