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「これが俺の魔法の威力だ」


「そ、そうか」


ネストは山を吹き飛ばすどころか、大きいクレーターを作った。ルーカスはその光景を目の当たりにして頬を引き攣らせた。


「どうだ?俺は使えるだろ?」


「……そうだな」


威力が高すぎて使い所をすぐに思いつけないが、可能性は感じた。とりあえずで山の生態系全てを消した凄まじさにルーカスは絶句することしかできない。


「ネスト、お前を殲滅の勇士だと認めよう。お前の国にも手紙は出しておく」


「そうかそうか!切断の勇士は話の分かるやつだな!」


ネストが口を大きく開いて笑いながら、ルーカスの背中をバシバシ叩く。フードは取っているが、確かに目の覚めるような美青年だ。表情からはその男のプライドの高さが読み取れる。

予想外があったとすれば、思ったよりもずっと話が通じそうだということだろう。


「前のお前には散々ボコされたからな……」


「前?」


ルーカスにネストをボコした記憶はなかった。というかそもそも会ったこともない。


「……お前も覚えていないのか」


「……」


もしかしてループ前の記憶とやらだろうか。この男にはおじいさまも見えているようだったし、そういうこともあるのかもしれない。


「いや、概要は知っている。帰路の勇士が1回時間を戻したんだろう?俺は帰路の勇士と話す機会があったからな」


「は?じゃあなんでその時殺さなかったんだ?お前なら殺れただろ?」


何故帰路の勇士に対して殺意が高いのか理由を言って欲しい。これが会話が通じないということか、とため息をつきたくなった。


「……。この世界には生き残るべき人間とそうでない人間がいる。生きていた方がメリットが高いか、殺した方がメリットが高いか、それだけの話だ。帰路の勇士の現在の目的は同時期に勇士になった者の抹殺だろう?魔王が立つ前に勇士になった連中なんぞ人間としてろくでなしばかりだからな。別に死んでもいいだろう。勇士の追加はいくらでもある。帰路の勇士の能力、あれは面白いぞ?過去への遡行能力だけでもお釣りが来るが、精神にも干渉できるらしい。なんなら女神とも会話ができるようだ!……すまない、少し取り乱した。だが、これってすごいことじゃないか?」


ルーカスは自身の考えが人に受け入れられがたいものだとよく自覚しているので、懇切丁寧に説明した。


「……。……。……反応に困る」


ネストが片眉を上げてそう言った。


「ほら、俺は殺さなかった理由を言ってやったぞ。お前も言ってみろ、俺がアイツを殺さなくてはいけない理由を」


「俺達の命を狙っている以上の理由が必要か?」


「必要無いな」


普通だった。自己を守ろうとするのは生物として当然のことだ。


「しっかし、あんなに恨まなくてもいいのにな?ちょっと魔法で巻き込んだだけじゃないか。それも俺が魔法を撃つ先にいたあいつが悪いしな!」


「そ、そうだな?」


今度はルーカスが反応に困る番だった。


「そう言えば、最近市場に魚が出回っているが、あれはお前がやったものか?」


「ん?ああ、そうだ。魚がたくさん手に入る機会があってな、せっかくだから持っていけと俺が凍らせてやった」


ルーカスは話を変えることにして、魚の話をすると、それを行ったのはネストだったようだ。


ほとんど記録に残らない殲滅の勇士なんて物騒な称号を持ち、話が通じないだのなんだの言われていた男では想像できなかったが、どうやら細かい魔法も扱えるらしい。


「そうか!そりゃあすごいな。また同じことをやってもらえないか?魚はこの辺りでは貴重でな」


「は?なんで俺がそんなことをしなきゃいけないんだ!?」


ネストの顔が怒りに歪む。

それを見てルーカスは確かにそうだなと思った。


「そ、そうだな。もちろんミスタ……ネストがそんなことをする必要は無い。そもそも魔物討伐で忙しいだろうしな。ああ、そうだよな?無理を言ってすまなかった」


「……いや、いい。それよりお前の屋敷に連れて行ってくれ」


「もちろんだ」




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