第26話 テスト勉強
期末テストが近づいてきたとある休日の自室にて。
「じゃあ、今日はよろしくな」
「うん、こちらこそ」
以前、約束したようにおれは琉奈と一緒にテスト勉強をすることになった。中間テストの際は結果が芳しくなかったため、期末テストでは汚名挽回しなければいけない。
ちなみに、汚名挽回というのは本当は誤用なのだが、そんなことを言ったら漫画の感想とかで使われる王道という言葉も本来は誤用らしいので気にしてはいけない。というわけで、今日も1日がんばるぞい! (昨日までがんばっていたとは言ってない)
「分からないことがあったら遠慮なく訊いていいからね」
「ああ、助かる」
そんなやりとりがあり、実際に分からないところが出てきたので、琉奈に質問をすることにした。
「なあ、琉奈ちょっといいか?」
「うん、いいよ」
「この問題なんだけど」
「あ、これはね――」
おれが指差した問題を確認するために琉奈がおれに近づき、ついドキリとしてしまう。というのも、もう季節は夏であり暑い。そのため、人はみな薄着になっており、それは当然琉奈も例外ではない。
普段はなるべく見ないように気を付けている(完全に見ていないとは言ってない)が、この距離かつこの薄着ではついとある部分に目がいってしまった。
くっ、これが仮に相手が海希なら、こうはならないはずなのに。(もちろんそれは妹だからであり、サイズの違いが原因だとは言ってない)
「――こうなんだけど、分かった?」
「……すいません、あまり聞いて……じゃなくて、あまり分からなかったのでもう一回お願いします」
「それはいいけど、……そんなに申し訳なさそうな顔しなくていいよ」
琉奈が真面目に教えてくれている横で不真面目なことを考えていたのでそんな顔にもなるよなあ。と、そんな場合ではないので集中しないと。勉強は集中力ですよ、集中力!!
「――こうなんだけど、今度は大丈夫そう?」
「ああ、分かった。ありがとな」
「ううん、全然いいよ」
よし、今度はちゃんと理解することができたのでこの調子で頑張ろう、と決意を新たにし勉強は進む。しかしというかやはりというか、誰かと勉強するのはいいものだな。一人のときはつい部屋の掃除を始めたり、休憩がてら漫画を読み始めそのまま延々と休憩したりすることもあるのだが、今日はそうはならない。
誰かと勉強というよりは琉奈が相手だからかもしれない。そんなかっこ悪いところを見せたくないしなあ。とはいえ、そこそこ時間も経ってきたから、
「少し疲れたし休憩しないか」
「あ、そうだね」
「じゃあ、おれ飲み物とってくるから。ジュースでいいか?」
「うん、お願い」
さて、なにかいいものあったかなあと思いつつ、キッチンへと向かい冷蔵庫を確認する。勉強中だしせっかくなら、選ばれし者の知的飲料でもあればいいのだが残念ながらない。酒はダメなんでオレンジジュースにしておこう。というわけで、二人分のジュースを用意して部屋へと戻った。
「じゃあ、これ琉奈の分な」
「うん、ありが……、きゃっ」
おれのコップの渡しかたが悪かったのか、琉奈はコップを掴みそこねジュースをこぼしてしまい、それが琉奈の服に思いっきりかかってしまった。
「ご、ごめんね日希くん。あ、床まで濡れちゃってる」
「いや、床は別にいいから。それより、琉奈は大丈夫か?」
「わたしは服が濡れただけだし大丈夫だよ」
「それは大丈夫って言っていいの……か!」
「? どうかしたの日希くん?」
妙な反応をしたおれを見て、琉奈が怪訝そうな顔をする。なぜおれがそんな反応をしたかというと、琉奈の服が濡れてしまったことで、下着が透けて見えることに気付いたためだ。つい目をやりたくなってしまう衝動を抑えて、おれは床を拭く作業に入り自然に目を逸らした。
「掃除はおれがやっておくから、琉奈は着替えてきていいぞ。たぶん、海希が自分の部屋にいるはずだから、なにか服を貸してもらってくれ」
「ううん、それはあとでいいよ。わたしが悪いんだし、自分で掃除するよ」
「いや、いいから。……ほらあれだ、テスト前に風邪でも引くといけないから、はやく着替えたほうがいい」
「それは確かに……。うん、じゃあ悪いけど着替えてくるね」
そう言って、琉奈は部屋を出ていった。あれくらいで風邪を引くかはわからんが、すんなり納得してくれる安定のピュア宮さんで助かった。よし、拭き掃除は終わったし、あとは自然乾燥でもいいかなあ。どうせ、自分の部屋だから誰かの迷惑になるわけでもないし、多少は雑でもいいだろう。
さて、琉奈の着替えが終わるまでどうしようかと思っていたらノックの音がしてドアが開いた。そのため、相手が誰だかはすぐわかったが、おれの返事を待たないならもうノックはいらないんじゃないかなあ?
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
「どうした? というか、琉奈の着替えは?」
「今、着替えてるとこだよ。というわけで、お兄ちゃんは買い物に行ってきて」
「なにが、というわけなんだ? 着替えと買い物に関係性ないだろ?」
「細かいことは気にしちゃ駄目だよ。というわけで、ほら行った行った」
海希はおれの背中をぐいぐい押してきた。まあ、抵抗できなくはないのだが、可愛い妹の頼みならば仕方あるまい。海希に言われるがままに、おれは買い物に行くことにした。
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