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「匿う?」


 ルーカスはアランの言葉に、思わず聞き返す。

 ちなみにネストは、もう話すことは話しただろうと、席を立ってどこかに行ってしまった。


「ええ、そうです」


「……どうしてか、聞いてもいいか?」


「もちろんです。貴方には聞く権利がある」


 真剣な顔付きに思わずルーカスは背筋を伸ばす。


「貴方のことだからもう知っているでしょうけど。勇士が次々と倒されています。殲滅……はさておき」


 アランはネストの方をチラリと見てため息をついた。


「防護の勇士の裁判は貴方が企てたことだと私は知っています。というか国の上層部にも伝わっています。だから貴方を警戒して戦力を送り込もうということで私が選ばれました。まあ私自身が手を挙げたこともあるのですが」


「……国の内情を話してもいいのか?」


「嘘をつくことは罪にあたりますので」


 相変わらず変なところで律儀なやつだ、とルーカスは思った。


「本来レイヴンの裁判における死刑は緩いものです。執行されることはまずない。貴方もそれが分かっていてあの国で裁判を行ったのでしょう?」


「まあ……そうだな?」


 ルーカスは嘘をつくことに躊躇いがないので、防護の勇士を殺すつもりだったことを隠し、白々しくアランの問いに同意した。


「しかし結果的に死刑は執行された。それは刑が執行される朝まで家に閉じ込めた誰かが『いた』からです。それが帰路の勇士の仕業であるという噂がまことしやかに囁かれている」


 事実だしな、とルーカスは思ったが、神妙な顔で頷いて口には出さなかった。


「刺突の勇士も帰路の勇士との交戦後、死亡が確認されています」


 おや、そこには自分もいたはずなのに、それは知られていないのか、おかしいな、と一瞬ルーカスは思った。しかし、よく考えればこの国からほぼ出ないルーカスの容姿はあまり知られていないし、何よりあの時はワンピースを着ていた。少女のようにでも見えていたのだろう。


「殴打の勇士も帰路の勇士と会話している様子が確認されて以降行方不明で……」


「それは……知らない情報だな」


「意外ですね」


「そうか?」


「そうですよ。実際刺突の勇士までの情報は知っていたのでしょう?」


「まあな」


 目の前で見ていたわけだしな。ルーカスはそう思ったが、これも当然言わないでおいた。


「それで匿うっていうのは?」


「もう分かるでしょう。ミスターエバンスは相変わらず人が悪いですね」


 心を捉えた言葉にルーカスは思わず顔を硬直させるが、アランの様子を見ると朗らかで、どうやらただの冗談らしかった。一息つく。


「私1人では帰路の勇士に敗北する可能性が高い、ということです。貴方は対人戦において無敗。これほど心強い味方はいません」


「……それはありがとう」


 照れくさいんだか微妙な気持ちになりながら視線を逸らしつつお礼を言う。


「いえ。だからこそ私はこの調査に手を挙げた。もちろん護衛は無しです。匿ってもらうなんて言えませんからね」


 どうやらアランは大きな賭けに出てここに辿りついたらしかった。


「聞くところによると帰路の勇士の仲間に勇士の資格を得た者がいるとか。勇士は2人死んでいるのです。有り得ない話でもありません。この情報は不明確ですが、湾曲の勇士もいるという話もあります。殲滅の勇士が生きていてミスターエバンスのところに辿り着いたのは幸運だったかもしれません。これも神のお導きですね」


「ああ、そうだな」


 ルーカスは神妙な顔を作って頷いた。

 なるほど3対3か。いや、ノアには他にも仲間がいるから正確にはその限りではない。この領地に所属する衛兵達にもこの旨を話して、準備だけでもさせた方がいいかもしれないな、とルーカスは思った。


「匿うという話、もちろん受けよう。友人の命が危機に瀕しているというのに、その願いを跳ね除けるほど俺は薄情じゃない」


 ついさっきまでアランのことを友人なんて一度も思ったことはなかったが、ルーカスは笑みを浮かべ、それこそ貴族らしく、そう言った。


「ありがとうございます」


 ルーカスはアランの顔を見るが、感動した様子はない。別にルーカスのことを信用しきっているわけではないらしい。この後話される条件について考えているのだろう。やりやすくて助かる。


「別に大したことじゃない。手の内を少しは明かしてくれってだけだ」






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