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 殲滅の勇士の潜伏場所は誰にも言っていないが、追憶の勇士はこちらに来てずっと滞在している場所に残したままだ。どこからでも話は漏れる。エマがルーカスを1人狙い撃ちしてくるなら、追憶の勇士にも1人以上の勇士が送り込まれていると見るべきだろう。


 ……。

 ルーカスよりも追憶の勇士の方がこと対人戦では弱い、と思う。ああいう術は理性の無い獣相手の方が有効そうだ。ルーカス相手の方が警戒して然るべきじゃないか?エマの力をそれだけ評価していたとも考えられるが……。


 と、考えているうちに爆撃音が聞こえた。どうやらネストの居場所も向こうに割れていたらしい。まあこの分だと大丈夫そうだ、あの逃げ足の速さを思い出しルーカスはそのまま走る、と。着いた。


「おい、アラン!開けてくれ!!」


 扉を叩く。


「っ。『家主は自由に出入りできる』!」


 どういう仕組みか、建物の中に入れたようだった。アランのおかげだろう。


 そんなに広い建物じゃない。すぐに見つけられるはずだ。


『2階の寝室だ』


 おじいさまが珍しく、ルーカスの生死に関わらない助言をした。その違和感に少し首をひねるが、それどころではないと思いなおし、急いで階段を上がる。


 寝室の扉を開けると、息を切らしたアランと、レイク……殴打の勇士が対峙していた。よく今まで逃げ切れたものだ、アランは助かったと思ったのか、ルーカスの顔を見て、気の抜けたような表情になった。


 ……寝室は、というか今まで歩いてきたどこにも破損箇所は見当たらなかった。殴打の勇士は地面に大きな穴をあけるらしいので、おかしいな、とルーカスは思ったが、これもアランがやったのかもしれない。離れとはいえルーカスの持ち家だ、壊されないに越したことはない。


「……ルーク」


 殴打の勇士……レイクはルーカスが闘技場で名乗った名前で呼んだ。


「ああ」


「本当に切断の勇士だったんだ……」


「そうだな?」


 何故かルーカスに気を取られているレイクに気づき、その間にアランが逃げ出してルーカスの後ろに回った後へたりこんだ。


「し、死ぬかと思いました」


「くはは。まあ……殴打の勇士は引き受けてやろう」


 湾曲の勇士を押し付けるつもりなので、そんなことを適当に言って、ルーカスは目の前の殴打の勇士をじっと見つめた。


「その男を庇うんだね」


「……」


 何故か苛立った様子のレイクにルーカスは少し戸惑うが、なんだか楽しくなって口角を上げる。強者の戦いを見るのは好きだ。間違いなくコイツは強い。そう確信した。


「なんか言ってよ!!?」


 そのまま殴りかかってくる。大味なパンチだ。余裕を持って避けようとして、そういえば後ろにアランがいるなと思い腰に下げていた剣を抜いて腕に切りかかった。予想外だったのか、レイクは拳を後ろに引いた。


「さっさと逃げろ」


「は、はい」


 へっぴり腰でなんとか駆け出していくアランを見てとりあえずほっと一息をつく。

 そのまま呆けた様子の殴打の勇士に向き直り、会話に付き合うことにした。


「攻めてきたのはお前達の方だ。帰路の勇士は国際指名手配されている犯罪者で、俺は辺境伯。そして殲滅の勇士と追憶の勇士を保護している。どちらが正しいかと言われれば、俺の方だと思うが……どう思う?」


「うるさい!!!」


 そういえば殴打の勇士が何故ここにいるのか聞いていなかったな、と思ったルーカスはそこに言及したが、当然答えてくれる気はないらしい。


 同じように殴りかかられたので避ける。後ろの壁が大破した。1回くらえば大怪我どころじゃすまないだろう。……アランの強さも再確認した。結構使えるな、あいつ。


 ひとまず壁を切って、そこから飛び降りることにした。このまま破壊されたらルーカスが巻き込まれかねない。使用人達は避難しているはずだが、それも一応考慮して。

 飛び降りた後、狭い建物内の方が自分に有利だったかな……とルーカスは思った。いまいち戦いに本気になれないのはおじいさまがいるからか。


 腰を落として、剣を腰の横に据える。強いやつと戦うのでこういうのもたまには良い。昔1度だけ、曲芸のような扱いのものを見ただけだが、ルーカスは自身がそれを再現できるという確信があった。


「っ」


 レイクはやばいと思ったのか勢いよく後ずさった。賢い行動だと言えるだろう。近くに生えていた木は全て細切れになった。


「初めてでも上手くいくもんだな……」


 剣の切れ味は著しく落ちた気もするが、勇士の力でそのあたりはゴリ押しできるので大した問題ではない。


 森の奥深くに向かう。その方がルーカスに有利だと考えたからだ。


『やはりお前は器用だな』


 おじいさまが感心したように言った。


 真正面から殴打の勇士が歩いてくる。自信の表れだろうか。


「なんだその剣は……」


 その手には見たことのないくらい大きな……殴打の勇士の身の丈ほどもある大剣が握られていた。









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