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「殴打の勇士というのはどのような人物なんだ?」
「……なんで?」
「いや、お前は詳しそうだと思ってな。俺も勇士の1人となったことだし、連携は取っておきたい。こう、少し仲間意識のようなものがあるのかもしれないな」
「……はあ?」
ノアが顔を歪めて何を言っているんだお前はという顔をしてきたので、ルーカスは少し傷ついた。ノアが勇士を嫌っていることはよく知っているが、やはりルーカスがなにかをやったのかもしれない。全く思い出せないが。
「俺が目をつけているのは殲滅の勇士だ……破壊力に関して言えば最強と言えるのではないか?まあ最強の定義が人によって違うのは重々承知しているが」
ルーカスは有能な者が好きだし、優遇するが、それとは別に強者も好きだった。優遇はしないが、好感度は高い。
「はあ、僕が今まで会ってきた上で1番強いのはお前だよ。……殲滅の勇士は僕が倒した」
ノアが呆れたように首を振りつつ、ため息をつきながらそう言った。
その言葉にルーカスは思わず目を見開く。
「そ、うか。そういうこともあるのか。そうか……」
どうやら自身は思った以上に他国の情報に詳しくないようだ、ルーカスはそう思った。勇士が1人消えたなど、国の弱みを晒すも同然なので情報統制があって然るべきだが、驚いて動揺していたルーカスはすぐには思い至らなかった。
「その理不尽な強さはどうやって手に入れたんだ?僕はそれが気になるな。それを教えてくれたら殴打の勇士の特徴も教えてやる」
動揺したルーカスを見て溜飲を下げたのか、口角を上げたノアが、挑戦的な表情でルーカスにそう提案した。
「俺の強さ?俺は生まれた時から強かった。いや、そういう話ではないか。そうだな、あえて言うなら強くなるよう【交配を繰り返して生まれてきたのが俺だった】。と言ったところか」
「どういうこと?」
「俺の一族は代々研究を志していてな。まあそれも代を重ねるごとに形骸化していたが、1つだけ分かりやすい理念が残っていた。血の強さを証明する。要は強く賢い者を掛け合わせ続けることで、優秀な人間を作ろうってことだな。そしてその研究はある側面から見れば正しく、俺は生まれながらの強者だった」
「それは……予想外の答えだな」
ノアがルーカスに強さの理由を聞いたのは、体格が近かったからというのが大きい。参考にできるところがあるかと聞いてみたが、返ってきた返答は全く参考にならなかった。
「俺の話はもういいだろう。殴打の勇士の話をして欲しい。できれば殲滅の勇士の話もだ」
ルーカスはこれ以上話を続けたくない、という様子で話を終わらせた。
「そうだね、殴打の勇士はとにかく大きい。勇士の中で1番背が高く、1番力も強かった。生まれながらの強者ってどちらかと言うとそういうイメージなんだけど……まあいいや」
殴打とつくくらいだ、体格が大きいのも必然だろう、とルーカスは頷いた。
「性格は、臆病だったね。依存体質で繊細。そして怒ると手がつけられない」
「なかなか面白そうだな」
上手くやれば利用価値が高そうだな、とルーカスは思った。
「……。まあお前はそう言うか。いつも僕が殴られているのを楽しんで見ている節があったしな」
「ん?」
「いやこっちの話だよ」
ノアが小さな声で言った言葉をルーカスは聞き逃していなかった。しかし、聞いてはいけないことだと判断し、とりあえずとぼけることにした。
「おじいさま」
おじいさまならなにか知っているかもしれないと思い、判断を仰ぐことにした。
『はあ……。ノアと言ったか?詰めの甘い子どもだな、仕方ない。後で説明してやろう』
「ありがとうございます」
ルーカスもまた、おじいさまとの会話を小声で終えた。
「殲滅の勇士はどのような感じだったんだ?」
「一言で言えば、頭のおかしい男だった。見た目はどこぞの貴族と言っても通じるほど洗練されていたが、まるで会話が通じない。目が合うやいなや、高火力の魔法を打ち込まれた」
「ふむ、聞いていた通りだな」
実は殲滅の勇士の知り合いと言っていた、露店の店主にあの後話を聞いていたのだった。
その店主が言っていた人物像と一致する。
見た目は背の高いイケメン。プライドが高く、他人を見下していて話を聞かない。人間相手に開拓用の魔法を打ち込むことに躊躇が一切ない。頭の回転が速すぎて答えを説明する前に出力して行動する。
「1回会って話してみたかったんだが、仕方がないか……」




