その男…Let`s ゴーレムファイト‼
翌日。
リーシャが身支度を整えて管理人室の前まで行くといつもよりも人だかりが札の前では無く管理人室に出来ている。一体何がどうなっているのだと様子を伺うと何人かの先輩が紙とペンを持ってユウに何かを教わっており、その内容を聞こうと他の生徒が集まっていた。
何をやっているのかと一応近くにいた先輩に聞くと朝自習の時間だと説明してくれた。
これはユウが管理人になってから行われてきた日課のようなもので、ユウが管理人室の前で生徒が出て行くのを確認する時間になったときに早いもの順でユウに質問をするという時間らしい。
ただ自分たち一年生が入学してからはこれは行われていなく、その理由を聞くと仮にこの日課を一年生が知ってしまった場合ユウに詰めかけるライバルが増える可能性がある。その可能性を減らすために一年生が入学してからは控えめにこっそりと整理券を配って人だかりが出来ないようにしていたという。ただ例の一件やユウが一年生の授業を持ったことでその配慮が無駄になったことで今日から復活したらしい。
先輩たちからすれば嬉しい出来事なのだろうがユウを見るといつもの2割増しでダルそうだ。
管理人としての仕事にプラスして教員としての仕事が加わればそうなるだろう。というより恐らく先輩たちが思う普段のユウはきっとあっちなのかもしれない。
リーシャはユウに少し同情しつつも、自分には関係ないことと思い、さっさ札を変えて教室に行こうと寮を出る。
するとその瞬間
「ユウさ〜ん!!」
という元気な大声が後ろから聞こえた。
今度は何だとリーシャが振り返ると先ほどまで管理人室の前に出来ていた集団のある1箇所に空間が生まれており、その空間の中心に先ほどの大声を出したらしい生徒がいる。
背丈は150cm程で赤い髪をツインテールで纏めているのでとても幼く見えるが同級生にあんな子はいなかったので恐らく先輩だろう。
「今日だからね!!覚悟しておきなよ!!」
「ん?あぁはいはい」
ユウがそう適当に答えると周りからクスクスという笑い声が聞こえた。
「絶対負けないから!!」
少女はユウを指さしてそう言うとズンズンとこちらに歩いてきた。
小さいが迫力ある歩き方にリーシャは道を譲ろうと端に寄ると
「ギロリ」
という口での効果音付きで睨まれた。
そしてどういうことか分からないリーシャを放って少女はそのままズンズンと教室棟に向かった。
その様子を見た先輩たちからまたクスクスという笑い声が生まれた。
「えっと、リーシャちゃん、大丈夫?」
えっ?えっ?と戸惑っているリーシャにミナが合流して心配する。
「いや、ええ。大丈夫だけど…私何かしたかしら?」
少なくとも面識は無いしまだここに入学及び入寮してから日も浅いわけだから自分が彼女に何かしたということは無いはずだ。
あるとすれば…、今道を譲った時に変な視線で彼女を見たから?それとも実は自分が過去行ったことが巡り巡って彼女に影響を与えていた?
