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 先頭を歩く思金オモイカネ太玉フトダマ。リンはその二人の側に行き何やら話している様子。

 あの子ったらまたいつもの調子で出会う人たちを虜にしていくんだわ。

 つむぎはそう思いながら微笑んだ。


 リンはこれまで、魔法界の王子、機械文明のアンドロイド、町の商人や魔物に至るまでいろんな者たちと、持ち前の快活さですぐに仲良くなる特技を発揮してきた。

 きっと神さまたちにもリンの特技は発揮されるんだわ。

 つむぎはそう思った。


 思金オモイカネ太玉フトダマ、リンの三人のすぐ後ろを根子ねことズルが並んで歩いていた。ズルが身振り手振りで何かを話しているのを根子ねこは横で聞いている様子。


 根子ねこの横顔が見えた。

 なんだか楽しそうに笑っているなとつむぎは気づいた。


根子ねこがどうしたの?」


 つむぎすいとズルに聞いた。


 根子ねことズルが歩いている位置からは少し離れているのでこちらの声は届きそうもないが、すいつむぎに向けて唇に人差し指を立てる仕草をした。

 静かに話そうという意味だとつむぎはすぐに分かった。


 大丈夫だよ。


 つむぎは心の中で思った。思金オモイカネたちに聞こえるのを防ぐため、少し前からここの周りには風を舞わせてこちらの声を聞こえなくする動的魔法フィールドをかけておいたのだ。

 ズルはそれが分かっているのですいに説明してあげてくれた。


「私たちが私の国の古代の神話の時代に来た。つまり過去へタイムトラベルしてきたのが正しいんだとすると」


 すいが話した。


「私は根子ねこも同じようにして来たんだと思うの」

「えっ。そうなの!?」


 つむぎは驚いた。

 すいはゆっくりと頷いた。自分では確信しているからだ。


根子ねこが歴史上の誰なのかも検討が付いているわ」

「本当!?」

「本当ですか!?」


 二人が驚きの声を上げた。


「うん。それに、私と同じ状況にある人だと思うの」


 ズルもつむぎも今やすいに驚きの眼差しを向けて来ている。

 すいも生きてきて、こんなに凄い謎を解くのは、はじめてのことだから内心とても興奮していた。


「待って。落ち着かなくちゃ」


 そう言って深呼吸をする。


「ズル。私の儀式で魔法契約が発動したと言ってたよね?」

「は、はい」


「その魔法契約は三回目だと言ってなかった?」

「そうです」


「一回目と二回目はいつだって言ってたっけ」

「ええと確か、一回目は契約が結ばれてからすぐ。千五百年前……だったかな。二回目は千年前と」


「その時期は正確なの?」

「う……それは、おおざっぱな感じだと思います。正直、僕が聞いてお伝えしているのも絶対間違っていないとは言えませんねぇ……そんなに重要だとは思っていなかったので。二千年前と千年前だったのかも知れません。すみません」


「いいの。今は時期があいまいなものと分かればそれで」


 すいはズルに優しく言った。


「では、こういうことだと思う」


 すいは自信があるように言った。


「二回目に魔法契約を発動させたのは、願掛けを行った根子ねこだと思う。時期は少しずれてて千三百年前くらい。宙皇ちゅうおう家の歴史の中でも特殊な人だから私もその記録を思い出せるんだけど、根子ねこは未婚のまま女帝になったはじめての宙皇ちゅうおうだと思う」


 ズルは指で眼鏡の位置を直しながらすいの言葉の意味を飲み込もうとしている様子。


「え、えーと、つまり……根子ねこは王さまになるってこと?」


 つむぎが自分でシンプルに理解できるように確認の質問を投げた。

 すいは頷いた。


「たしか弟がみかどになったって言っていたけれど」


 つむぎ根子ねこの話しを思い出して言った。


宙皇ちゅうおうも昔はみかどと言われていたの。残念ながら根子ねこの弟さんは若くして亡くなってしまうんだと思う。その人が残した息子さんに皇位を引き継ぐために、根子ねこが皇位に就くことになる。まだその子が幼かったからね。加えて、自分が結婚をすることによって権力が移動することを恐れて、未婚のままでいた」

根子ねこは結婚できないの……なんだかかわいそう」


 つむぎは前方でデニと楽しそうに話している根子ねこを見ながら言った。


「ズル。私の推測。どう思う?」

「……僕たちがゲートを通ってタイムトラベルをしたとするならば、二回目の魔法契約発動者が根子ねこさんで、同じ時代に来て、こうして一緒にいるということはありえると思います……」


 ズルは難しい顔をして言った。


「僕はまだゲートで時空を超えられるというのは簡単には信じたくない立場ではありますが」


 ズルが早口で付け加えた。


「なによ!ズル。今はもうあなたの立場なんてどうでもいいことだって、さっきも言ったでしょ」


 つむぎに指摘されてズルは居心地悪そうにした。


「すみません……そうですね。すいさん、根子ねこさんの話しから何かその宙皇ちゅうおうになった人と同一人物だと思う事柄があったんですか?」

「ええ。さっきも言ったけれど、弟が帝になったという話し。祖父と祖父の甥が戦をしたっていう話し。それから根子ねこは藤原の宮から来たと言っていたよね。その頃は首都の場所を頻繁に変えていたんだけど、この仮定が正しければ、もちろん私の記憶も正しければ、だけど、藤原京が都だったはず。住んでいた人たちは藤原の宮と呼んでいたと思う」


「かなり具体的ですね」とズル。

「そうだね。それだけ記録と一致するなら間違いなさそう」とつむぎ


「私の推測が正しければ根子ねこ氷高ひだか皇女こうじょとも呼ばれていたはず」


「……それだけ今、確認してしまいましょう」


 ズルが緊張した顔で言った。


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