セレナの本
午後になり、私は一人で鍛錬に励んでいた。
何故かと言うと、お父様とお母様は冒険者の仕事をしに行ってしまったからだ。
お父様とお母様はCランク冒険者だ。
Cランクと言ったら、一つの国に数百人程度しかおらず、待遇もよく、報酬も良い。
そのため、Cランクになるためにはかなりの実力が求められる。
そんなCランク冒険者であるお父様とお母様はかなり忙しく、午後は仕事に行くことが多い。
そんなわけで師がいなくなった私は腕に集中強化を施し、無心で素振りを行っていた。
集中強化を使用して剣を振ると、斬撃が飛んでいく。
その飛距離は庭の大きさを越えており、斬撃は家の塀を穿つ。
当たる度に少しずつ抉れていくが、お父様は問題ないと言っていたので剣を振り続けている。
そうしていると、隣で水魔法の練習をしていたセレナお姉様がこちらに来る。
「アニス、鍛錬の休憩にお茶でもしない?」
「は、はい、セレナお姉様」
私が返事をすると、セレナお姉様はすぐに家の中に入ってお茶の準備を開始する。
私もそれに倣い、一緒に準備をした。
二人分のお茶とお茶菓子を用意すると、早速セレナお姉様が口火を切る。
「アニス、あなたに読ませたい本があるの。アニスは剣が好きなのでしょう?」
「はい!大好きです!」
「フフフ、そんなアニスにこの本を読んで欲しいの」
そう言うとセレナお姉様は何処からか一冊の本を取り出した。
かなり皺があり、何度も読み返された事が容易にわかる。
本の表紙には『救世の賢者、創世の勇者』と書いてある。
「この本はね、私がアニスよりも小さい頃にお父様から貰ったものなの。とっても面白くて、とってもカッコいいお話なのよ。よくお父様に読み聞かせしてもらったものだわ……だから、今日は私がアニスに読み聞かせをしてあげるわ」
「はい。ありがとうございます」
私は前世でかなりの数の書物を読んできたが、初めて見る題名だったため、興味が湧いた。
何より、題名に“勇者”が入っているのだ、剣を駆使して無双する本に違いない。
「この本は読み聞かせた後アニスにあげるわ。大切にしてね」
「はい!もちろんです」
「それじゃあ、始めるわよ……
昔々、あるところに一人の青年がいました……」




