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「久しぶりですね。ミスターエバンス」


 とうとう追憶の勇士が訪ねてきた。


「ああ。久しぶりだな。神父殿」


「ええ、ええ。ミスターエバンスはあれから、きちんと信心深く日々励んでいますか?」


「……ああ!」


 ルーカスはにこりと口角を上げて、堂々と嘘をついた。


「神父殿が息災で何よりだ。それで用件なんだが」


「ええ、ええ。分かっていますよ?でもその前に聞かなければならないことがあります。神に仕える者として私はこのことを貴方に問わざるをえません」


 追憶の勇士の所属している国はそこまで信心深い国では無い。それに対して信心深さなんて欠片も感じなかった防護の勇士は教国所属だったというのは皮肉なものだ。

 そんなどうでもいいことを考えながら、ルーカスは追憶の勇士、アランにその問いの続きを言うよう促した。


「この国の女王と愛人、という噂です!ええ。もちろん私は信じていませんよ?友人である貴方がそんな汚らわしいことをしているなんて。しかし、よく広がっている噂であり、貴方はそれを否定もしない。何度も言うようですが、私はその噂を信じていません。しかし、万が一ということがあります。そのような行い、しておりませんよね?」


 お前と俺って友人だったのか。ルーカスはそう思ったが口を噤んでおいた。空気が読めるので。


「お前が心配するようなことはしていない」


「そうでしょう。安心しました。もしそこで否定しなければ貴方はたちまち罰を下されていたことでしょう」


「はあ」


 ルーカスはそもそも信心深い人間ではなかった。目の前に浮かぶおじいさまが信仰を真っ向から否定する存在であるからだろうか。それとも家がこういう家だからか。


「殲滅の勇士がこちらにいらっしゃるのですよね?」


「そうだ」


 客間に連れていく。実際今そこにいるかは分からないが、ネストはよく客間のソファでくつろいでいる。


「……」


 いた。


「こちらが殲滅の勇士様だ」


「……真実、ですよね?」


 アランが目を疑うように、腕で目を擦ってから言う。


「……。ネストは一体どんな状況だったんだ」


「私は現場を見ていませんが。胴と頭が離れた状態で飛ばされて行ったと聞いています」


 それは確かに殲滅の勇士が生きていないことを念押ししてくるわけだ、とルーカスは思った。


「その状況からどうやってここまで?」


「自分の罠にかかる罠師はいない。逆算すると、俺が仕掛けた罠に俺がかかるわけがない。って感じだ」


「はあ?」


 ネストの言葉にルーカスは困惑の声をあげ、アランは首を傾げる。


「いえ、待ってください。もしかして使ったんですか?私の魔法を」


「うむ。首って離れてても思考ができるんだな。初めての経験だった。何、俺は天才だ。頭と目さえあれば魔法は使える。それでお前の……なんだっけ?ルールブック?とやらを真似して使ってみたわけだ」


「は、はは。なんだそれは。凄まじいな」


 首と胴が離れていても生き返れるなんて聞いたこともない。ネストは自身のことを天才だとよく言っているが、言葉以上にそれは本当らしかった。


「いや。傷はこの通りふさがったが、爆風までは対応できなかった」


 謙遜までしてくる始末だ。


 しかしこれで、どうしてネストが死亡扱いになっているかがよく分かった。


「……」


「どうした?」


「口が開けないくらい驚いているんですよ」


 アランは考え込むようにまた黙り込んだ。


「まあ、それはそうだろう。心中お察しする。それで、そちらの国にはなんて報告をするんだ?」


 ルーカスはそれを見て、ひとまず同意しつつ、本題に切り込んだ。


「私の魔法は理屈も結果も伏せていて、それはもちろん国にもです。もちろんミスターレイアに対してもそうだったはずなのですが……」


「……ああ」


「私の魔法を模倣して助かったと言うならば、私の立場からは、やはりミスターキーストンは偽物だったと言うしかありません」


 ……。聖職者のくせに堂々と嘘をつくと明言したが、いいのか?これは。ルーカスは少しだけ口角を上げた。


「それで、これが真の本題なのですが……」


「?」


 さっきのが本題だったんじゃないのか。


「ミスターエバンス。私を匿ってもらえませんか?」






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