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「追憶の勇士が来るって!?」


 届いた手紙を見てルーカスは声を裏返して驚いた。


 再確認するように読み返す。どうやら、殲滅の勇士を騙る何者かを調べるために、追憶の勇士を派遣するらしかった。

 確かに、殲滅の勇士と追憶の勇士は所属している国は同じだ。だからと言って勇士を送り込んでくるほどか?ルーカスは首をひねる。もしかしたらルーカスを警戒してのことなのかもしれない。


 一応追憶の勇士とは既知であるし、そういうこともあるか、ととりあえずは納得することにした。


「殲滅の勇士ですら持て余しているのに、さらに追憶の勇士まで?」


 手紙を覗き込んでいるメイドが不躾にそんなことを言った。いつも通りなので黙認した。


「まあ……逆に俺の仕事も減るかもしれないから……」


 追憶の勇士のことを思い出しながらそんなことを言った。追憶の勇士は、なかなか癖の強い男だ。国が国なので、そんなに権力は無いとはいえ、そこそこ立場の高い聖職者で、ルーカスとの仲はそんなに悪くはないが、使用人達からの評判は最悪だった。


 殲滅の勇士は女性の使用人をよく下手くそな文句で口説いているらしく、あまり好かれていないが、男性の使用人からの評判は結構良いらしかった。その情報だけ見ると追憶の勇士の方がロクでもない人間ということだが……それをルーカスは否定しきれない。


 ただ、2人とも無闇な人殺しはせず、国に所属できるくらいの良識はあるという点で、他の勇士達よりかは幾分マシに見えた。


 追憶の勇士と殲滅の勇士の仲が良好なことを祈るばかりだ。


「追憶の勇士ってどんな人なんですか?旦那様、1回この御屋敷に招いてましたよね?私、あの時いなかったので」


「あー……」


 そういえばルーカスが女王様に手紙を届けるために、使っているのはこの女だ。ちょうど出払っている時だったのか。


「まあ敬遠な信徒という感じだろうか。表面上の付き合いなら、そんなに悪いやつでもない」


「棘のある言い方ですね」


「そりゃあな。とんだ差別主義者で選民主義者。他人に厳しくて自分に甘い。自分こそが清廉潔白で、選ばれた人間だと本気で思い込んでいる……って感じの男だ」


 友達にはなりたくないが、会話ができないタイプではない。


「はあ……。なぜそんな方が勇士に?」


「……ふむ」


 言われてみれば確かにそうだ。宗教家らしく殺傷を嫌う性格だったと記憶しているが、魔物を殺せるのか?

 追憶の勇士は今までの勇士の記録でも該当者はいない。この称号を得るための条件は分からなかった。


「何、アランも来るのか?」


 後ろから声が聞こえる。振り向くと、殲滅の勇士……ネストが立っていた。


「そうだ。俺が法螺を吹かしたとでも思われたのだろう。面倒な話だが……もしかして追憶の勇士と仲がいいのか?」


 ルーカスはネストの問いに同意して、そのまま説明をした。


 ファーストネームで呼ぶというのはそこそこ仲が良くないとありえない、とルーカスは思っている。

 実際のところ、国が違えば文化も違うし、この国であっても平民にはファミリーネームがないのでファーストネームで呼ばざるをえないのだが、ルーカスはそこのところがいまいちピンと来ていなかった。


「は?お前との方がまだ仲いいぞ、俺は」


「そ、そうか」


 食い気味に否定されてルーカスは少したじろいだ。

 正直、ネストはルーカスにとって、かなり付き合いやすい男だった。感情が分かりやすいし、何よりルーカスが面倒がってネストを無視しても気を落とす様子がない。ルーカスが少し弱い面を見せてもそれを追求してくることもない。

 腹を探り合う貴族や、自分の言葉に一喜一憂する配下との会話に慣れきっているルーカスにとっては、非常に新鮮で気安い関係と言えた。


「配下達に魔法を教えてくれていると聞いている。礼を言おう」


「ああ、……そんなこともしたっけ。気にすんな。俺がしたくてしたことだ」


 フードを被り直しながら、ネストはそう答えた。








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