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第5話 ラブコメ殺し

「あっ、メリーちゃんから、連絡来てる〜」

「メリーから?」

「うん。えーとね……『まだ、ターゲット見つかんないんで、今日は帰れないっす!』だって」

「あいつも大変そうだな。じゃあ、飯食っちゃうかー」



 『メリー』 この女は、俺と同じ仕事をしてる。いわば、同僚って奴だ。


 俺たちの仕事は、簡単に言えば殺し屋。

 素人とか、玄人とか関係なく、web小説ってのは、誰でも書ける。その分削除された作品を多いだろ?

 俺たちは、作者(かみ)が依頼してきたその作品を消すってことだ。

 

 だが、作品を消すってのも、そんな簡単なことじゃない。

 まず、作者が作品の削除ボタンを押すと、こちらに依頼が来る。ちなみにだが、作品のジャンルによって、各々に合った依頼が入ってくる。

 

 例えば、俺はラブコメ。メリーは異世界、ファンタジーだ。クノンによると、他のジャンルの担当とか、俺と同じラブコメの担当も別世界に居るらしい。

 気にはなるが、メリーとクノンを見るに、おそらくこの仕事に、まともな奴なんていないだろうし、絶対に会いたくない。

 

 それじゃあ、俺にラブコメの依頼が来たとする。そうすると、クノンの扉を介して、依頼された作品の世界に入れるようになるってことだ。

 

 外からは無理でも、中からぶっ壊す──殺し屋って言葉を見れば分かるだろうが、主人公とヒロインを殺して、その世界を消滅させる。

 ただ、この消滅する基準は少し難しいんだ。そのジャンルにおいて、居ないと物語として成立しない者を殺す。

 俺が担当するラブコメの世界だと、主人公とヒロイン。これにあたる人物を殺せば、世界が勝手に消滅する。

 しかし、メリーが担当する異世界、ファンタジーだと、主人公以外明確な主要人物ってのが分からない。

 その為。作品のよっては、主人公を殺しただけで、消滅したり。はたまた、何十万人と殺し回っても、終わらない時があるそうだ。

 その作品の作風や、作品がどこまで進んだ上で削除されたのかも、重要ってことだな。

 

 ここまで説明して分かるだろ?

 この仕事の大変さってもんが……他にも、この仕事で重要な問題があったりするが、また追々ってことで……



ちょっとした愚痴なんだが……


 この世界には、メリーと俺とクノンの3人しかいないため、家事はいつも役割分担でやると、最初にみんなで決めた──はずなんだ。

 ──それなのに、クノンはろくに働かないし、メリーは、やる時間が無いし、家事が絶望的に出来ない。まだ、やらない方がマシなぐらい。

 なので、家事全般は俺が担当している。『俺がやるよ』と言った当初は、魔王を倒した勇者のような扱いだったけど。最近は、ただの雑用係みたいな扱いだ。



「僕は、ドーナツ食べたーい!」

「お前のなかで、ドーナツって夜食扱いなの?」


 まず。一般男性が、ドーナツを作れる前提で、話が進んでんのがおかしいし、ドーナツを夜食に食うなんてデブでもしないって……。

 

「さっき、ミ◯ドのCM見て、食べたくなっちゃったんだもん!」

「お前は、三次元に行けんだから、自分で買ってこいよ!」

「だ る い の!」


 ほら、こいつとの会話を聞いて、分かったと思うけど。

 本当に、俺が来るまではどうやって生きてたのか分からないレベルで、クノンとメリーは生活能力が無い。

 多分ニートと同等か、それ以上に生活能力が無いと思う。


「聞いてるサトウくん? 僕のドーナツ作って〜!」



 なんか後ろで、虫が騒いでるが、とりあえず炒飯でも作ろうかな。

 炒飯は、俺の得意料理の一つでもあるんだ。誰でも簡単に作れるが、贔屓目なしで俺の手作り炒飯は美味いと思ってる。


「ねぇねぇ。多分聞こえてるよね? 僕は、いちご系が良いな〜。無理なら、ポ◯デリ◯グでも良いよ?」


 なんで、妥協して難易度が上がるんだよ……

 

 こういう時は、無視するのが1番なんでが、思わず心で、ツッコミを入れてしまった。

 集中力を上げるために、両手で頬をパチンッ!と叩き、料理に取り掛かる。

 

 今は文句を言ってるが、いつも料理を出せば黙るので、無視をするのが一番だ。


 じゃあ、料理をしながら、メリーの簡単な素性でも解説しようかな。




 メリーは──身長は大体150ちょっと上ぐらい?の女だ。巨乳好きには悪いが、クノンとお揃いで、胸はまな板。

 

 髪は銀色で、左前髪に青のメッシュを入れてる。長さは短めで、ウルフカットって奴だった気がする。

 鼻より上だけを隠す、穴の空いた黒のマスクみたいなのを毎日付けてる。

 瞳の色は、うろ覚えなんだが、許してほしい。確か…左が藍色で、右が空色だ。

 

 なにせマスクの話になると、舌打ちして機嫌が悪くなるので、クノンによると、マスクに触れるのは『暗黙のルール』で禁止らしい。だから必然的に眼の話もできない訳だ。

 

 まぁ、◯◯っす!とか痛すぎる語尾使うし、多分だけど厨n──時間をかけて治すしかない…原因不明の病だから、オッドアイも偽物の可能性が高いと思ってる。

 もし偽物なら、なんで色味を似せたのかは謎だけど。


 いや、メリーが考えてる事なんて、理解する方がバカだな。



 そう。相も変わらず、こいつも見た目良いくせに中身がイカれちゃってる。しかも、クノンとは比べ物にならないレベルでだ。


 本当に、見た目だけでいえばラノベのメインヒロイン級なんだが……肝心の中身がラスボスより残虐非道なんだよ。



 まぁ、それでも1人しかいない。俺の大切な仲間なわけで、しょっちゅう喧嘩はするがまあまあ仲は良い……と思う。

 


 

☆☆☆




 炒飯を食べ終わる頃には、案の定というべきか、クノンもドーナツの話は忘れて、満足気に寝室へ入っていった。

 

 俺も炒飯を食べ終わり。食器を洗う。

 さて、家事も終わらせたので、今日のところは寝ようか──「依頼が入ったぞー!」


 今1番耳に入れたくなかった声と言葉が聞こえたが、気のせいだろう。気のせいであって欲しい。


「はいはーい!鈍感主人公の真似してないで、依頼来てるよ〜」

「断ったりは……」

「出来ると思うなら、してみれば?」


 昔は社畜のことバカにしてたけど、今は尊敬の念しかねぇぜ……


「はぁ…行ってきます」

「行ってらっしゃ〜い!」




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