久し振りの迷宮探索
秋斗にやっと迷宮に行く許可を貰えた琉偉は、仁と共に迷宮に向かっていた。その道中に秋斗からの言葉を思い出していた。
『ドラゴンを倒したというのは、誰にも言うな。勿論、仁にもだ』
アメリカの冒険者パーティーですら、手も足も出ない怪物を倒してしまった事がバレてしまうと、琉偉の異能に興味を持つ国も現れる。当然アメリカは琉偉の事を取り込もうとしてくるだろう。
アメリカの操り人形である日本が、琉偉の事を守るとは当然思えない。
その様な事もあり、秋斗は琉偉に口外する事を禁じたのだ。
「琉偉?どうしたボーッとして」
「ん?いや、いま向かってる迷宮は初めて行くからさ」
以前まで潜っていた迷宮は、迷宮変化は世界的に初の事例だった為、世界中から注目を浴びた日本の迷宮には、外国の迷宮研究者やそれに付き従う外国の探索者が多く見られるようになった。
そういう理由があったので、休日という事もあり琉偉と仁は地元から少し離れた迷宮に向かう事にしていた。
琉偉が異能を開花したとはいえ、病み上がりという事に加え、上昇した身体能力に身体が付いて行かない事もあったので、低階層で身体を慣らす事にしたのである。
「確かに俺も初めて行くな。わざわざ地元から離れて別の迷宮に行く理由もなかったもんな。琉偉、今日は低階層で身体を慣らすだけだからな?」
早く迷宮に行きたくてうずうずしている琉偉に仁は無理はしないようにと、注意をするものの琉偉は「ああ」と空返事をするのみで本当に聞いているのか怪しい所だ。
~数時間後~
電車を乗り継ぎ、やっと目的の迷宮に着いた琉偉たちは、協会に向かい手続きをしてから迷宮に入る。
初めて訪れる迷宮ではあったが、今日の所は低階層でしか活動するつもりはないし、日本の迷宮はどれもが低階層はスライムしかでない。
「やっとこいつを使える時がきたな」
琉偉は迷宮での度重なる戦闘により、秋斗から貰ったショートソードは使い物にならなくなっていた。
その為、療養期間中に秋斗が琉偉を連れて、迷宮専門店に行き、琉偉に合う武器を新調したのだ。
目を輝かせて新調した武器を見ている琉偉の姿を見て、少し目を離すと何処かにいってしまいそうだと思った仁は、琉偉から絶対に目を離さない事を決めた。
迷宮変化が起こって以来、初めてスライムと対峙した琉偉。本当にスキルオーブの効果が自身に適用されているか不安ではあったが、剣で切りつけてみると、あっさりとスライムは霧となって消えていった。
「なんだか、感慨深いな…俺もスライムをついに倒せるときが来るなんてな」
「琉偉が迷宮変化に巻き込まれてなかったら、異能は開花しなかったかもしれなかった事を考えると、気持ちは複雑だけどな」
琉偉は異能が開花したと仁には伝えてはいたが、詳しい能力までは伝えていなかった。
琉偉の異能、ジャイアントキリングは格下には力を発揮できないという、デメリットがあるのでこの事を仁に伝えてしまうと、ドラゴンを倒してスキルオーブが出現した事まで言わなければならず、仁には悪いとは思いつつも黙っていた。
実の所、琉偉の異能は分類としては『身体強化系』となるのだが、これは世界的に見てもかなり珍しい異能である。『ハズレの異能』としてだが…。
基本的には仁の様に魔法で魔物を攻撃したりといった、『放出系魔法士』であったり、仲間を回復させたり、身体強化を上昇させる補助魔法を使う『放出系回復士』が最も多い。
他にも様々な分類があるのだが、仁は琉偉が魔法を使用してない事から、ハズレの異能である身体強化系だという事は分かっていた。
異能を開花した琉偉が、自分でも倒す事が出来ない中層級の魔物を倒していた事は疑問に残るが、琉偉が話してくれるまでは待とうと考えていたのだ。
そんな仁の気遣いには気付かず、琉偉は身体を慣らす為にこの迷宮に暫く通う事となる。
そんな中、日本で起きた階層変化という事件で、世界中が震撼したばかりだというのに、またもや事件が起きる。
西アフリカに位置する国の一つが、迷宮の氾濫により滅びたというニュースが大きくメディアで報道された。
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