前者に関しては確かめてはいないが他の彼女を知らない生徒たちも自分と同じ反応だったと思うし、それにそれで怒るならクスクスと笑っていた先輩たちにも当然怒るはずだ。
とすれば自然と後者が理由となる。しかしどれだけ遡っても彼女に悪いことをした記憶がない、というか人に恨まれるようなことはやってきていないはずだ。
だとすれば一体…
リーシャはその場から動かずに考え込む。
ミナは一体どうしたのかとあわあわしているがそんなことは気にならないくらいにリーシャは考え込む。
それだけリーシャは人に嫌われるということが嫌だったのだ。
そしてリーシャの思考がさらに深く深くへと達した時に肩をポンポンと2回叩かれてリーシャは空想の世界から我に返った。
その主を見るとミナでは無く、先輩、確か名前は…リルルさんだったはずだ。
「教えてあげよっか、リーシャちゃん」
リルルはそう言ってにっこりと笑った。
1時限目。
講義は持ち込みありのテストという名前の実質的な自習であり、早々に終えたリーシャはリルルから言われていたことを思い出していた。
リルルはあの少女、マルと親友らしく暴走するマルを止めるということが日課になっているらしい。
「いや~、実はあの子リーシャちゃんと同じなんだよ」
「同じ…ですか?」
「そうそう、リーシャちゃんはユウさんにあの爆弾魔から助けてもらったでしょ?マルも規模は違うけど同じでね、退学処分されそうになったところをユウさんに助けてもらったのよ」
「はあ、そうなんですか」
そういう意味の同じだったのか。
それならば同じ助けて貰った者同士で仲良くなれそうなものだが。
「それでね、マル、それからユウさんのことが好きになっちゃってそりゃあ物凄いアタック掛けたのよ」
「へえ、そうなんですか…え!?」
聞き逃しそうになっていた驚愕の事実にリーシャはつい声が大きくなる。
「だけど一応学園関係者だし、それにユウさんはそういう恋愛に興味無いから断ってたんだけどね、マルは諦めずに何度も時間を問わずにアタックを仕掛けてね。その結果定期的にバトルすることでこの問題に折り合いをつけることになったわけよ」
「バトル?」
「そう、まあこれもマルの強引さで決まったんだけど自分よりも年下には恋愛感情は湧かないしそもそも自分には恋愛感情はないってユウさんは言ったんだけど『それなら私がユウさんよりも強くなればユウさんよりも大人な女になりますよね!?』ってわけの分からない持論を唱えてね。それなら仮に私がユウさんよりも強くなったら付き合ってくださいって毎日アタックかけた結果バトルをするようになった訳よ」
「はあ」
なるほど。訳が分からない。
分かることと言えばユウがめちゃくちゃ苦労をしているということと、マルが諦めが悪すぎ、かつ強引な人間であるということだ。
「いや、あのそれでマルさんが言ったことの意味は分かったんですけど、そんなマルさんがどうして私のことを睨んだかの意味が…」
「ああ、ごめんごめん。随分と話が脱線してしまったよ」
そう言ってリルルは自分の頭をコツンと叩いて舌を出す。
「まあマルが君のことを嫌っている理由は簡単でね。君、ユウさんに助けられるまでユウさんに冷たい反応してただろ?マルはそれが許せなかったみたいでね。それを見る度に襲いかかろうとして止めるのが本当に大変だったよ」
ああなるほど。点と点が線で結ばれた。
自分を救ってくれた命の恩人を馬鹿にするようなやつが目の前にいたとしたら自分も確かにそうなるかもしれない。
というより自分の信じるものを馬鹿にしたようなことをユウが言ったから自分もユウを軽蔑していた。
「それにね、さっきも言ったようにマルもリーシャちゃんも同じ救われた仲間だからね。マルからしたらリーシャちゃんは恋敵に見えてるんだよ」
「こ、恋敵!?」
「だってリーシャちゃんもマルも同じように格好良く命を救われてて、最近のリーシャちゃんは昔よりもユウさんに当たりが弱い。見る人が見たら恋していると思うよ、特にマルからしたらオンリーワンの特徴である助けられたが奪われてるんだから」
「早とちりです。確かにあの人への考え方は変わりましたがあくまで最低からある程度尊敬できるっていうレベルになっただけで恋愛感情なんてものは一切ありません‼」
「そうかなあ?まあどちらにせよマルは君のことを嫌っている、それはユウさんのことが好きだからってことで、それじゃあそろそろ授業が始まるから行くね!」
