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 オズワルドは人より体が大きいだけの普通の少年だった。


 ただ住んでいた村が国境沿いに会っただけ。

 大きな戦争に巻き込まれて、オズワルド以外のほとんどの住人が殺された。


 そして教会の孤児院に入れられた。


 それだけの話だ。


 ……。

 …………本当にそれだけだったか?



 ▫



「ぐっ、うあ゛あぁあああああああ!!」


 オズワルドが頭を抱えて苦痛に耐えるように叫んでいる。


「【ヒール】」


「……」


 ノアの隣にいた修道女らしき女が回復魔法を使うと、オズワルドは苦痛は残っているようだが少し冷静を取り戻した。


「大袈裟だなぁ」


 ノアがとぼけたように首を傾げる。

 オズワルドがそれを見て口を開く。


「……お前は無造作に積み上がった死体を見たことがあるか?邪魔だからと言って、だ。まるで物みたいに。光を失い濁った目に見つけられたことがあるか?昨日まで俺が遊ぶのを穏やかに見つめていた隣の家の女の目だ!逃げ惑う俺の村の住人達が、俺の親戚達が絶望の顔で為す術もなく倒れていく……ああ、嫌なもん思い出させやがって……!」


「ないよ」


「そうだろうな。あんなもん、知っているのは俺だけでいい」


 ため息をつく。オズワルドは完全に平静を取り戻したようだった。


「そのために魔族を減らしてきたんだ。あんなやつら停戦とか言って、絶対反故にするのが目に見えていたからな。実際今はどうだ?俺の思った通り、人間の縄張りを侵しに来ているだろ!?」


 口元に笑みを浮かべながら、やはり落ち着かない様子で慟哭した。


「分かったよ。分かったからさ……。で、なんでお前は今刑に処されようとしてるか分かってる?」

「分かっている」

「そうかい?そりゃ良かった」


 ノアは皮肉げに笑った。


「結局さ、大切なのは今なんだよ。過去にどれだけ酷いことがあったって、今現在何をやってもいいわけじゃない。あはは、それは僕にも言えるか」

「いいえ、ノア様がやっている行動は正義です」


 修道女のような女がノアの自虐を否定し、行動を肯定する。


「そう?ルナが言うならそうなのかも」


 欠片も思っていなさそうな様子で、ニヤニヤと笑うように口角を歪めた。


「お前が僕に何をやったかなんて論じるつもりはないよ。だって過去どころか、それはもうどこにも存在しないんだから。でも僕は忘れないし、お前を許すつもりもない。だからお前の処刑に協力するんだ。まあ協力する相手がちょっと嫌だけどね」


「はあ?……覚えがないぞ。お前は確かに見た目は良いが、それだけだ。中身が良くない。もっと力のない弱く、依存するような儚さがないと……」


 そしてあるはずのない記憶を掘り起こそうとオズワルドは首を振った。


「気色悪いですね。ノア様。さっさと終わらせましょう」


「まあ待ちなよルナ。こいつはきちんと正規の手段で始末する。そう切断の勇士と約束しただろ?その方がより屈辱的だからってさ。ルーカスのやつ、酒場の時にこの男を殺せたはずなのに、見逃したんだ。僕のためでもあるらしい。……それはそれでなんか気持ち悪いな。でもせっかくのご好意なんだから、無下にするわけにもいかないよね?」


「ノア様がそう言うなら」


「俺が処刑される?馬鹿も休み休み言え。俺は教国の聖騎士、魔族退治の大英雄だぞ?国から抗議の使者が来るんだ。俺がなんでこんなに呑気にしていられると思ってる?」


「あはは、さっきの狼狽は見なかったことにする感じ?いいと思うよ、みっともなくて」


 ノアがそう言うと、侮辱されたオズワルドは剣を再び構えた。今度はさすがに相手を舐めていない。大盾も手に持っている。



 ▫



「おじいさま、どうです?中、見えますか?」


 家の様子をつまらなさそうに見ていたルーカスは、ついに耐えきれずに、そう聞いた。


『見えるが……帰路の勇士の力がちとよく分からんな』

「そうですか……分かれば今後に活かせたんですが、仕方ありませんね」


 仰向けで寝転がる。


「それでお前はどうしてそこにいるんだ?湾曲の勇士。性懲りも無く俺を殺しに来たのか?」

「はは、そんなわけないでしょ。もう諦めたよ」


 口調がいつもと違う。いや、盗賊団を殲滅した時に少し見せたあの口調だった。

 ルーカスは驚き、いつもはつまらなさそうに伏せ気味な目を、少しだけ見開いた。


「ほら、防護の勇士のやつって信望者も多いでしょ?助けに来るかもしれないから、私はそれを止めてろってノアくんがね。全く、人使いが荒いんだから〜」


 そう言いながら顔を赤くしてモジモジしている湾曲の勇士、エマに、ルーカスは困惑の目を向けた。


「ま、まあそういうこともあるよな?で、その仲間ってやつはこれか?」


 ルーカスは木の後ろから首を引っ張り出してきて、見せながら聞いた。襲って来たので、すぐ長剣で切ったのだ。


「……やっぱり強いね、君」


 エマが顔を硬直させながらそう言った。






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