表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

14

すいさん」


 ズルがしっかりとした様子で聞いてきた。


「少し教えてください」

「はい」


「その……すいさんの国の古代の神話ですが」

「うん。古事記こじきっていうの」


「それはどのくらい信憑性のある記録なんですか?」

「うーん、神話のお話だから……実際にそのときに記録されたものではなくて、お話として伝えられたものを、その後の時代にまとめられたものだったと思う。だから歴史の記録としてはあまり信憑性のあるものではないわ」


「なるほど……古事記こじきに書かれているストーリーは、今僕たちがやって来たこの土地、この時期だけのものですか?」

「いいえ。古事記こじきは世界が作られた創世の話しから宙皇ちゅうおうの……たしか三十代くらいまでが書かれているの。えーと、こんな時にスマホがあれば細かい年も分かるのに……」


「スマホ……あの機械のことですね」

「うん。ああ、でも持ってこれたとしてもこの時代にはインターネットがないからだめか……」


「ふふふ、情報網のことかな。そうですね」

「天界の時代から、だいたい千四百年前までのことが書かれていると思う」


「僕たちが来たこの時代は、だいたいでいいんですがどのくらい前のことだと思いますか?」

古事記こじきのはじめのほう。古事記を信じるなら三千年前くらいなんでしょうけど、だいぶ盛っていると思う」


「盛っている?」


 つむぎが不思議そうに聞いた。すいが苦笑しながら答える。


「神話だからね。より古くから宙皇ちゅうおう家が続いているって書いた方がありがたみが増すでしょ?」

宙皇ちゅうおう家の人がそれ、言っていいのかな~」


「ふふふ。そうだなあ、三千年前ってことはないと思う。私はある理由から千八百年前くらいって思っているんだけどね」


すいさんの推定も何か根拠がありそうで興味深いですね……ですが今は時間がない。すいさんの想定の千八百年前ごろということで認識しておきます」


 ズルはそう言って少し考えてから、


「ではすいさんが行ったあの勾玉まがたまを使った儀式。それで魔法契約が発動したわけですが、それでこの時代への道が開いたことの理由に心当たりはありますか?」


 と問うた。


 すいはそう聞かれて困ってしまった。何しろ儀式を行いはしたけれど、効果は精神的なものだろうと思っていたし、魔法契約の発動なんてものは想像外だったのだ。


 だが、今はあえてその理由について推測してみようとすいは思った。


「これは……私がこういうことかなって思うだけなんだけど……」

「今は推測でも良いのでお聞きしたいです」


 ズルはすいが考えを言いやすいようにそう促した。


「私が願掛けを行った理由について話したでしょう?皇統断絶の危機にあって、皇位継承は男系男子っていうのが今の決まりなの」


 ズルとつむぎは頷いた。


「その決まりとか、皇統そのものを知るにはルーツであるこの時代に来るのが、考えてみたら一番良いと思う」

「うーん、なるほど!」


 ズルは膝を叩いた。


「それに、不思議に思うかもしれないけれど……」


 ズルは首を傾げてすいに先を促した。


昼孁ヒルメと呼ばれる、おそらくは天照大御神あまてらすおおみかみと言われる最も偉い神さまなんだけど、それは女神として伝えられているの」

「えっ」


 つむぎが驚いた声を出した。


「あれだけ男の子のさらに男の子を王様にするってこだわってるのに、一番大元は女ってこと!?」


 すいは苦笑しながら頷いた。


「それは興味深いですね。確かに実際はどうだったのかを知ることですいさんの今後にも役立てられそうだ」


「言い伝えでは、アマテラス神の孫、その人は男性なんだけど、天孫降臨と言ってその人が地上に降ってからは男性の系譜で続いていくの」

「ふーん。でもでも、元を正せば女神さまなんでしょ!その昼孁ヒルメって人に聞いてみよう。女系でも王さまになっていいかって。私が女だから言うわけじゃないけれど、別にいいんじゃなかなって思うもん」


 無邪気なつむぎの言葉を聞いて、すいは抱きしめたくなるほど可愛いと思った。


「そうだね。聞いてみようか」


 すいつむぎに微笑んでから続けた。


「あと、もう一つ話しておきたいことがあるの。ズルは気づいているかもしれないけれど……」


根子ねこさんのことですね?」


 ズルは即答し、すいは頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Harugin Story Channel】
YouTubeでボイスドラマ配信しています
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