そう言って話を急に終わらせてリルルは去って行った。
マルの子守役ということで彼女は落ち着きのある人であると思ったがその特性はマルと同じようだ。
寧ろそうだからマルを制御できているのか。
まあいい。嫌われるのは好きではないが勘違い、それも恋と言う人の考えを狂わせるものから生まれた物ならばどうしようもない。
それよりも大事なのはマル以外にも自分がユウのことが好きだと思われているかもしれないということだ。
それだけは絶対に嫌だ。
少なからずこれからユウと話す場面はいくつもある。
その度に先輩や同級生から変な目で見られるのは嫌だ。
リーシャのテストの残り時間はその方法を考えることで消えた。
さて、その日の講義を全て終えたリーシャはミナと一緒に寮に帰ろうとする。
いつもならば同じように講義を終えて帰ろうとしている生徒で通路はいっぱいになるのだが今日はいつもの半分程度。
その代わりに魔法の実技を行う屋外競技場に多くの生徒が集まっている。
一体何なのだろうとリーシャとミナは集団に近づくと
「今日は何で対決するの?」
「ゴーレムファイトらしいよ」
「ゴーレムファイト!?マルってゴーレムファイト出来るの?」
「この日のためにカナタ先生と特訓したらしいよ」
「カナタ先生と!?それならワンチャンあるかなぁ」
という生徒たちの話し声が聞こえてきた。
ゴーレムファイト?一体それはなんなのだろうか。
ゴーレムは知っているし、それを戦わせるということなのだろうが。
「ねぇミナ、ゴーレムファイトって一体…」
「…特訓したということはアンリミテッド型の攻防戦?いやそれじゃあ終わるのにかなりの時間がかかるしそれにアンリミテッド型じゃあマル先輩の体力が持たない。そうなるとリミテッド型、あるいはアンリミテッド型のフラッグ型?それなら対決としては丁度いいし…」
リーシャはミナにゴーレムファイトについて聞こうと思ったがミナはぶつぶつと何かを話している。
「あの〜、ミナ?」
「さすがに男女差ハンディの時間、体数制限はあるとして、補助魔法があるかどうかで有利不利がかなり変わるけれど、だとしても魔力差があるから流石にユウさんに軍配が…」
「ミナ!」
自分の世界に完全に入り込んでいるミナの体を揺らしながらリーシャは訴えかける。
「はっ!ごめんリーシャちゃん、どうしたの?」
「いやその、ゴーレムファイトって何なのかなぁって」
「嘘でしょリーシャちゃん、ゴーレムファイトを知らないの!?」
ミナは目を見開いて驚く。
「いい?ゴーレムファイトは己の誇りをかけてゴーレムを戦わせるダイナミックでスリリングでパワフルな最高のバトルなんだよ!その歴史は遡ると200年前になるんだけど当時の決闘形式だった魔法を交互に当てていくだけで魔法使いとしての実力を完全に発揮できるのかと考えたメントルによってその元となるゴーレムによる対決を初めとして…」
ミナはこれでもかと自らが知っているゴーレムファイトの知識をリーシャに詰め込む。その説明の大半はゴーレムファイトの歴史や有名選手についてでありルールの説明はすぐに終わった。
ルールは至ってシンプル。互いにゴーレムを出して戦わせる、それだけだ。
ただ出してもよいゴーレムの数の上限が決められたリミテッド型、制限の無いアンリミテッド型、そしてそこから分岐して制限時間内に自陣に迫る敵ゴーレムから自陣を守る、あるいは敵陣を落とすを決められた本数交代で行う攻防戦、互いに敵陣に存在するフラッグを取り合うフラッグ型、そして敵魔法使いを戦闘不能にするまで行われるデスマッチ型の3種類があるらしい。
最後のデスマッチという名前が不気味だと思ったが現代においては相手を殺害するということは無く、相手が降参する、あるいは審判が判断して勝敗を決めるそうだ。
「うわあ、すごい人だかりですね」
ミナの話を右から左へと流していると後ろからカナタがそう言いながら前へ前へと進もうとしてきた。
「あ、カナタ先生!先生も見学するんですか?」
「いいえ、私はただの審判です。ユウさんに頼まれましてね」
「そうなんですね!ルールはどうなるんですか?」
「アンリミテッドのデスマッチ形式になりますね。マルさんからそう提案されました」
「デスマッチ形式?ハンディはどうなるんですか」
「ハンディは無しですね。ユウさんは補助魔法ありを提案したのですがマルさんが対等がいいと断りましてね。なのでこうして私が審判という抑止力として呼ばれたわけです」
「そうですか…」
