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【完結】好きな子に恋人ができたはずだが諦められないと思い告白したら、なぜか恋人などおらず無事にOKがもらえ付き合えた話  作者: アズト


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第37話 お姉ちゃんの部屋

 お姉ちゃんこと莉奈さんの部屋にて。


「……これはまた、一段とすごいですね」


「そうでしょ」


 あたり一面に琉奈の写真が貼ってあるのは昔と同じ、いや昔以上だが、それ以外もすごい。抱き枕、マグカップ、アクリルスタンドなど様々な琉奈グッズが部屋の中に溢れていた。


「ちなみに、この服以外にもいくつかあるのよ」


 莉奈さんはお姉ちゃん特製Tシャツをベットに並べていく。そこには、琉奈のイラストが描かれたTシャツが二枚、そして、文字が書かれたTシャツが四枚あった。


 文字の内容は、それぞれ、『I ♡ 琉奈』、『I ♡ 妹』、『琉奈 命』、『妹 命』と書かれている。今、莉奈さんが着ているものと合わせると合計七枚あるので、一週間のローテーションでこれらを着ているのだろう。


 しかし、どうやってこんなにたくさんのグッズを作ったのか気になるところだが、万能変人、あ、間違えた、改めて万能超人である莉奈さんにとってはこの程度、「いろはのい」なのかもしれない。


 そういえば、「いろはのいだよ」が口癖の、クラスで元々は三番目に可愛いと自負していた子がいるけど、上位二人は誰なんだろう? 一番が天海さんで二番目が朝凪さんかな。いや、これはクラスで二番目に可愛い女の子の話だな。


 そんなことを考えていると、ふと視界の端に人影が見えた気がしたのでそちらを向く。すると、そこには琉奈の姿があった。……いや、おかしい。琉奈は今、料理を作っているはずなので、莉奈さんの部屋の中にいるはずがない。


 だがここで、「琉奈! なぜ琉奈がここに……」などと騒ぎ出してしまうと、無言の腹パンをくらう恐れがあるので近づいて確認し、その正体を理解した。やはり、彼女は琉奈ではない。いや、正確には彼女ですらなかった。これは恐らく……、


「……あの、莉奈さんこれって」


「あ、それは見てのとおり、お姉ちゃん特製・琉奈ちゃんの等身大フィギュアよ!」


 ……やっぱりそうなのか。しかし、どうやったらこんなものまで作れるんだろう? 説明書を読んだのよ、とか言い出すんだろうか? まあ、それについては訊いてもおれには分からなそうなので、ほかのことを訊こう。


「ちなみに、なんでこういうのを作ろうと思ったんですか? いくら妹を溺愛しているとはいえ、さすがに度が過ぎていると思うんですが……」


「そうねえ……。お姉ちゃんが一人暮らしをさせられた理由は知っているわよね?」


「確か母親が、莉奈さんはもう大人だしいい加減に妹離れをさせようとしたからですよね?」


「ええ、そうよ。それで、最初はお姉ちゃんも頑張っていたの。けど、やっぱり妹がいないととってもつらい。でも、会うのは禁止されている。だけど、会いたい。目の前にいてほしい。そして、あるとき気付いたのよ」


 莉奈さんはそこで一度言葉を切り、ガッツポーツを取りつつ口を開く。


「妹がいなければ作ればいいのよ、ってね」


「…………………………はい?」


「妹がいなければ作ればいいのよ、ってね」


「いや、聞こえてましたよ! 理解が追いつかなかったんですよ!」


「理解もなにも、見てのとおりじゃない」


「そうなんですよねえ……。なんで、見てのとおりなんでしょうねえ……」


 つまり、莉奈さんに妹離れをさせようとした結果、逆効果でルナニウム欠乏症になり、この状況になったというわけか。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ、と言いたい気分である。


