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どうやらロアが前に立ち、サリエリの猛攻に耐えきったらしい。傷だらけになっている。
「みっともないね、刺突の勇士」
今まで何もしていなかったノアが前に出てきて、そんなことを言う。
「無辜の民まで殺そうとするなんて!」
飛ばされた後、立て直したらしいルナが防御魔法で無数の棘から市民達を守っていたようだ。
それを見ながらノアが口角を限界まで釣り上げて笑う。
「聞いていたか、見ていたか女神様!勇士は魔族を殺し人民を守るべき存在だ。勇士という称号はこの女に相応しくないだろ!?」
上を見ながら、ノアは何かに訴えかけている。
「!?」
サリエリが驚愕の表情を見せる。
ルナ達、つまりノアの仲間達がそれを見てそれぞれ笑みを浮かべている。
「えーと、どういうことでしょう」
1人蚊帳の外なルーカスはおじいさまを素直に頼ることにした。
『勇士の資格が剥奪された』
おじいさまは不機嫌そうにそう言った。
「そういうことがあるんですか?」
『さあな。我にあいつの考えていることなど分からんよ。ただ帰路の勇士に肩入れしているみたいだな。お前も勇士の資格には頼らない方が良い』
「分かりました」
ルーカスはひとまずそのことについて考えるのをやめ、またぼんやりと戦況を眺めることにした。
「どうして誰も私の言うことをきいてくてないの!?お兄様は私の書庫を勝手に燃やして!お母様もそう。私を勝手に結婚させようとしたの!……。刺されて当然だわ。私も殺す権利、あったよね?ええ、そのはずよ」
サリエリは顔に手を当てながらブツブツと何かを呟いている。
「貫け!」
そのまま手をかざしてノアの方に矢のような棘を降りそそがせる。勢いは変わらないが、以前と違い精度が格段に低い。
「『反射』」
ルナの魔法により、矢は全て跳ね返された。
ロアが腕を構えながら近づいていく。
「あはははは!お前はもう勇士じゃないから僕達には敵わない。さっさと逃げたら?死んじゃうよ?」
「……」
サリエリは下を向いたままノアに背を向け、離れるように歩いていく。
「ううっ、可愛いベン。なんで私を残して死んだの……」
そのままノア達から見えないところでまた新たに呪詛を打とうと準備をしているのをルーカスはしっかり見ていた。
「さすがに市民を巻き込む程の正当性はないと思うんだが、どう思う?」
ルーカスは公平性を示すためにサリエリの目につくところまで出てきて、いかにも真っ当な大人のフリをして話しかけた。
「……。知らないわ。だって私には関係ないもの」
憔悴しきった顔を向けてくる。もう捨ておいても勝手に死んでいくだろうことは想像に難くなかった。
「そうか。じゃあまあ、しょうがないか」
その様子を見たルーカスは子供のように、楽しげに笑った。
そしてそのままサリエリの首を刎ねた。
▫
『お前は優しいよな』
「へ?」
ノア達と別れた後、1人で気分転換に歩いていると、おじいさまから予想外のことを言われ、ルーカスは思わず困惑の声を漏らした。
『あの復讐者共は結局甘ったれのガキだったということだ。復讐を騙るくせに自分の手を汚したくないとはな。お前は最後の仕事を背負ってやったんだろう?』
「……どうですかね」




