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31 サントリナ:悪を遠ざける 後編

 瀧本が寝室に戻るとタッピングを終えた涼菜は幸せそうな表情で眠っている。

 優しく涼菜の頭を撫でる晃は、辛そうな微笑みだった。

 しかし、その眼差しに少しだけ変化が見られた。

 瀧本にはそれがなんなのかハッキリとは理解出来ないが、少なくとも涼菜の幸せを考えているのは間違いない。


 そんな日々がもう、二週間続いている。


 瀧本はとある疑惑を胸に、監視ルームで最近は使用していなかった録画モードを起動した。

 身動き出来ない涼菜に脱走は無いだろうと、オフにしていた。


 今日もあやの達はお見舞いに来た。


 怪しまれぬ様にいつもと同じ行動をとる。

 そもそも、瀧本以外の『ガーデナー』からすれば、現状は面白くない状況だ。


(何故、もっと早く気付かなかったのかしら)


 瀧本は己の考えの至らなさに歯噛みする。

 気付けるチャンスは沢山あったのだ。

 それに気付かず無駄に二週間も涼菜を苦しめてしまった。


 『ガーデナー』とは、『花生み』を管理し、育み、良質な『花』を生み出させる者だ。

 基本給とは別に、生み出した『花』に応じて特別ボーナスが支給される。


 熊谷は親である事を十二分に利用してあやののストレスを軽減して『花』を管理している。

 花垣は小毬の母では無いが、自分に依存させる為に小毬の求める母を演じている。


 全ては『花』、ひいては給料の為だ。


 『ガーデナー』の評価ポイントは多岐にわたる。

 まずは『花生み』に気に入られるかどうか、次に『花生み』の健康管理、そして重要な『花』の個数、サイズ、栄養価、頻度。

 それから“晃の口に合うか”。


 涼菜は『花』に関しては、全てがずば抜けていた。

 つまり、『ガーデナー』としては後から出てきた瀧本が首位である。

 当然、熊谷、花垣の二人は面白くない。

 特に熊谷は、晃と自分の娘であるあやのを結婚させようと色々画策していた。

 晃が直接『摘み』に来る涼菜を面白く思わないのは必然だ。


 四人が帰った後に録画を見る。


「何度言ったら理解できるのかしら?」

「この中にはお花でも詰まってるんじゃない?」

「晃を誘惑しないでちょうだい」

「か弱いアピールはいらないからー」


 ピタピタ、ピタピタ。


 次々に放たれる辛辣な言葉。

 そこまで強く叩いていない事は分かるが、痛みよりもプレッシャーを与える事を目的とした行動。


 涼菜が「なんのことかわからない、誘惑なんかしてないし、あの日から一度も来たことなんかない!」と抵抗するとパシンと殴られる。


 そこまで見た瀧本は、すぐにデータを複製すると部屋を飛び出した。

涼菜が主役なのに!

話は主役のいないところで進んでしまう。

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