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【完結】好きな子に恋人ができたはずだが諦められないと思い告白したら、なぜか恋人などおらず無事にOKがもらえ付き合えた話  作者: アズト


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第30話 ゲームセンター

 琉奈とのデート(仮)当日、おれは待ち合わせ予定時刻よりも一時間ほど早く駅前に到着した。


これは、琉奈を待たせるのは悪いと思ったり、琉奈がさきに来ておれを待っている間に誰かにナンパされるのを危惧したからであり、琉奈とのデート(仮)を楽しみにしていたからというわけでは断じてない。いや、すいません嘘です、楽しみにしてました。


 とはいえ、琉奈が来るまでにはまだ時間があるだろうし、どうするか。おれがさきに待ち合わせ場所にいた場合、あとから来た琉奈が遅れていないにもかかわらず、「遅くなってごめん」とか言って申し訳なさそうにしそうだな。


 となると、待ち合わせ場所が見える位置で待機しておくのがいいか。スマホがあれば、時間は余裕で潰せるしな。しかし、スマホがない時代は時間を潰すときどうしていたんだろう? 本でも持ち歩いて読書をしていたんだろうか?


 と、そんなことを考えていたら待ち合わせ場所に琉奈が歩いてくるのが見えた。えっ、早くない!? いや、おれも人のこと言えないんだけどね。


 まあ、早く来たならそれはそれでいいかと思い琉奈のところへ向かおうとしたら、琉奈はバッグの中から手鏡を取り出し前髪を確認し始めた。それが終わると、今度は自分の服装を確認し大丈夫だと判断したのか、うんと頷いていた。


 なにやら可愛いものを見てしまったが、確認は終わったみたいなので改めて琉奈のところへ向かう。


「! あれ、早いね、日希くん」


 驚いた顔をして琉奈がそう言う。まあ予定より一時間くらい早くおれが来たら驚くよな。


「待たせるのも悪いと思ってな。そういう琉奈もだいぶ早いな」


「……それは、わたしも待たせると悪いと思ったから」


「そうか。どうやら同じことを考えてたみたいだな」


「そうだね」


 てへへと照れたように笑いながら琉奈がそう答える。


「……あー、あとあれだな。髪とか服とかいい感じだな。……可愛いと思う」


「っ! …………ありがと」


 琉奈は頬を真っ赤に染めてそう答える。それと、言ったおれのほうも赤くなっているのを感じる。正直、こうやって褒めるのは恥ずかしいのだが、ああやって髪や服を確認してるのを見たのになにも言わないわけにはいかないもんなあ。


「じゃ、じゃあとりあえず、いったん映画館に行ってチケットだけ発券しとくか。あとにして混んでたら困るしな」


「う、うん、分かった」


 頬の赤さと動揺がまだ消えないまま、おれ達は待ち合わせ場所から少し歩き映画館に入る。入ってすぐ脇のほうにチケットの自動券売機があるため、あらかじめネットで購入しておいたチケットを発券し、一枚を琉奈に手渡した。


「さて、どうするか。まだけっこう時間があるしどこかで時間を潰さないと」


「それなら、あそこに行ってみたいんだけどいいかな?」


「ゲームセンターか。もちろんいいぞ」


 おれ達は映画館のすぐ近くにあったゲームセンターに入る。中には、クレーンゲームやメダルゲーム、ビデオゲームなど色々なゲームがあった。琉奈はそれらを興味深そうに眺めながら歩く。


「ゲームセンターってこういう感じなんだね」


「もしかして初めてきたのか?」


「うん、実はそうなの。日希くんは?」


「おれは何回か来たことあるかな」


 そんなことを話しながらゲームセンターを一周し、最初のクレーンゲームのコーナーに戻ってきた。


「あ、これ見たことあるアニメのなんだね。あ、こっちも」


「アニメ化された作品のグッズが出るのはよくあることだからな」


「へー、そうなんだね」


 今度はクレーンゲームの中を興味深そうに眺めながら歩き、ある筐体の前で足を止めた。中を確認すると、日本だけでなく世界でもかなりの知名度があるらしい猫をモチーフとしたキャラクター、キャティちゃんのぬいぐるみがあった。


 キャティちゃんは本名をキャティ・ホワイトと言い、酒とタバコなどの一部を除き、あらゆるものとコラボをしており、ネット上ではその仕事の選ばなさから敬意を込めてキャティさんと呼ばれたりもしている。もちろん、おれも普段はキャティさんと呼んでいる。


「せっかくだし、気になるならやってみたらどうだ?」


「え? う、うん、そうだね。……えっと、これってどうやるの?」


「まあ初めて来たなら当然知らないよな。これはだな――」


 百聞は一見に如かずという言葉もあるので、実際に一度おれがプレイしながら説明する。ここで、一回でぬいぐるみを取り琉奈に渡してやればかっこいいのだろうが、残念ながらそうはならなかった。


「――とこんな感じだ」


「分かった、ありがと。それじゃあ、やってみるね」


 そう言って、今度は琉奈がクレーンゲームをプレイする。


「あれ、通りすぎちゃった」


「今度は手前すぎ……」


「やった、掴めた。……あ、落ちちゃった」


 そんな感じで何度かプレイしていたが、やはり簡単にはいかない。まあ、クレーンゲームってそんなものだよなあ。上手い人は違うのかもしれないが。


「取れなさそうだし諦めようかなあ……」


 ややがっかりした顔で琉奈がそう言う。どうしてもというわけではなさそうだが、できれば欲しいのかな。


「じゃあ、おれがやってみてもいいか?」


「あ、日希くんもやりたいんだ。もちろんいいよ」


 そういうわけで今度はおれがプレイする。取れるまで挑戦すれば必ず取れるの精神でいこうと思っていたら、今度は一回目で目標のぬいぐるみをゲットすることができた。


「すごい、一回で取れちゃった!」


 琉奈が目を輝かせながらそう言う。実際は説明のために一回プレイしているので二回なのだが、嬉しそうにしているので黙っておこう。


「じゃあ、これやるよ」


「え? いいの?」


「そのつもりでやったからな」


「そうなんだ……」


 そう言いながらぬいぐるみを受取る。そして、


「嬉しい……、大事にするね」


 ぬいぐるみを両手で抱えながら、幸せそうな笑顔でお礼を言われた。そんな顔でお礼を言われたらおれのほうまで嬉しくなってしまった。


30話を読んでいただきありがとうございました!

それと、新たにブックマークをしてくれた方、ありがとうございました!

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