「そういえばミナさんはゴーレムに興味があると伺いましたが本当ですか?」
「はい!今はオリジナルの魔法を作ってますし、ゴーレムファイトについては世界大会は必ず現地観覧しています!」
「そうですか、良かったら近くで見ますか?きっとユウさんの魔法はその参考になりますよ!」
「はい!喜んで!行こうリーシャちゃん!」
そう言ってミナはリーシャの腕を引っ張り、カナタの後ろについていく。
リーシャは何の抵抗も出来ないままあれよあれよと競技場の前にまで連れてこられた。
ここまで積極的で強引なミナは初めて見た。
ゴーレムファイトとはそこまで人を熱くさせるものなのだろうか。それとも単にミナの熱量がおかしいだけなのか、少し気になってきた。
競技場内にはすでにユウとマルの両名がストレッチを行っている。
「それでは時間になったので始めさせていただきます。両名競技場の中心に集まってください」
カナタがそう呼びかけるとユウとマルは指示通り中心に集まり、向き合う。
仮にこの競技に身長が関係するとしたらユウとマルの身長差は父とその小学生の娘ほどの身長差があり明らかにユウの方が有利であると言える。
「それではルールの確認をします。事前に通告されたのはアンリミテッド型のデスマッチ形式でしたが間違いないですか?」
「はい!!」
「ああ」
「分かりました。それでは互いに礼!」
そう言うとマルは勢いよく礼をし、ユウはゆっくりと礼をする。
「それでは両端に移動してください。移動が確認でき次第カウントをします」
「頑張れマル!!」
いよいよ始まるとなり、生徒たちからはマルを応援する声が上がる。
それに対してマルは親指を立てて応える。
「それではカウントダウンを開始します!3.2.1…始め!!」
カナタの合図と同時にユウとマルは地面に魔法陣を書き始める。
「あの魔法陣の形からして二人ともカイトシステムでいくのかな?」
ミナはまだ完成していない魔法陣を見てそう呟く。
「え?」
「カイトシステムって言ってね。最初に少し時間が掛かるけど強度の高いゴーレムを作って盾にすることでその後のゴーレム作製の時間を確保するっていう世界大会を3連覇したカイト氏によって開発された戦略なんだよ」
「へ、へぇ」
「ただ、最初に時間を掛けるということが大きなリスクになって相手がすぐに作れるゴーレムで攻められた時に厳しい状況になるから素早く書き上げる技術が無いと出来ない芸当なの。特に同じ戦略同士の戦いだとそれが顕著になるの」
ひとつ聞くと10くらい帰ってくるミナの説明を聞きながらゴーレムファイトを見つめる。
2人の魔法陣がどれだけ完成しているのかというのは知識が無いため分からないが明らかにユウの書くスピードの方が早い。
そしてその考え通りユウの方が先に魔法陣をかきあげて魔法陣を起動させる。
魔力を注がれた魔法陣は数秒間光り輝いた後に巨大なゴーレムを召喚した。
ミナの言う通りその姿かたちは自分が知っている四角張ったゴーレムではあるがその体は厚みがあり、横に大きくまさしく盾と言えるゴーレムであり、ミナの予想通りである。
「うそ・・・、まさかかかし式ゴーレム⁉」
しかしミナの反応は予想通りという訳では無く逆に驚きの声を上げた。
かかし式?それは一体何なのだ。
「ねえミナちゃん、かかし式って何?」
リーシャがゴーレムについて聞こうとする前に近くにいた生徒たちがミナにそう聞く。
「こういう盾型のゴーレムを作るときは防御のためのゴーレムでも一応攻めにいけるように歩行できるようにするんだけどユウ選手が作ったのはその歩行能力を無くした完全防御型のゴーレムで本当に防御をするためだけのゴーレムで、その性質からかかしと呼ばれているの。利点としては足をタイプよりも早く作れるからその時間を防御面の強化に充てることが出来るの。でも動けないから守れる場所が限定されているっていう大きなデメリットもあるの」
「へぇ~」
ミナの熱心な解説に周囲は感嘆する。
そんなユウに対してマルも魔方陣が完成したようで魔方陣を起動させる。
するとその魔方陣からはユウが召喚した防御型のゴーレムでは無く、それよりも小振りで長方形のゴーレムが現れた。
しかしその風貌はゴーレムと言うよりは階段の横にあるスロープを切り離したと言った方が正しく、前方にやけくそにゴーレムの顔が付けられたようないびつなゴーレムだ。
「射出型ゴーレム⁉ということは偽装していたの⁉」
それに対してもミナは驚く。
「あの射出型…」