「でも、結局は一時しのぎにしかならなかったわね。やっぱり、本物の琉奈ちゃんからしか摂取できない栄養があるわ」


「そうですか……。でも、それだと夏休みが終わったら大変じゃないですか?」


「それは大丈夫よ。お母さんに、お姉ちゃんの妹への愛の大きさが伝わったみたいで、一人暮らしはやめることになったわ。琉奈ちゃんと毎日一緒にいられるってやっぱり最っ高に幸せね!」


 それ、愛が伝わったんじゃなくて、諦められただけじゃないかなあ……。そんなことを考えながら莉奈さんを見ると、ドアのほうを気にしているように見えた。


「どうかしましたか?」


「ああ、日希君の服の背中のほうに破れてるところがあるなーって思って」


「えっ、そうなんですか?」


「日希君からは見えないんじゃないかしら。ちょっとこっちに背中をむけてちょうだい」


 おれは莉奈さんに背中を見せたあと、首をひねり後ろを見ようとしたが、よく分からなかった。ドアの近くに鏡が置いてあるので、さきほどはドアではなくあの鏡を見て、おれの服の破れに気が付いたということか。


「やっぱり破れてるわね。せっかくだし、お姉ちゃんが直してあげるわ。さっ、脱いで」


「いや、でも……」


「あら、もしかして恥ずかしいの? それなら、お姉ちゃんも一緒に脱ごっか?」


「な………………」


「やだ、もしかして本気にしちゃったの? もー、日希君のえっちー」


「いやいや、してないですよ。分かった、脱ぎますよ。はい、お願いします」


 おれは慌てて服を脱ぎ、どう破れているかも確認せずに莉奈さんへと手渡した。そして、その少しあとで部屋のドアがノックされる音がした。


「あら、ご飯ができちゃったみたいね。悪いけど、直すのはあとでもいいかしら? ほら、せっかくのご飯が冷めちゃうし」


「まあ、そうですね。じゃあ、服を……」


「このままお姉ちゃんが着せてあげるわよ。はい、腕を通して」


 おれは莉奈さんに頭から服を被せられ、言われるがままに服に腕を通した。


「琉奈ちゃん、入ってきていいわよ」


 その声で部屋のドアが開かれ、琉奈が部屋に入ってきた。


「あ、日希くんいた。ご飯……、って、なんでそんな格好してるの!?」


「えっ、格好?」


 なんだろう、前後ろを反対に着てしまい服の破れが見えているのかな? そう思い、自分の服を見ていると、今おれが着ているのは自分の服ではなかった。


 では、なにを着ているかというと、お姉ちゃん特製・『I ♡ 琉奈』Tシャツだった。………………ええ、どうして??


「あ、これは日希君の服が破れてたからお姉ちゃんの服を貸してあげたのよ」


「……そ、そうなんだ。そういうことなら……、その、仕方ないね。……じゃ、じゃあ、ご飯できてるから……」


 そう言って、恥ずかしそうにしながら琉奈は部屋を出ていった。そりゃ、おれがこんな格好をしていれば恥ずかしいだろう。なんで、よりにもよってこれなんだよ。七枚の中で、ある意味一番恥ずかしいやつじゃん。


「あの、莉奈さん、破れててもいいので元の服を……」


「なに言ってるの。そんなことしてたらご飯が冷めちゃうでしょ。ほら、行くわよ」


 別に着替えている時間くらいはあると思うのだが、莉奈さんは有無を言わさず、おれの手を取り引っ張っていく。その際に、莉奈さんがベッドに置いたおれの服を見ると、破れているようには見えなかった。


 ……まさかとは思うが、この人お姉ちゃん特製Tシャツをおれに着せるために嘘をついたんじゃないだろうか? そう考えると、あのときドアのほうを気にしているように見えたのは、琉奈が来たのを気配や足音で察知していたからかもしれない。普通に考えたらありえないが、この人ならありえる。


 こうして、おれはお姉ちゃん特製・『I ♡ 琉奈』Tシャツを着て、琉奈の手料理を食べることになった。くそっ、莉奈さんめ、おれをはめやがったな!


37話を読んでいただきありがとうございました!

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