表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/66

33

「たまにはVIP席じゃないところでも見てみるか……」


 客として多いのはやはり一般席の客だ。オーナーとして確認しておくべきだろうと判断して……いや、帰りの馬車が来るまで1週間くらいあり暇なので、たまには違う趣向も試したくなっただけだ。


 扉に向かって歩き始めると、闘技場で戦っている男達と比較してもよりいっそう体格のいい男が扉の前で右往左往しているのが目に入った。


「どうしたんですか?」


 とりあえず話しかけてみることにした。


「い、いやなんでもない……」


「……。ここに入りたかったのでは?」


「そう、だけど。でも」


「見たところ初めてみたいですね。私もです!少し怖いので一緒に行ってくれませんか?」


 なんて白々しいことをルーカスは言った。まあ一般席で見るのは初めてだし、そういう意味で少し緊張しているのは本当だ。

 ルーカスが好奇心に目を輝かせて、楽しそうに言うものだから、その男も折れたらしかった。


「いい体格してますよね……騎士の方ですか?」


 騎士なら一般席にいてもおかしくはない、そう判断してルーカスは世間話として聞いた。衛兵の可能性の方が高いが、その場合でも騎士と言った方が嬉しいだろう。


「……そういうわけでは。僕は図体ばかりでかくて何もできないから」


「私はこの通り体格が良くないので、羨ましいです!」


「……ありがと」


 ルーカスが本心から言った言葉に、巨体の男は複雑そうな顔をしてお礼を言った。

 体格が良ければ、舐められることもないし、なにより強い!もっと誇りに思えばいいのになんてルーカスは考えつつ、受付にお金を払う。一瞬ギョッとした顔をされたが、さすがプロ、何事も無かったかのようにお金を受け取った。


「2人分払っておきました」


「えっ」


「このくらい……いや、付き添いに来てもらっているんです、遠慮しないでください」


 大事なのは賭け金で、入場料は治安維持のために少しだけ取ってるだけだしな、と考えながらルーカスはそう言った。実際この男が突然誰かに掴みかかったりするようには見えなかった。


「どこかの御曹司なの?」


「……」


 なにかの対応をミスったらしい。


「……そんなに世間知らずに見えますか?」


「え!?い、いや、世間知らずというか、上に立つ者の雰囲気?みたいな。気を悪くしたらごめん!」


「いえ気にしていませんよ。前にも似たようなことを言われたので聞いてみただけです」


「そうなんだ良かったー」


 賭け金は周りを見て合わせないと身分がバレかねないなと思うルーカスだった。おじいさまの方を見るが、目の前の巨体の男をじっと見たまま黙り込んでいる。前の周回とやらで、ルーカスに関わりのあった人物なのだろうか。それもあって話しかけたのだった。


「今日はどうしてここに?」


「旅をしてるんだけど、前からここが気になってて」


「そうなんですねぇ」


 有名なのはいいことだ、ルーカスは頷いた。おじいさまが少し眉をしかめた気がするが、見なかったことにした。


「あなたは?」


「私ですか?私は……」


 なんと言ったものだろうか。


「ちょうどこの辺りで商売をやっていましてね。たまに様子を見に来るんですが、予定が終わって暇なのでこうしてこの場所に見に来たというわけです」


 嘘はついていない。


「もしかして僕より年上?」


 ルーカスがその男を見ると、思ったより若そうに見えた。10代かもしれない。


「20は超えていますね」


「やっぱり僕より年上だ!えっと、ごめんなさい」


「いえ。慣れていますから」


 むしろ性別を間違えなかった分見る目はある、とルーカスは心の中で思った。


「それよりどちらに賭けますか?」


 ルーカスの所有物だが、先日1度しか見たことがない闘士2人だ。新しく入ったのだろう。どちらが強いかはさっぱり分からなかった。


「は、初めてで賭けるの?こういうのは1回見た方がいいんじゃ……」


「む、そういうものですか」


「でもちょっとくらいならいいかな……?いくらから賭けれるんだろ」


「最小単位は100からみたいですね」


 隣に座っていた品のいいご婦人に聞き返ってきた言葉をそのまま伝えた。

 やはり入場料を取っているからか、一般と言っても一定レベルの品格はありそうだ。もちろん隣の男も含めて。


「やってみようかな」


「じゃあ私はこちらの体が大きい方にしましょう。大きい方が強い、ですよね」


「む。そんなことないよ」


 男はそう言いながらルーカスが賭けていない方の闘士にお金を賭けた。基本的にここの試合では魔法の使用が反則とされているので、実際ルーカスのような考えが一般的だった。


 組み合いが始まる。やはりルーカスが賭けた体の大きい方の男が優勢だ。しかしいまいち決めきれない。ある程度の時間が過ぎた後、小さい方が息を荒くしはじめている体の大きい男を投げ飛ばした。


「あー負けたか」


 ルーカスが賭けた方がレートは高かったらしい。

 それはそれとして負けたのだが。


「勝った。えへへ」


 当たり前だがルーカスにはビギナーズラックは適用されなかったようだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