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「……」


 ルーカスが帰って来て、それを見た瞬間固まった。

 リンが勇士になっている。


「お、お前、勇士になってるぞ」


「へ?」


 思わず言葉が拙くなるルーカスにリンは素で驚いたように声を漏らした。


「俺がいない間に何があった」


「……訓練をしていた。私はそもそも魔王を倒すために勇士にはなっておきたかったからな」


 そういえばそうだった。

 リンはルーカスを見て少し動揺こそしたが、最初から復讐が目標なわけではなく、人類の脅威である魔王を倒すという使命を持って行動しているらしかった。だからこそルーカスの実験にも複雑な顔をしながら付き合ってくれたのだ。


「少し不安はあった。お前がいればもし何かがあってもなんとかなりそうだが、……実際重傷を負った時もなんなく回復したしな。あの技術はすごいと思うぞ?」


「……」


 早く続きを言えとルーカスは目で急かした。


「お前がいない状況で死地に赴いても、そのことを誰も知らないんだ。もし窮地に追いやられても私は誰にも気づかれない。そもそも私を知っている人間なんて誰もいないのだから」


「そんなことはないと思うが……」


 ルーカスがよく頼りにしているメイドもリンのことはしっかり認識している。


「ということで私は今までと同じことをしていただけだ」


 何が、ということで、なのか分からない。勇士になったことが影響しているのか、それともルーカスに慣れてきたのか遠慮のない話し方だ。……元から遠慮はなかったか。かっこつけるのをやめたということだろう。


「なるほどな。参考になった」


 これでルーカスの元には自分も含め4人も勇士がいることになる。1人は味方とは言い難いが。なんにしろこれは……魔王討伐のチャンスではないだろうか。


「お前はどうやら刺突の勇士になったらしい」


「は?」


「同時期に存在するのでなければ被りはよくあることだ」


 おそらくどうやって知ったか知りたいのだろうリンの表情を横目で見ながらわざと見当違いなことを言った。


 勇士になればそういうことは直感的に分かるようになるかと思っていたがそうでもないらしい。

 まあ本には、どの勇士であるかは女神のお告げで知るか、文献と一致する箇所を照らし合わせて調べるのだと書かれていたような気もするが。


『だから言っているだろう。お前のそれは才能だ。ギフトではないがな』


「……」


 真面目に聞いていなかったが、確かにおじいさまはよくそんなことを言っていた。


『お前は自己肯定感が高いんだか低いんだか相変わらず分からんな。その頭の回転の“速さ”がお前の忌まわしい家の最終目標にして成果だろう』


「それはそうですが」


 頭の回転が速いと言っても、最初から分かっている人間には及ばない。そしてルーカスは基本的に分かっていない側だ。そこも先祖が調整してくれると良かったんだがなぁと思ったことは1度や2度じゃない。よってあまり恩恵を実感できる機会はない。


『その女に起こった異変と今までの勇士の情報を分析して割り出した特徴と瞬時に照合したんだ。……我はあまり説明が得意ではない。あまり話させるな』


「すみません」


 ひとまずルーカスはおじいさまに謝罪をした。


 リンが勇士になり、魔王討伐が射程圏内に入ってきたが、ルーカス自身には積極的に魔王を討伐する理由はない。


「まあせっかくだし魔王倒しに行くか」


「……えっ?」


「無理でもなんとかなるだろ」


 おじいさまを見上げながらルーカスはそう言った。






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