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「俺は殲滅の勇士、ネスト・レイアだ」


 黒い外套の男が変わらない表情で告げる。


「……。殲滅の勇士?死んだはずでは」


 もしかしてノアに嘘をつかれたのだろうか。それともこの、ネストという男が嘘をついている?

 レイア。聞き覚えはない。殲滅の勇士と言うならそもそもこの国の人間ではない。しかし名字があるなら平民ではないということか。


 ルーカスは名乗ろうか一瞬迷うが、お忍び中に身分を明かすのはあまり褒められたことでは無いな、と名乗るのを辞めた。


「は?俺は死んだことになっているのか?」


「知りませんよ」


 殲滅の勇士が倒された、とノアから聞かされただけだ。もしかして倒しただけで殺していないのか?


「それで、ミスターレイア」


「ネストでいい」


「……ネスト。どうしてここに?殲滅の勇士の本拠地からは随分遠いはずですが」


 とりあえず目の前の男が殲滅の勇士ということにして話を進めることにした。

 しっかり見れば噂通り男前な気もする。フードを被っていてよく見えないが。


「そ、そうなのか!?」


「そうですね。馬車で3ヶ月はかかるかと」


「さ、3ヶ月……もしかして俺は道を間違えたのか!?」


「……」


 何がなんやらさっぱり分からないので、一息ついて、ルーカスは改めて考えることにした。そう、話を最初に戻そう、と。


「私は貴方がノア……帰路の勇士に倒されたと聞いていたのですがね」


「ああ、そんなことになってるのか。まあ、そうなるか?俺は帰路の勇士に嵌められて自分でしかけた罠に引っかかり飛ばされるという醜態を晒したが」


「どこまで飛ばされたんですか?」


「リレーヌとか行ったかな」


「ああ、じゃあ一応近づいてますよ、貴方の国に」


 ルーカスが想定していたよりずっと遠い場所だった。そんな長い距離を飛ばされて何故この男は平気なんだ?


「そうか!良かったぞ。行商人に都合の良い護衛として騙されていたのではと考えていた。俺に恥をかかせた男には制裁を加えねばならんと思っていたところだ」


「そうですか」


 これでとりあえずこんがらがっていた会話は全て解読できただろうか、ルーカスは首を捻る。


「貴方は殲滅の勇士なんですよね。あの山を消すことは、できますか?」


「は?なんでこの俺がそんなことを」


「私は未だ貴方が殲滅の勇士であることを疑っております。証明してくれませんか?できますよね?」


「……。ふん。そりゃできるが、それをして俺になんの得がある?」


 ルーカスは思わず舌打ちしたくなるのをこらえた。山を消すというのはさすがに冗談だが、聞いていた以上にプライドが高い。ルーカスを見るやいなや魔法を打ってこないだけまだ平静ではあるが。


「もちろん、殲滅の勇士様としての待遇をさせていただきます。具体的には、領主様の御屋敷にお招きいたします。しばらくの滞在を許可していただけると思いますよ」


「……。知っているぞ。ここの領主は切断の勇士だ。お前は切断の勇士ではないのだろう?どうしてそのお前がそこまで具体的なプランを話せる?」


 フード越しでも分かるくらい口角を上げてネストが問い詰めてくる。


「チッ」


 ルーカスは耐えきれず舌打ちをする。今はそんなことはどうでもいいだろうに、建前の分からぬやつめ。頭がいいと聞いていたが、そうでもないのか?そこまで考えてルーカスは自身が平静を崩されていることに気づき、ため息をつく。自分も大概人のことを言えないようだ。


「はあ……めんどくさいな、お前。使えなかったら承知しないからな。俺はルーカス・エバンス、この土地の領主にして、辺境伯だ。そこら辺の商人に聞けば確認が取れるだろうさ」


「よろしく、ルーカス」


 ネストが軽く笑いながら握手を求めてきた。ルーカスはため息をつきながらそれに応えた。





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