「射出型っていうのはね‼」
リーシャは周囲の人たちが聞く前にミナは解説を始める。
「ゴーレムの足元を見れば分かると思うんだけど何かがたたまれて蛇腹状になっているでしょ。あれは実はゴーレムの足でね、あれを推進力にして跳躍して相手に突撃するのが射出型と呼ばれているの。基本的に奇襲を目的としたゴーレムでこういう状況で出されるのは大会でもある事なんだけどマル先輩はそれを別のゴーレムを出すと偽装して出したの」
「偽装?」
「うん。ハイレベルなゴーレムファイトになると相手が何のゴーレムを作っているかを見て戦略を決めるっていることを行うんだけどそれをさせないために別のゴーレムを作るような魔方陣を書きつつ実は別のゴーレムを作るという技術があってそれを偽装と言うの・・ほら見て!ゴーレムが飛ぶよ‼」
ミナがそう言ってゴーレムを指さす。
ゴーレムの体からはミシミシという音が鳴り、少し土が落ちる。
そしてその直後にゴーレムは斜め方向に跳躍して盾型ゴーレムの頭上を通過する…かと思われた。
それを見たユウは作っていた魔方陣を発動させてマルが作った射出型と同じ形のゴーレムを召喚してそれを跳躍させる。
ゴーレムたちは盾型ゴーレムの頭上でぶつかり合い、粉々になる。
「すごい‼すごすぎる‼」
ミナはパチパチと拍手を始める。
駄目だもう何が何だか分からない。
「今のはね!マル先輩も偽装を見抜いて射出型を出そうとしているのを見抜いてユウさんも射出型を合わせたの!」
ついにミナは自分たちが一言も発していないのに解説を始めた。
もう何が何だか分からないが観覧している生徒たちの盛り上がりはさらに大きくなったためこれがとんでもないということは理解した。
この競技については分からないがミナの解説と自分の目を信じるとユウの方が現在は有利なようだ。
ただマルの方も一矢報いるような戦略を練っているようで何が起きるか分からない。
ここから一体どうなるのだ。
リーシャは二人の動きを見つめる。
「そこまで‼」
が、そんな二人の戦いをカナタが止める。
途端に観覧していた生徒たちはざわつく。
「ちょっとどういうことですか‼」
マルも意味が分かって無いようで怒り気味でカナタに近づく。
「マルさん、地面を見てください」
そんなマルに怒ることも無くカナタはそう告げる。
どういうことだとマル、そしてそのカナタの声が聞こえていた一部生徒たちは地面を見る。
すると先ほどまでマルが居た場所の土がもっこりと膨れ上がっている。
「ユウさん。再起動してください」
カナタがそう言うとユウはうなづく。
するとすぐに地面のふくらみが裂けてそこから2mほどの高さのゴーレムが現れた。
「このゴーレムの存在に気づけていない時点でマルさんの負けは確定であったので試合を止めました。異論はありますか?」
そうカナタが優しい口調で聞くとマルはしょんぼりとして肩を落とした。
「さて、終わって礼をするまでがゴーレムファイトです。中央に集まってください」
「・・・はい!」
マルは元気な返事をして駆け足で中央に行く。
「改めまして今回の試合はユウさんの勝利となります。両者礼!」
「「ありがとうございました」」
ユウとマルは礼をする。
すると周りからは大きな拍手が生まれる。
「ありがとう!!最高の試合をありがとう!!」
ミナはまるで2人が世界を救ったかのような大きな拍手、そして歓声を上げている。
「次は絶対に負けませんから!」
マルはそう言って走り去った。
そしてそれについて行くように周りの生徒たちも寮に戻っていき、リーシャも興奮しているミナを連れて競技場を後にした。
「さてと、皆さんいなくなったことですし今度は私との約束を果たして頂きますよ?」
生徒が完全にいなくなり、ユウと二人きりになったタイミングでカナタはそう言う。
「あぁ、ルールはどうする?さっきのと同じでいいか?」
「えぇ、それよりも認識阻害は掛けたのですか?」
「ああ、認識阻害は掛けたし、ここに侵入できないようにもしておいた。心置きなくやりあおうぜ」
「僕の研究の成果を見せつけてやりますよ」
大変!
ゴーレムが突然暴れ出して観客を襲い始めちゃった!
何とかして止めなきゃいけないけど闇のゴーレムファイトの影響であのゴーレムを倒してしまうとユウキの精神が崩れ去ってしまう!でも一体どうすれば…
次回、炎のゴーレムファイター
第31話 友か死か さらばユウキ
次回もレッツファイト‼
※内容が変更される場合しかありません