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【完結】好きな子に恋人ができたはずだが諦められないと思い告白したら、なぜか恋人などおらず無事にOKがもらえ付き合えた話  作者: アズト


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第35話 お姉ちゃん襲来

 夏休みに入り、前に約束したようにおれは琉奈と一緒に莉奈さんを迎えに駅まで来ていた。


「改めて、今日はありがと」


「いや、いいって。おっ、来たみたいだな」


 莉奈さんが乗っている電車がホームに到着する。そして、電車のドアが開いた瞬間、勢いよく飛び出した人がいた。その勢いのまま、その人はもの凄いスピードでこちらへと走ってきた。間違いなく莉奈さんだ。


「琉ーーー奈ーーーちゃーーーん!」


「きゃあああああ!」


 莉奈さんが琉奈に飛びつき、二人揃って身体が宙を舞い琉奈は悲鳴を上げた。というかマズイ。このままだと琉奈が頭から地面に激突する。


「あ、やばっ」


 そう言うと、莉奈さんは左手で琉奈の身体をしっかりと抱きしめ右手で地面に手を付き、琉奈の頭が地面に着く前に右腕の力だけで前方へと飛び上がる。そして、今度は両腕でしっかりと琉奈を抱きしめながら空中で数回転したあと、危なげなく平然と着地した。


「ちょ、大丈夫ですか!? ていうか、なんですか今の動き!?」


片腕一本で二人分の体重を支えながら、空中に飛び上がるとかそんなことが人間に可能なの!?


「妹への愛さえあればこの程度は造作もないわ! なんたって、お姉ちゃんだからね!」


 莉奈さんはキメ顔でそう言った。マジかよ、お姉ちゃんってすげえな。いや、この場合すごいのは妹への愛のほうか。元から超人的ではあるが、相変わらず妹が絡むとその度合いが圧倒的に増すなあ。


「って、そんなことより琉奈ちゃん大丈夫!? 怪我とかしてない!?」


「きゅ~~~」


 超人的な身体能力を発揮した莉奈さんのかたわらで、一般人である琉奈は目をぐるぐると回していた。


「ああっ!! しっかりして、琉奈ちゃーーーん!!」


 *****


 それから、少しして琉奈は無事に目を覚ました。幸い、特に怪我もせずに済んだようだ。


「ううっ、ごめんね琉奈ちゃん。久しぶりに会えたのが嬉しすぎたせいで、お姉ちゃん自分を抑えきれなくて、琉奈ちゃんを危ない目にあわせちゃった……。本当にごめん、こんなんじゃお姉ちゃん失格だよね?」


 莉奈さんはぐずぐずと泣きながら琉奈に謝っていた。


「そんなことないよ。少し驚いただけだから気にしないで、お姉ちゃん」


「本当に? 怒ったりしてない?」


「してないよ。そんなことより……、わたしも久しぶりに会えて嬉しいよ、お姉ちゃん」


 そう言って、琉奈は笑顔を浮かべた。


「うわーーん! お姉ちゃんもすっごい嬉しいよーーーーー!!」


 対する莉奈さんはわんわんと泣きながら琉奈に抱きつき、琉奈のほうもそれを抱き留める。あら^~、これは姉妹の美しい再会ですね。りな×るなの姉妹百合、とてもいいと思います、はい。


「……ううっ、涙が止まらない。……あれっ、ハンカチがない」


「あ、それならわたしのを使って」


 莉奈さんは琉奈からハンカチを受取り涙を拭く。さて、莉奈さんのハンカチはというと、近くの地面に落ちていた。どうやら、ポケットから取り出そうとして落としたのに気付かなかったようだ。


 まあ、本人がこの状況では気付かないのも無理はないし、とりあえずおれが拾っておこう。そして、ようやく涙が止まったらしい莉奈さんが口を開いた。


「……ああっ、それにしても、久しぶりの生琉奈ちゃんとの生ハグ、最高だよぉ…………」


 …………なに言ってんだろう、この人。これ、本当に姉妹の美しい再会かなあ?


「……ああっ、ルナニウムが、ルナニウムがお姉ちゃんの身体を満たしていく…………」


 ………………マジでなに言ってんだろう、この人。もはや、姉妹の美しい再会と言える状況ではなかった。しかし、莉奈さんが重度のシスコンなのは昔から知っていたが、以前と比べてシスコン度が上がっている気がする。気のせいだろうか、気のせいにしたい、気のせいにしよう。


「……えっと、あとどれくらいこうしてればいいかな?」


「……うーん、あと五時間」


 五時間!? なんでこの人、朝に起きられない人が言う、「あと五分」のノリで「あと五時間」とか言ってるんだよ。しかし、それを言われた琉奈のほうは、「あと五時間か。どうしようかなあ……」と真面目に悩んでいた。


 ちょっと姉に甘すぎませんかね、この妹さん。まったく、家族だからといって決して妹を甘やかしたりしないこのおれを、琉奈は少しは見習ったほうがいいのではないだろうか。


「……さて、さすがに二人に悪いからそろそろ帰ろっか」


「え、もういいのお姉ちゃん? まだ、十分くらいしかたってないよ」


「ええ、とりあえずは大丈夫よ。でも、家に帰ったらまたこうさせてほしいな。あ、それとしばらくの間は、一緒にお風呂に入って一緒に寝てもいいかしら?」


「うん、もちろんいいよ」


 いいのか……。これに関しては、琉奈が優しいからいいのか、姉妹ではよくあることなのかわからん。


 まあ、それはおいといて、さきほどまでの情緒不安定さもなくなり、普通の顔をした莉奈さんを見ると、やはり外見は琉奈によく似ている。まあ、大学生なので琉奈よりも大人びていて綺麗な女性といった印象だが。ただひとつ、大きく違う点があるとすれば、髪の長さが肩くらいまでしかないことだろう。


「あ、そうだ。日希君、今日は琉奈ちゃんに付き添ってくれてありがとね」


「いえ、それはいいですけど。……なんだか、ずいぶんと眠そうですね」


 おれにお礼を言ったあと、莉奈さんは口を手で押さえながら大きなあくびをしていた。


「ええ、実は久しぶりに琉奈ちゃんに会えるのが楽しみで、昨日は眠れなかったのよ」


「……そうですか」


 なにやら、遠足前の小学生みたいなことを言い出した。莉奈さんにとって、妹はアイドルみたいなものなのだろうか?


「それに加えて、昨日までは身体も重くてすごく疲れてたのに、電車の中から琉奈ちゃんが見えた瞬間、とっても元気になったの。やっぱり琉奈ちゃんってすごいわ。実は、癒やしの天使なんじゃないかしら」


 アイドルどころか人間ですらなかった。幼馴染みの姉が癒やしの天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件。いや、これは間違いなく天使様ではなく、姉のほうに問題があるな。


「さて、帰ろっか。琉奈ちゃん」


「うん、帰ろう。お姉ちゃん」


 そう言って、莉奈さんは琉奈と腕を組み歩き出した。ふむ、女性同士が腕を組むというのは素晴らしい光景だと思うので、今後もぜひともそうしてもらいたいものだ。そして、おれはそれを後ろから眺める後方モブ面を決め込みたいなあ。


 そんなことを考えながら、莉奈さんのお迎えは無事に終わった。いや、無事って言っていいのかなあ、これ?


35話を読んでいただきありがとうございました!

それと、新たにいいねをしてくれた方、ありがとうございました!

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