絶技
私は『救世の賢者、創世の勇者』を聞き、唖然としていた。
まさか、前世の自分が語り継がれているなんて……
しかも魔女ではなく賢者!
もしかしたら、この時代では魔女への迫害はなくなっているのかも知れない。
「どうだった?面白いでしょう?」
「は、はい。すごかったです」
本当にすごかった。
驚きの連続だった。
自分が語り継がれていたこと、シュルスが語り継がれていたこと。
そして、ユーグ王国と冒険者ギルドをシュルスが創ったということ。
それにしても、シュルスも私のために気の利いたことをしてくれたものだ。
しかし、そんなに私のことを想ってくれていたなら、私のことを受け入れてもよかっただろうに。
そう、私は前世でシュルスに惚れていたのだ。
だから私は魔王との決戦の前日に告白をした。
そしたらシュルスはなんと言ったと思う?
「すまない、故郷に想い人を残してきたから無理だ」だと。
二年間も寝食を共にし、死地を潜り抜けた仲間より故郷の三年間も会っていない相手を取ったのだ。
それだけなら私に魅力が足りなかっただけ、と割りきれるが、シュルスは思わせ振りな行動を多々していたのだ。
私を敵の攻撃から庇ったり、私を過度に心配したり、喧嘩して仲直りした時なんて「これからも一緒にいてくれるか?」なんて言われた。
そんなやつに告白して、振られた。
決戦の前日にだよ!
魔王と相討ちになったのはそのせいかもしれない。
もう、男なんて信じられない!
「あ、アニス?どうしたの?」
「え、いえ、何でもありません」
いけない、いけない、顔に出ていたみたい。
セレナお姉様に声を掛けられ、正気に戻った私は気になっていたことを問いかける。
「セレナお姉様、魔法使いってどのような扱いを受けるのですか?」
「あら?アニスは知らないのね。魔法使いはね、とても厚待遇なのよ」
「え?」
「魔法使いは数が少ないから貴重だし、何より闘気使いよりも強力だから国も重宝しているわ」
え?魔法使いが厚待遇?
魔法使いが闘気使いよりも強力?
確かに魔法は便利ではあるが、闘いでは闘気の方が役に立つはずだ。
まぁ、雷魔法を除いてだが。
「セレナお姉様、魔法使いよりも闘気の方が強力ではないですか?“絶技”を使えば魔法よりも断然強いですよ?」
「絶技?なんのこと?闘気使いは絶技?なんてものは使えないと思うけど……闘気使いが出来るのは身体強化と集中強化だけだと聞いているわよ?」
「え?そんな……」
もしかしたら、この時代は闘気使いが廃れているかも知れない。
だとしたら、私は誰から絶技を習えばいいのだろうか。
そんな不安を抱えながら、午後の修練を再開した。




