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第3話 いつも通りの日常3


 俺は、健二との話が終わり、雫と合流した。せっかくの旅館での豪華な夜食も、緊張と照れ臭さで、頭が爆発しそうになり味が分からなかった。

 

 これでも、前までと比べて恋愛力的なのが少しでも上がったと思ってたんだが、そんな事も無かったようだ。



 それでも……健二と約束したんだ。

 胃がズキズキと痛むが、しょうがない。俺は、そう心で呟いて割り切り、雫に声をかける。


「いっ、今からさぁ……ちょっと外に行きませんか?」

「え?」



──失敗した。最初ちょっと甘噛みしてるし、最後は何故か敬語で問いかけてるし。

 ごめん健二。やっぱり陰キャには無理かもー!!


 

「えっと、海にある展望台が、夜だと綺麗で有名らしくて一緒に見たいなぁ。なんて……」


 本当は、向かう時に『場所は秘密だよ』とかキザなセリフを言う作戦だったのに。

 ごめん健二。(2回目) 雫との気まずい空気をどうにかしようと全部を話してしまった。


「うん。もちろん良いよ!」

「──本当に良いの?」

「なんか、緊張して損しちゃったじゃん……告白かと思っちゃった……」

「え?」

「なんでもないよーだ!ほら、見に行くなら早く行こっ!」








☆☆☆




──時間は午後11時を回っている。




『女子が好きな告白と言ったら、ロマンチックな場所で、するんだよ』

『ちゃんと、相手の目を見て話せ。自分の気持ちだけを伝えて、はい終わり……なんて馬鹿げたことすんなよ?』

『最初は緊張するだろうが、そんなの俺だってそうだ。みんな最初は緊張するもんだよ。でも、それでも、俺はお前なら出来るって思ってるんだよ』


──頑張れよ親友。






「綺麗だね」

「あぁ、綺麗だ」


君の方が綺麗だよ。なんてキザな台詞を言う勇気なんて、俺にはない。




「私ね。一目惚れだったの」


 そう言って、先の見えない海を背に、微笑む雫は、灯りのない展望台を照らすように輝いて見えた。

 そんな彼女に見惚れて、言葉を失っている俺を見て雫は言葉を続ける。


「少女漫画とかでさ、《運命の人》は……見た瞬間に。こう、『あっ、この人のことが好きだ!』って、分かるって知って、それを君を見て感じたんだ」


 雫の言葉に何も応えられない。

 最初からずっとそうだった。雫から好意を向けられても、俺はその好意に甘えて何も伝えてない。


今もそうだ。肝心の言葉が口から出ない。

 

 あぁ、本当に自分が情けなくて笑えもしない。雫が俺を好きなのはもう分かっているのに。まだ、雫が嘘を吐いているんじゃないかと、思ってしまう自分が、ダサくて、情けなくてしょうがない。


 コツンッ、コツンッ、と靴の音が聞こえる。俯いた俺に雫が身を寄せて来る。


「龍くんは、すぐに自分を卑下するよね」

「……!」


 まるで、俺の心の気持ちに応えるように呟き、俺を包み込むように、抱きしめる。


「でも、俺には……」


 俺には、好きになられるような理由なんて…


「あるよ。私は、貴方だから……須賀龍太くんだから好きになった」


 でも、俺よりも……優しいやつだって。イケメンなやつだって。頭が良いやつだって。世の中には、俺よりも、君に相応しい人が。


「それを決め付けるのは、あなたでも、君が思うような、私に相応しい人でもない。私が決めることだよ。」


 雫が、俯いた俺の顔を掴み、強引に視線を合わせる。



「私は、あなたに一目惚れをしました!」


 それは、ちょうど1ヶ月前にも聞いた言葉だ。


「私と、結婚を前提に『本当』の恋人として付き合ってください!」


 雫が、勇気を出してくれた。あぁ、本当にカッコ悪いよなぁ……先に告白されて、結局、雫に甘えてるじゃないか。



 勇気を出せ須賀龍太。

 陰キャだから、コミュ症だから、相手が美少女だから、なんて言い訳して逃げるな。自分の気持ちを雫に伝えるんだ。


「俺は最初、勘違いしてた」

「うん……」

「俺みたいな陰キャに告白するなんて、罰ゲームか何かだろう。って、そう思ってた」


「でも、今は違う!」


 雫の手を取り、顔を上げて目を合わせる。



俺は……



「俺は雫のことがっ────」『パンッ!』








 俺の告白は、乾いた破裂音によって、掻き消された。

 ドサッ…と、まるで充電が切れたように、自分の胸にもたれかかった、大切な人の姿に言葉がでない。

 

 脳が理解を拒んでいる。


 頭から、ドス黒い液体が流れ続け、俺の胸を濡らしている。


 暗い視界でも、その液体が何なのかが、嫌でも分かってしまう。

 


 足音が聞こえる。

 


 自分が逃げられない恐怖と、何も出来ない無力感と虚しさに絶望する。

 

 

 足音が近づいてきている。



 なのに、足がすくみ体が言うことを聞かない。

 目から涙が溢れて、頬をつたい言葉にならない嗚咽を繰り返すことしかできない。力が抜けていき、へたり込む。

 

 

 この暗黒の世界で、近づいてくる足音の人物を月の光が照らす。

 



 

 涙でブレる視界のなか、その人物は、俺の目の前で足を止めた。




「よう、おはよう。──な〜んて、もうすぐおやすみだけどな」



「なっ、ん……で」



 しゃがんで、俺の顔の前に銃を突きつける。

 その人物を見て、俺は戦慄する。

 

 絶対にありえない。

 

 ありえないのに、俺を見るその男の顔に見覚えがある。

 いや、見覚えどころじゃない。陰キャの俺に、唯一出来た1番信頼する人。



「こっちの気持ちも、考えてくれよ。吐き気のする絵を一生見せられて最悪だったぜ」



 学校で毎日見てきた。その笑顔を浮かべた『親友』の顔。

 

 

「けんっ……じ」


「じゃ、おやすみ。主人公くん」



『パンッ』と、破裂したような乾いた音は、波の音と共に海の中へと消えていった。

 


完全にその場の思いつきで書いたし、書くの遅いけど、いつか続きを書きたいなぁ〜

評価や感想をくれると、作者の気持ちが天に届いて、きっと良いことが起こりますよ。


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