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23 ホトトギス:秘めた意志 前編

 瀧本篤子は反省していた。


 自分が世話している『花生み』涼菜を何度も倒れさせてしまった。


 『ガーデナー』である瀧本は、『花生み』の管理をして、より良い『花』を咲かせる事を仕事にしている。

 充分な食事と睡眠、それに日光浴。


 そして


 「強いストレス」


 他の『ガーデナー』はあまり腕が良く無い様で、充分な花を晃に用意出来なかった。


(でも私は違う)


 事前に教えられた決して多くない情報で、初めて会う『花生み』をきちんと育て上げてみせる。


 そう、決めていた。

 しかし現実は甘く無かった。


 一度目は何も出来なかった。

 土下座をする様に蹲って、恐怖に怯え、痛みに悲鳴をあげ、気を失わせた。


 その時に、瀧本からは『花生み』というフィルターが外された。

 鶏や植物とは違う、ちゃんと血の通った人間なのだと知識では知っていたはずなのに、心では理解できていなかった様だ。

 目からウロコが落ちた思いだった。

 『日野涼菜』個人を見て、彼女の意思を大切にしつつ『ガーデナー』としての職務を全うしようと決意した。


 二度目は守れなかった。

 首を絞められて涙を流し、強いトラウマを抱えてしまった。


 夜中に泣きながら飛び起きたり、サンルームに向かうと悲鳴を上げたりする涼菜を前に、ただ「大丈夫」を繰り返すことしか出来ない自分を恥じた。


 三度目はそばに居なかった。

 目を離した隙にサンルームまで連れて行かれてしまい、手を出す事が出来なかった。

 摘出しても、しても、次から次へと湧き出す様に『花』が咲く。

 次第に形を成せなくなっていくにもかかわらず勢いが衰えない。


 その時、瀧本は全身の血が凍ってしまった様に感じた。

 涼菜が目を覚ました時には、心の底から安堵した。

 そうして、瀧本は東条に雇われた身でありながら、涼菜の絶対的味方になる事を決意した。


 弱った身体を立て直す為にタッピングが必須である。

 以前「キスは絶対に嫌だ」と言っていた涼菜に睡眠薬を盛り、深く眠った頃合いを見計らい、東条を呼び出してタッピングさせたりもした。


 その行為を涼菜が嫌がるだろうとは分かっていたけれど、涼菜の身体の為には譲れなかった。

 瀧本回でした。

 毎度眠くなって、幸せな夢を見る……の裏事情でした。

 次は後編です。

 あの人がお見舞いに来ます。

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