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「アランの墓ここに作ったんだな?」


 ネストがルーカスに対して呟いた。


「それが本人の希望だったらしい。根回しまでしていた」


 アランの所属していた国から直々に、ここに墓を建てて欲しいと書いてあってルーカスは大変困惑した。聖地扱いでもされているのか、たまにアランのファンが訪ねて来る。


「2ヶ月、か」


「そうだな……」


 珍しく感傷的なネストを見て、ルーカスもゆっくりと頷いた。

 アランはあの襲撃後、2ヶ月で死んだ。慕われていたんだなと思った。きっとルーカス以外の視点では慕われるだけの魅力があったのだろう。


「そういえば殴打の勇士の墓はどうしたんだ?」


「ああ、うん。とりあえず共同墓地に埋葬した」


 そう、レイクの遺体は引き取り手がいなかった。身分が低いのも良くなかったのだろう。そうは言ったって魔物から守ってくれていただろう勇士に対する扱いではないだろうと思ったが、どうやらそう単純な話でもないらしかった。


 どうやらレイクには母親と複数の兄弟がいたようだが、全員拒否したということだった。父親は誰だか分からないという話で、どうやら奴隷の子じゃないかという話すらあるとかなんとか……まあルーカスの知ったことではないので、公的文書としてはありえないくらい感情的な文章のそれは適当に斜め読みをした。


「ふうん。……聞いといてなんだが、俺殴打の勇士と馴染みなかったわ。顔も知らんな」


「そうか……」


 ネストらしい物言いになんとも言えない気分になりつつ、ルーカスはとりあえず相槌を打った。


「それで、ロアだったか?アイツは竜人だったよな?今や人間にしか見えないがどうなってるんだ?」


 どういう繋がりかは知らないが、どうやらそれが本題らしかった。


「魔法の1種らしい。魔族にはたまに使えるやつがいる。ここは魔族に支配された土地と面した辺境だから、紛れ込んでいたりする」


「……その情報を広めないのか?」


「広めたら、隣人を信用できなくだろ?まあ滅多にいないから気にしなくていい」


 と言うが、実際のところはそれなりの数がいる。ルーカスには違いが分かるので適当に狩りつつコレットに渡している。魔法なので、長時間使用することはできないらしく、戻っている間は魔族領に一度戻らないといけないからこの場所に多いとルーカスは考えている。実際、王都や他の土地では見たことがない。だから言う必要もない。変に疑心暗鬼になる方が不利益だろう。


「なあ、それ俺も使えたりしないか?」


「え?……使えるかもな」


 結局のところ魔族が隠れているとかそんなことはどうでもよく、ネストはただその技術を知りたいだけだった。


「それよりも面白いことに俺は最近気がついたんだ。知りたいか?」


「それよりも?いや両方知りたい」


「強欲だな……。まあ待て聞け」


「ああ」


 魔族にやってもらった方が楽だし便利じゃないか?と思っているルーカスにはあまり面白いと感じられなかった。それよりも、だ。


「魔族と人間に大した違いがないっていうのは、昨今よく分かっているところだと思うが……」


「お、おう?」


「魔族は人間の変質した姿というのが俺の推論だ。根拠を聞きたいか?」


「ああ」


「魔族は人間にできる。いや戻せる?んだ」


「……なるほど。つまり人間も魔族になれる。よって俺も魔族になれるってことだな?」


「……まあそういうことだ」


 ルーカスの考える面白さとネストの考える面白さにはどうやら相違があるようだった。


 ルーカスは今まで人外扱いされてきた魔族も患部を消し飛ばせば人間なんだぜ?今までの我々の行いは一体?というところに面白さを感じている。


 そしてネストは人間が魔族に変質できる、つまり人為的に今以上のスペックを持てる可能性に面白さを感じている。


 こうやって考えは違えどお互いを尊重し合えるからこそ2人は上手くやっていけているのだが、そのことにルーカスは気づけない。


 ネストは久しぶりに怒りも不満もなく、ただ楽しめるこの状況を楽しんでおこうと空を見上げた。






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